これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

ビーズは何の役に立つ?

2024年08月25日 16時42分25秒 | エッセイ
 夏休み中は授業がないため、出勤時刻を30分遅らせている。
 3日ほど前にホームで電車を待っていたら、右側から「ドンドン」という鈍い音が聞こえてきた。何と、40代ぐらいの男性がホームの屋根を支える柱を強い力で蹴っている音だった。こんな人がいるのかと顔をしかめていたら、翌日はいなかった。ストレス解消のためにやっているのだろうか。
 職場に行けば、生徒間トラブルの仲裁案に納得しない保護者から苦情電話がかかってくるし、家に帰れば、夫が大量に買い置きしたティッシュやトイレットペーパーを見つけてしまいゲンナリするしで、日常生活のイライラを避けては通れない。
「何か美しいものを見に行こうかなぁ」
 年に一度しかない、仕事にゆとりのある8月だ。コロナ前だったら即美術館に向かっていたが、事前予約が必要なところが増えた今は「本当に見たいもの」を展示している場所にしか行かない。正直いって、絵画だったら姉の絵以外は見たいと思わないし、文化・教養系の展覧会も厳選するようになった。
「やっぱり服飾系よね。ドレスとか」
 すかさず文化学園服飾博物館をチェックしてみる。
「ビーズ展?」



 私が仕事を休める日と開館日が一致していたこともあり、すぐにアクセスを調べた。都庁前や新宿から徒歩で行かれるらしい。これは狙い目だ。
「これもビーズ? 何をもってビーズと言うのかしら」
 チラシの画像に疑問を感じ、ネットで検索してみたら、まずはロックユニットの「B’z」がトップに出てきて「あはは」と笑う。いい曲はいっぱいあるが、『ARIGATO』が私にとっての一番かな。
「大好きだけど、これじゃな~い!」
 やっと目当てのサイトを見つけ、「主にアクセサリーに使用する、穴の開いた小さな玉状のもののこと」であるとわかった。もっとも、展示品には玉状ではなく、細長いビーズもあったので、糸が通せればみんなビーズなのであろう。
 博物館は甲州街道沿いにあり、とてもわかりやすい。



 2階に上がり、ビーズの歴史から学習した。アクセサリーだけでなく、富や権力の象徴、社会的地位、アイデンティティー、精神世界とのつながり、防具等としての役目も果たしていたとのくだりに「へえ~」と驚く。たしかにトルコ石や翡翠をふんだんに使った装飾品を見たら、裕福なことがよくわかる。
 展示品は撮影禁止なので、チラシの裏面からご紹介したい。



 鳥がたくさんついているナイジェリアの王冠はユニークだった。



 すべて小さなビーズをつなぎ合わせてできており、従者に作らせた権力を感じる。
 ポーランドの女性用衣装は華やかだ。



 どれが刺繡でどれがビーズなのかの区別はさておき、ハレの日の一着として注目を集めたに違いない。おそらく、親が可愛い娘のために、金に糸目をつけず調達したのではないだろうか。
 1階にも素敵なドレスがたくさんあった。「特別出品 田川啓二 オート・クチュールのビーズ刺繍」と書かれた一角に、目を奪われる。



 すご~い、着てみたいっ! 身長足りないけど。

 数々の力作を堪能し、入館料は大人500円なのだから破格の価格である。
 11月4日まで開催しているようなので、ぜひ目の保養にどうぞ。

 すぐに影響されるタチなので、ブログ開設から6000日を迎える記念として、何か作ってみたくなった。きっと、垢ぬけなくて野暮ったい作品になるけれど、あと29日あるから何か考えよう。ブレスレットなら簡単かも。分不相応なトルコ石などが使えるはずもなく、オールプラスチックであること間違いなしだ。
 アクセサリーで思い出した。私はビーズの指輪を持っている。



 これは3校目の勤務先で、生徒からもらったものだ。難病にかかっていた女の子だったが、自分で体調をコントロールしながら生徒会や部活動にも取り組む明るい生徒だった。日光に当たってはいけないため、体育の時間はいつも日陰で見学していた。担任だったわけではないけれど、ある日「趣味で作っているので、よかったら使ってください」と、作品のおすそ分けをいただいたというわけだ。
 無事に卒業してから2年後、彼女は体調を崩し、そのまま亡くなってしまった。葬儀にはたくさんの卒業生が集まり、彼女がいかに多くの人から愛されていて、その死を悔やまれているかを知った。
 この指輪は、色もデザインもキレイに整っている。美しく完成させようと、彼女がせっせと仕上げたであろう工程に思いを馳せた。生きたくても生きられなかった子の前で、元気な者が弱音を吐いている場合ではない。
「イヤなこともあるけど、楽しいことだってあるじゃん。前向いていこっ」
 このビーズの指輪は、「励まし」の役目を果たしてくれたようだ。

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初心者でもできる網戸張り替え

2024年08月18日 08時55分38秒 | エッセイ
 リビングの網戸が破れていた。



「ありゃあ~」
 我が家は築30年。確認したら、南からの直射日光が当たる網戸がもう一つ、同じように破れている。西日の当たる場所や日の当たらないところは何ともないので、日差しの破壊力を思い知らされた。しばらくはテープで応急処置をしていたが、お盆休みを機に、自分で張り替えに挑戦するぞッと決めた。
 頼りになるのがこの本だ。



 用意するもの、溝の掃除の仕方、ゴムを押し込む開始地点などがこと細かく書かれており、安心して「やってみよう」という気持ちになれる。ホームセンターの動画も見たが、ここまで親切な説明ではなかった。DIYの知識が乏しい者にとってはありがたい一冊だ。
 まずは網や押さえゴムの購入から始める。網目の細かさには種類があるが、26mmというスタンダードなものを選んだ。少しでも明るい色がいいので、黒ではなくグレー。
 中にはディズニーの可愛らしい網もあった。





 好きな方は、破れていなくても張り替えちゃったりして~!
 押さえゴムは太さが重要らしい。2.8mmから6.8mmまでのバリエーションがあるので、細すぎると網が浮き、太すぎると溝に入らない。面倒がらずに、今使っている押さえゴムのサイズを測って、フィットするものを注文する必要がある。我が家のサイズは4.5mmであった。
 あとはゴムを溝に押し込むローラーを買い、道具は揃った。



 問題は作業場所をどこにするかである。あまりに暑いため、室内に段ボールや新聞紙をつなげて網戸を置き、冷房をつけて取り掛かったが、これで正解だったようだ。初心者ということもあり、わずか2枚の張り替えに2時間もかかった。暑い屋外で作業していたら、具合が悪くなっていたかもしれない。
 まずは、押さえゴムを外し、溝やフレームの掃除をする。我が家では全然していなかったので、網から白い粉が落ちてきたのにはビックリした。年に1回は洗わなくてはと反省する。



 次に網を張る場所を決める。ここで大事なのは、網目がまっすぐになることと書いてあった。しかし、老眼だと網目がよく見えない。勘でやったら、案の定曲がっていた。プロはコツをつかんでいるんだろうな。教えてほしい~!
 網を仮止めする。外した押さえゴムを短く切って上部に押し込み、ずれないように固定した。クリップ等も売られているが、この方法で十分と感じる。
 新しい押さえゴムは7m。



 ねじれないように注意し、網がたるまないように引っ張りながら、これをローラーで押し込んだ。右利きの人は、左下から始めて時計回りにグルッと一周するのがセオリーとあった。



「あはは、楽しい」
 この作業が一番面白くてやりがいにつながる。結構、力がいるが、目の前で網戸が形になっていくので、達成感がものすごい。「やった~、できた!」を最も実感する過程であろう。一周したらゴムを切って見えないように処理した。
 最後に、周囲の網をカットして仕上げとなる。



 ところが、これがかなりイライラする作業であった。網がまっすぐ張れている場所は、テケテケテケとカッターが動き、なんの苦労もないのだが、曲がっている場所はカッターが引っかかり、「カクカク」と抵抗を受けて止まる。余計な時間がかかるし、キレイにカットできず、美しくならないところがストレスだった。網戸の専用カッターも売られていたけれど、買えばよかったのだろうか。クソッ。
 細かいことはさておき、完成すると新品のように見え、素人としては胸を張って「合格」と言いたい。
 あと30年はオーケーでしょ。

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即席バナナホルダー

2024年08月11日 17時22分05秒 | エッセイ
 最近読んだ本の中で、一番役に立ったのは、小林弘幸氏の日経ビジネス人文庫シリーズである。



 たまたま、図書館で時間をつぶす機会があり、チラ見したら自律神経を整える意義が書かれていた。これには大いに共感し、借りるだけでは物足りなくて、購入に至ったというわけだ。ものの見方・とらえ方を変えるだけで自律神経の乱れがなくなり、準備や段取りに力を入れれば、持てる力を存分に発揮することにつながる。誰にもできて難しくないだけに「やってみよう」と前向きな気持ちになれてよい。
 もちろん、元気に活動するには体の調子も重要であり、腸内環境についても触れられていた。ここは少々耳の痛い箇所だ。ソフトクリームやフラペチーノが好きな身としては、腸を労わっているとはいえない。だが、バナナが腸に効くのであればチャレンジしたい。防カビ剤等を避け、有機JASのバナナを買い、腸の健康も目指すことにした。



 久しぶりに食べるバナナは甘い。朝食にしたら、腹持ちがよく満腹感もある。これなら苦もなく続けられそうだ。
 さて、保管はどうしよう。一般的には、バナナは傷みやすいため、ホルダーやスタンドに吊るしておくことが推奨されている。



 残念ながら、うちにはこんな洒落た道具がなかった。でも、吊るすだけであれば、耐荷重1kgの強力マグネットフックがある。



 これにバナナを引っかけてみてはどうか。



 ……違和感がすごいが、置いておくより、バナナへのダメージが減るらしい。最初に買った房は、このように保存し、最後まで美味しくいただくことができた。
 もっといい方法がないかしら、と別の場所を探してみた。



 うん?
 木目込み細工のために買ったスタンドが目に入る。



 やはり! ピッタリではないか。
 しばらくバナナ用にしてしまおうと、安易な考えが浮かんでくる。
 追い出された金魚の「あーれぇ」という哀しい嘆きが聞こえた気がした。
 ゴメンゴメン、セリアで代わりのスタンドを探してくるから待っててね。

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いらっしゃいませ100円硬貨

2024年08月04日 17時46分55秒 | エッセイ
 武蔵野観音霊場巡りをしているが、夏場は暑くて、とても行く気になれない。
「写経はためておかなくちゃ」
 涼しくなった頃に出かけるつもりで、週に2枚は書いている。
「100円玉も用意しないとね」
 御朱印をいただくのに300円かかるが、1000円札を出してお釣りをもらうと結構待たされる。かといって「釣りはいらない」とはならないので、ぴったりの額を払い、スムーズに移動するのが一番だ。あと10か所だから30枚を調達せねば。キャッシュレス化が進むと、財布に硬貨が集まらないデメリットがある。焦ったところでどうにもならない。
「まあ、そのうち回ってくるさぁ~」
 
 先日、勤務先の高校で外国人講師が任期満了となった。終業式の日に離任式も行う予定で、サプライズ企画が進んでいた。
「3年生から色紙のプレゼントをします」
「2年生はありがとうメッセージを伝えます」
 教員がそれぞれできることを探して、感謝を持って講師を送り出す手はずを整えた。問題は花である。予算がないので、行動派の理科教員が「一人100円カンパして!」と集めて回ってくれた。
「すご~い! たくさん集まってるじゃない」
「いやあ、皆さん協力的で、快く払ってくれましたよ」
 花の注文は私がした。4800円集まったというので、5000円の花束にすればちょうどいい。
「じゃあ、このお金、渡してもいいですか」
「もちろんです」
 理科教員から硬貨の入った封筒を受け取ると、木綿豆腐ほどの重みがあった。協力者の熱意も込められたカンパに「皆いいとこあるじゃん」と口端が上がる。だが、硬貨の強制通用力は額面金額の20倍までだし、ジャラジャラさせて支払うわけにいかないので、手持ちの紙幣に両替しないといけない。
「あっ、100円玉、大量にゲットじゃん」



 こうして、苦もなく御朱印代を調達できたのであった。
 しかし、豪華な花束を写真に収め忘れてしまった。なんと残念な……。
 全部100円玉かと思ったら、50円玉も11枚紛れていた。



 うう、だまされた。まあいいけど。
 昭和生まれの多くは、硬貨がたくさんあると「昭和64年」と書かれたものを探す習性がある。この年の1月に昭和天皇が崩御され、元号が変わって平成になったことから、数が少なく貴重であるらしい。一度も見つけたことはないけれど、どこかにはあるのだろう。
 代わりに、昭和46年の硬貨が見つかった。



 昭和を西暦にするには、1925を足せばよい。つまり、1971年に作られた硬貨というわけで、現在53歳。これからも活躍してほしい。
 一昨日、見送った外国人講師からメールが届いた。無事に母国に到着したとのことで、肩の荷が下りた。日本で教壇に立った経験を、ときどき思い出してくれるとうれしい。
 早く御朱印もらいたいな~。

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