これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

MK式文章術

2012年02月26日 21時33分44秒 | 過剰エッセイ
 MとKがデザインされたキーホルダーをもらった。技術の時間に、娘が電動のこぎりで金属板を切り、ヤスリをかけて作ったらしい。


 
 かなりうれしかったので、今日はMとKから始まる文字で日記を書いてみたい。ま行とか行のデュエットである。

 メトロに乗って出かけた帰り、スーパーに寄った。
 今日の夕飯は何にしよう。
 まず、魚売り場に行ったら、スルメイカが1杯150円となっていた。新鮮そうだ。
 カゴに入れ、野菜やパスタと一緒にレジまで持っていった。
 
 まな板にイカを載せ、下ごしらえを始める。
 


 クニャクニャしたイカを左手でつかみ、右手で内臓を取り除く。
 昔、高校生だったとき、調理実習で経験ずみだ。
 結構、手順を忘れているが、触れているうちに思い出す。
 間違えることなく、順調に進んでいく。
 吸盤も取らなくては。
 見るからにグロテスクな8本の足には、いくつもの吸盤がついている。
 かなり根気のいる作業だが、包丁を動かし、丸い粒々を削り取る。
 まな板にへばりついている吸盤が、なにやら健気に見えた。
 切れ目を入れたら、下ごしらえは終わりだ。



 みりんと醤油で作ったタレに浸し、2時間放置する。



 頃合いとなったら、焼き網に載せ、火をつける。
 真っ赤な炎にあぶられ、醤油の焦げる香りが漂ってきた。
 こりゃ、たまらん。いい匂いだ。
 待つこと5分。
 こんがり焼けたスルメイカが顔を出した。
 盛りつけ、盛りつけ。


 
 完成だ~!
 モグモグすると、味がよくしみていて美味しい。
 感動。「イカった」と家族も褒めてくれた。

 MK式文章術、いかがでしたか?
 言葉遊びで楽しみました。



クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (16)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

受験弁当

2012年02月23日 19時50分52秒 | エッセイ
 今日は都立高の学力検査、つまり入試が行われた。
 間違いは許されないから、非常に気をつかう一日となるが、私はどうにも集中できない。娘も、別の都立高校を受けに行くからだ。
 いつもより早く家を出なければならないので、5時起きして、娘の弁当を作る。
 お受験メニューは縁起のいいものに限る。やはり、好物のヒレカツでいこう。かぼちゃの煮物も作り、揚げ物をして、グレープフルーツも用意する。昨日スーパーに行ったら、1個99円のフロリダ産グレープフルーツと、1個175円の「いいグレープフルーツ」の二種類があった。私が、「いいグレープフルーツ」のほうを選んだことはいうまでもない。
 さあ、できた!



 あとは、おにぎりを2つプラスして、箸箱をつける。
「お母さん、ポニーテールにして」
 受検生は身だしなみも重要だ。あまり時間がなかったが、チャッチャと結わいて支度を手伝う。合間に、自分の支度もしなければならない。ダッシュで朝食と洗面をすませ、スーツに着替えて駅まで急ぐ。
 朝から戦場だ……。
 どうにか、時間までには職場に着き、ドタバタと打ち合わせ場所に走る。着席したところで、ようやく安心した。
 今日は、大嫌いな数学の監督に当たっていた。お金の計算ならいいけれど、数学はどうも苦手だ。試験会場では問題を見る気もせず、ぼんやり監督者のイスに座っていた。ゆとりができると、娘のことを思い出す。「受検票とコンパス、定規は持ったかしら」「難しくて手がつけられないんじゃないかしら」などと心配になった。
 まあ、いまさら心配しても何もできないが。

 午後は採点の手伝いである。
 私は英語の補助なので、教科主任のところに行くと、変更があったらしい。
「えーと、たしか笹木さんは数学になったはずです」
 ガーン!
 どこまで数学と縁があるのやら。

 採点のあと、娘にメールをした。おそらく、もう帰っているはずだ。
「今日は大変だったね! 何か食べたいものがあれば買っていくよ」
 まもなく返信が来た。
「すごく疲れたよ。ケーキが食べたい。合格発表の日には食べられないかもしれないから」
 どうも、手ごたえがなかったようだ。だが、今日だけは、入試から開放されたことを祝いたい。
 新宿高野「あまおうフレーズ」。



 何といっても、あまおうの存在感が圧倒的だ。上にも中にも大粒のあまおうが幅を利かせ、フルーティーな仕上がりとなっている。生クリームとスポンジは準主役級だが、いちごの酸味とマッチしている。
 フォークでケーキをつつきながら、娘が感想をもらす。
「できることはやったから悔いはないけど、多分落ちたと思う。」
「そっか」
「私立のお金、用意しといて」
「わかった」
「でも、頑張ってよかった。やればできるってわかったし、勉強が好きになったよ」
 それがわかれば十分だ。結果はともかく、努力の見返りは得られたらしい。
「あとね、お弁当のグレープフルーツが、めっちゃ美味しかった」
 そうなのだ。「いいグレープフルーツ」は果肉の糖度が高く、みずみずしくて大変美味であった。決して名前負けしていない。きっと、神経をすり減らす受検生の、心のオアシスになるだろう。
 ぜひ、受験弁当には、「ヒレカツ」と「いいグレープフルーツ」を!



クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (16)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

清水寺の怪人

2012年02月19日 21時15分41秒 | エッセイ
 2009年12月に、娘を連れて京都に行った。
 外しちゃならない清水寺に着くと、さすがにすごい人ごみである。修学旅行生に熟年夫婦、学生風のグループや団体客、その他大勢が、わんさと押しかけていた。日本人だけでなく、金髪碧眼の白人や、サリーをまとったインド人、アジア人なども目に入る。娘と手をつなぎ、はぐれぬように気をつけた。
「お母さん、ちょっと、あれ見て!」
 そんな状況の中でも、異様な目立ち方をしている人がいる。白ブラウスの襟にはリボン、白いスクールセーターを重ねて、見た目は女子高生だ。しかし、茶色に染まったロングヘアーが縁取る顔は、どう見ても50代のオジさんである……。化粧はしているが、隠し切れないヒゲの黒さが目立ち、ファンデーションはシワでひび割れている。
 それなのに、口角を少々上げて、わずかに微笑んだ表情を崩さない。姿勢もモデル立ちで、多くの人に見られることを意識しているのだろう。丈の短いチェックのスカートからは、筋肉の落ちた絶対領域がのぞき、ルーズソックスを履いている。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
 多くの人が彼の姿に衝撃を受けるが、「変なものを見た」という表情を浮かべ、無言で通り過ぎていく。だが、修学旅行の女の子集団は違う。エセ女子高生を見たとたん、大きな悲鳴や笑い声をあげ、騒ぎとなるのだ。
「なにあれ、キッモー!!」
「マジ!? マジ!?」
「写メ撮んなきゃ」
 怖れを知らない少女たちは、はしゃぎながら彼のほうへ近づき、携帯のシャッターを押す。きっと、彼女たちの思い出は、清水寺でも三十三間堂でもなく、エセ女子高生なのだろう。

 去年、娘も修学旅行で京都に行った。しかし、彼の姿はなかったそうだ。
「別に見たいわけじゃないし。一回見れば十分だよ」
「まあ、それもそうね。ほら、コート着ていかないと寒いよ」
「やだ。このコート、丈が長くてダサいんだもん」
 中学校への登下校用として、紺のダッフルコートを買ったのに、娘は気に入らない。この寒さでも、制服にマフラーを巻いただけで家を出る。他の生徒は皆、丈の短いコートだから、恥ずかしいのだという。暖かいほうがいいだろうという親心が、裏目に出てしまった。



 ほとんど着てもらえなかったから、3年経っても、コートは新品のようだ。このまま、来月には卒業してしまう。思いついて袖を通してみると、私にピッタリだった。

 いいじゃん! ちょうどダッフル持ってないし、もらっちゃおうっと♪

 40代半ばにして、スクールコートは犯罪かもしれないが、さほど目立たない。防寒機能もしっかりしているから、活用しない手はないだろう。さらに、後押しするようなささやきが聞こえてくる。

 清水寺のあの人に比べれば、可愛いもんよ。大丈夫。

 強烈なものを目にしたおかげで、私の感覚も狂ってしまったようだ。
 コートの裏には、名前を書く場所があるが、何も記入されていない。



 じゃあ、「砂希」と書いちゃおうかな……。



クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (12)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ヒヤヒヤお通夜

2012年02月16日 20時31分10秒 | エッセイ
 同僚の教員の父親が亡くなり、お通夜に行くことになった。
 冬の葬儀はつらい。喪服はスカートだから、寒さで冷えることが心配だ。やはり、パンツがいい。黒けりゃ、何だっていいだろう。「お通夜だから許してね」と心で詫び、黒のパンツを引っ張り出すと、似たような色のジャケットを合わせた。即席ブラックフォーマルのできあがりだ。あとは、ブラウスの下にも長袖のTシャツを重ねて、寒さ対策をすればよい。
 着替えるまでの間、ジャケットがシワにならぬよう、ハンガーに吊るしておく。葬儀は、職場から近い場所なので、仕事帰りに立ち寄れば、普段と同じ時間に帰宅できる。遠くまで行かなくてすむのはありがたい。
 いつも私は、パジャマのままお弁当作りや朝食をすませ、出かける直前に着替えることにしている。化粧を終え、「さて着替えるか」と時計を見た。何と、すでに切羽詰った時間になっている。超特急でパジャマを脱ぎ、即席喪服に着替えて家を飛び出した。
 上り電車は非常に混んでいるので、車内が暑い。すぐに汗が噴き出してきた。お通夜に備えて、いつもより厚着しているせいもある。そんなことを考えていたら、とんでもない失敗に気づいた。

 あれっ、私、ジャケット着てきたかしら!?

 コートの下に手を入れると、滑らかなブラウスの手触りである。やはり、忘れてしまったらしい。あわてていたせいで、私はジャケットを吊るしたまま、家を出たのだ。

 なんてこったい……。

 白いブラウスに黒いパンツで、お通夜に参列するわけにはいかない。いまさら、家に戻る時間はないから、どうにか黒い上衣をゲットせねば。
 職場のロッカーを開けると、黒のジャージが見えた。だが、ジャージの上を着て葬儀に来る人なんぞ、いまだかつてお目にかかったことがない。当然ながら、これはボツ。
 昇降口では、中学生向けに、制服を着たマネキンがいる。ブレザーは紺だ。生活指導部に泣きついて、今日だけこれを借りる手もある。しかし、学校のマークの入った、金色のボタンが悪目立ちしている。加えて、同僚が私に気づいたときの反応が怖い。「制服なんか着てきて、なめとんのか!」と激怒されそうだ。
 しょうがない。私は携帯を取り出し、専業主夫の夫にメールを打ち始めた。
「ジャケットを忘れたので、申し訳ないけれど、持ってきてもらえますか」
 65歳の夫をこき使うのは申し訳ないが、これ以外に方法がない。その日は、4時から家庭教師が来るくらいで、他には予定がないはずだ。
 しかし、なかなか返事が来ない。「また面倒くさいことを頼んで!」と腹を立てているのかもしれない。なにしろ、うちの夫は、体を動かすことが嫌いだ。ものを頼めば、必死で断る口実を探そうとする。寝そべってテレビを見ることが一番の楽しみだから、牛のような体型になっているのも道理である。私は、まったく仕事に集中できなかった。
 30分後、ようやく返信があった。意外なことに、「何時にどこに持っていけばいいですか」と書いてある。「ブーブー」「モーモー」といった文句がないことに、ひとまず安堵した。あとは、時間と場所のやりとりだ。
 体育の授業がある時間帯は、駐車場に生徒がいるかもしれないから避けたい。通行の邪魔だし、夫を見られるのも気まずい。授業のない11時頃に来てほしいと頼んだ。
 ちょうど時間が迫ったころ、校門まで様子を見に行ったら、夫の車が見えた。右折のウインカーを出して、こちらを目指している。なんと、グッドタイミング! 急いで門を開けると、対向車が途切れ、夫が敷地内に入ってきた。昇降口前に車を止め、ジャケットを差し出す。ハゲでデブだけど、このときばかりは夫が天使に見えた。
「ありがとう」と礼を言って夫に手を振ると、彼も振り返してきた。そのまま夫を見送り、校門を閉める。わずか1分足らずの出来事だったが、こちらの状況は180度変わっていた。これでお通夜に出られると安心し、ようやく仕事が手につく。長い長い待ち時間だった。

 無事、お焼香をして帰ると、夫が夕飯を作って待っていた。
「洗濯物を干そうとしたら、ジャケットがかかったままだったから、何を着ていったのかと思った」
 夫も変だと思ったようだが、自分から連絡しないあたりが彼らしい。でも、持ってきてと頼まれる予感がしたからこそ、話もスムーズに進んだようだ。
 もうすぐ、19回目の結婚記念日を迎えるが、こんなに息が合ったのは初めてかもしれない。
「どんだけ合わないんだよ」と苦笑した。



クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (14)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2012 バレンタイン作戦

2012年02月12日 13時56分48秒 | エッセイ
 毎年、バレンタイン用のチョコレートを、デパートの特設会場で買う。国産に輸入品、オーソドックスな品から遊び心たっぷりの商品まで、豊富に取り揃えているからだ。中には、ハート型の煎餅などもある。甘いものが苦手な男性には、喜ばれるであろう。
 バレンタインデー間際になると、混雑が激しくなり、ゆっくり見られない上に品切れも増える。今年はゆとりを持って、1月中に行ってみた。
「いらっしゃいませぇ、ご試食いかがですか!?」
 場内は人もまばらで、人口密度が低い。売り子のお姉さんが、とびきりの笑顔を浮かべて、愛想よく声をかけてくる。だが、2月10日を過ぎると、和やかな様子が一変する。殺気だった客が、ショーケースに続々と押し寄せてくるものだから、お姉さんたちも怖い顔になり、女の戦場と化すのだ。
 大きな落差を実感し、来年も、絶対早めに来ようと決心した。
 バレンタインデーといっても、我が家の場合は家族チョコだから、自分が食べたいものを選ぶ。30分ほど品定めをし、買い物袋をいくつかさげて店を出た。
 家に着いたら、家族に会う前にチョコレートを隠す。いつも寝室の押し入れである。今回は当日まで2週間以上あるから、見つからないことを祈る。

 そして、いよいよ明後日がバレンタインデーとなった。
 私は、コソッと押し入れを開け、チョコレートたちを確認する。
 まずは、パティスリー ジャン・ミエのミルフィユ。



 中をお見せできないのが残念だ……。
 それから、ダスカリデスのショコラ&トリュフ。



 トリュフは、チョコレートの中で一番好きかもしれない。
 最後に、ジョトォのブーケトス。



 色とりどりの華やかさに惹かれる。
「うん?」
 ブーケトスに違和感を感じた。顔を近づけて、よく見ると、なんと壊れているではないか。



 ギャッ!!

 包装なしでよかった。ケースを開けてみると、ムース状の塊が3個はがれ落ちていた。押し入れの中で斜めになっていたのが悪かったのだろう。



 さて困った。口に入れるものだから、木工用ボンドを使うわけにはいかない。接着力があって、食べられるものは何か。

 そうだ、ご飯粒!

 しかし、ご飯は腐るし、チョコレートには合わない。甘くて、ベタベタしたものがよさそうだ。

 蜂蜜!

 これはヒットだった。ひと塗りして台に置くと、角度を微調整するのが難しいくらい、ベッタリと貼りついた。これで安心だ。今度は、斜めにならないように気をつけて、チョコレートたちを押し入れに戻した。



 あとは、14日を待つばかり……。

 職場で配る義理チョコは、近所の雑貨屋で買った。



 一応、ベルギー産である。キューピッドの愛らしさが気に入った。
 私のところにも、キューピッドさんが来てくれますようにと願い、自分の分もプラスする。
 ほほほっ♪



クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (12)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夢で逢えたら

2012年02月09日 21時39分12秒 | エッセイ
 変な夢を見た。職場で隣の席にいる、50代の独身女性が出てきて、しきりにあれこれ話しかけてくるのだ。
 この人は、おしゃべりが大好きで、話し出すと止まらない。一度、多数の教員が採点している部屋で止まらなくなり、けたたましさにたまりかね、「静かにしてください」と注意したことがある。結構、根に持つタイプのようで、それから一カ月は近寄ってこなかった。
 今は、普通に会話を交わすようになったが、必要に迫られたからであって、実のところは気を許していない。一輪車でバランスを取るような、危うい間柄だから、好きか嫌いかと聞かれたら、お互いに嫌いと答えるだろう。
 夢とはいえ、その彼女の相手をするのは不幸である。適当に聞き流し、あたりさわりのない相槌を入れ、話が終わるのを辛抱強く待っていた。
 そこで、ハッと目が覚めた。

 げっ、6時過ぎてる!!

 どうやら、5時20分にアラームが鳴ったあと、二度寝したらしい。大幅な寝坊に、私は焦った。
 朝食と歯みがきをカットして、始業ギリギリの電車に飛び込み、どうにか間に合った。冷や汗をかき、化粧がはげて、髪も乱れている。彼女のせいではないが、どうにも恨めしい。
「今日、夢に貴女が出てきて、しゃべっていたら寝坊しちゃった」などと笑い飛ばせばスッキリするのに、それができる相手ではない。
 ああ残念だ……。
 不思議なことに、彼女も朝から元気がなかった。口数が少なく、答案の山を抱えたまま、机に突っ伏して動かない。どうやら、具合が悪いようだ。普段は、殺しても死なない感じの彼女だが、強いストレスを受けると、体調を崩すことがある。

 もしかして、私も彼女の夢に出演しちゃった?

 どんな夢かを想像してみた。仲間と楽しくしゃべっているところに私がやってきて、冷ややかな声で「ちょっと黙ってもらえます?」などと言ったのかもしれない。
 まあ、考えすぎだろう。

 今日は、いつも通りの彼女だった。
 よく食べ、よくしゃべり、校内を元気に歩き回っていた。微妙な関係とはいえ、弱っている相手を見るのは忍びない。祝復活といったところである。
 放課後、校長室で会議があり、お菓子をもらった。
「いっぱいあるから、他の先生の分も持っていって」と促され、真っ先に彼女の顔が浮かぶ。部屋に帰って、煎餅とチョコレートをおすそ分けすると、喜んでもらえた。
 危うい一輪車から、パンクした自転車くらいには進展した気がする。



クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (14)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

渋谷刑務所病院ご入院

2012年02月05日 17時22分17秒 | エッセイ
 正月以来、お酒に縁がない。たまには、パーッと飲みに行きたいと思い、悪友の幸枝を誘って、渋谷の街に繰り出した。
 目的地は、「渋谷刑務所病院 アルカトラズE.R.」である。雑誌や情報誌などで有名だが、下ネタが多く、お行儀のよい人は誘えない。したがって、私が「一緒に行こう」と言われたことがないのも当然である。
 しかし、このままでは一生行かれないので、自分で企画をした。きっと、大いに盛り上がるだろう。
「いらっしゃいませ」
 出迎えてくれたのは、ピンクの白衣を着た、色っぽいナースだ。ここでは、病院と監獄が入り混じった設定となっている。
「本日、2名様ご入院ですね。カルテをお作りしますので、代表の重症患者様をお願いします」
 ここは、笑いの取れる幸枝に任せたほうがよさそうだ。幸枝がナースの前に進むと、質問が始まった。
「お名前をお願いします。あだ名でも何でも構いません」
「えーと、メグミ」
「本日は、どこが悪いか教えてください」
「あ、豊胸手術をしてください」
 さすがは幸枝。私は隣で笑い転げていた。
「血液型は?」
「A型」
「精神年齢はいくつですか」
「うーんと、29歳」
 私が見たところ、幸枝の精神年齢は18歳あたりで止まっているのだが、彼女はそう思っていないようだ。
 ナースは、チャチャッとボールペンを動かし、カルテを完成させた。
「では、重症患者様に手錠を掛けさせていただきますので、両手を出してください」
 何と、お色気ナースが手錠を掛けてくれるらしい。男性だったら、自然にニヤけてしまうだろう。
 連行されるように、席まで案内された。テレビで見る監獄のように、鉄格子の扉がついている。
「ご入院でーす」
 ここで、手錠を外してくれる。カーテンで仕切られた半個室は、天井が低く息苦しい。留置所に入ったことはないが、こんな感じなのだろうか。
 まずは飲み物である。メニューを開くと、自白剤、人体実験などのカクテルや、尿瓶に入ったビールなどが並んでいて笑える。さて、どれにしよう。
 幸枝は「脳内発射」にした。これは、マネキンの頭を上からくり抜き、グラスをはめ込んでいる。グラスに入っているのはカクテルだ。味はよさそうだが、非常に場所を取るので、狭い席では邪魔だった。



 私が選んだのは「緊急輸血」である。これには、コーラと赤ワインが入っているので、よさそうだと思ったが、意外な展開が待っていた。
「緊急輸血お待たせしました」
 今度は、白いミニスカートをはいたナースが、赤い液体の入ったガラス容器を持ってきた。細いウエストから、形のいいヘソが見えている。容器の先にはチューブがついていて、そこからフラスコに注ぐのだ。



 しかし、それだけでは終わらない。
「じゃあ、輸血の残りを口にも入れますので、チューブをくわえてもらえますかぁ」
 そんなことを要求されるのかとたじろいだが、気が弱いので、拒否できなかった。言われるがままにチューブを吸うと、赤いカクテルが流れ込んでくる。むせそうだ……。
「お連れ様もいかがですか」
 ナースは私の口からチューブを外すと、幸枝にも飲ませ始めた。男同士だったら、どうするのだろう。
 笑ったあとは料理を頼む。脱腸、目玉の親父、舌先三寸など、激しいメニューが多いので、ほどほどのものを頼むことにした。
「田舎っペ」というカナッペは、具が少々淋しいけれども、無難線だ。



「脳みそ解剖」は、小道具が冴えている。味もまずまずだ。



 幸枝がビールを注文した。シリンダーに入っている。



 奇をてらったメニューは、それくらいにしておいて、残りは普通の料理にした。
 飲むと、尿意を催してくる。従業員にトイレの場所を尋ねたら、大きな声で「検尿はこちらで~す」と案内された。すると、それを聞いた他の従業員も、口々に「検尿でーす!」と連呼する。大変恥ずかしい……。
 用を足し、席に戻るときには、「検尿お疲れ様でした!」の掛け声が待っている。5~6人に言われると、もう苦笑するしかない。
 検尿のあとは、デザートを注文した。
 幸枝は、クリームブリュレ。



 私は、チョコバナナ生クリームクレープである。これは美味しかった。



 デザートが終わったら、「ショータイムです」との声がかかる。この間は、オーダーストップとなり、照明が落ちる。
 何が始まるのかと思っていたら、遠くの席から女性の悲鳴が聞こえてきた。履物と衣ずれの音が近づいてくる。どうやら、何かが監獄内を歩き回っているようだ。
 そのとき、こちらの席のカーテンが開き、音の正体が見えた。



 おおっ!!

 しかし、何かパフォーマンスがあるのかと思ったら、ただ通り過ぎるだけだった。これでは、せっかくの演出がもったいない。もっとも、他の部屋は見えないので、本当のところはわからない。実は、オバさんのところだけ素通りしていたりして。被害妄想か?
 たっぷり楽しんだあとは、治療費を支払い退院する。あっという間に、2時間経っていた。
 
 いやあ、盛り上がったなぁ!

 大人数で行けば、もっと楽しいと思う。
 刺激を求めるときには、ぜひどうぞ。



クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (16)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

カイロいろいろ

2012年02月02日 18時26分57秒 | エッセイ
 冬は寒い。少しでも暖をとるため、カイロが必要だ。
 今は使い捨てのカイロばかりだが、私が子どものときには、金属製のカイロがあった。父が使っており、銀色だったところを見ると、ステンレス製だったのだろうか。巾着袋に入っていて、年代を感じさせる代物だった。さしずめ、おじいちゃんカイロといったところか。
 使い捨てのカイロには、使用期限がある。前の職場にいた頃、体育の先生から「使用期限が切れているんだけど、よかったら使って」と言われ、いくつかもらった。しかし、さすがは期限切れ、ポカポカまではいかず、ぬるい温度で止まってしまった。残り物カイロは、不完全燃焼となるらしい。大量に買うのも考えものだ。
 私のお気に入りは、靴下に貼るカイロである。靴がきつくなるという欠点はあるけれど、冷たい足先が暖かくなり、やる気がわいてくる。
 風呂掃除のさい、カイロが貼り付いたままの靴下を脱ぎ、床に放置していた。15分ほど経ち、再び履こうとしたら、カイロの温度が上昇し、丸く膨らんでいたので驚いた。体から離すと、機嫌を損ねるのだろうか。靴下に足を通すと、ふくれたほっぺがしぼんできた。5分後には元通りとなり、靴が履けるようになった。こいつは、淋しがり屋なのかもしれない。
 服に貼るカイロなら、腰のあたりにセットする。体全体が温まり、生理痛にも効く。
 先日行われた入試では、寒い廊下で受験生の案内をする仕事が割り当てられた。コートとマフラーで完全防備をし、靴下のカイロも貼った。さらに、同じ係の人が小さな「貼らないカイロ」なるものをくれた。

 これは、どうやって使うんだろう??

 手に持つ人もいるが、仕事中は邪魔だ。ズボンのポケットに入れておいたら、モモの付け根あたりが、とても暖かい。そのまま5時間くらい、入れっぱなしだったろうか。風呂の時間となり、足を見てびっくりした。

 赤くなってる!

 私のモモは、四角い形に赤く染まっていた。これが、低温やけどというやつか。痛くはないが、私の肌には刺激が強かったようだ。
 貼らないカイロならば、使用期限切れでも大丈夫かも……。
 明日は節分、明後日は立春となる。
 カイロのいらない季節がじきに来る。



クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (18)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする