明後日から4月だ。春先は着るものに困る。さすがに分厚い冬服は着ないが、淡い色彩の薄物では寒い。
娘が中学生となった年、入学式には、やせ我慢して化繊のツーピースを着ていった。ちょうど、ソメイヨシノが満開のとき。桜と同じピンクのジャケットの下に合わせる、ピンクのワンピースは半袖だった。

「よし、ヒートテックを着ていこう。どうせ見えないし」
この手はよく使う。まずは素肌に白い長袖のヒートテックを着込み、その上から半袖のワンピースを重ねる。見た目は野球部員のようだが、上着を着てしまえばわからない。着ぶくれするわけでもなく、寒さに震えることもなく、春らしい装いが楽しめる。
まあ、ちょっとした詐欺かもしれないが。
「体育館は冷蔵庫みたいだから、80デニールの分厚いタイツにすれば、もう完璧でしょ」
浅知恵が功を奏して、式典では暖かく過ごすことができた。
ところが、中学校からの帰りがいけない。予想以上に日差しが強くて暑いのだ。日傘は持ってこなかった。太陽がジリジリ、ジリジリと容赦なく照り付けてくる。
私は『北風と太陽』という物語を思い出した。太陽と北風は、どちらが先に旅人のマントを脱がすことができるかの競争をする。先に北風が、力任せにマントを吹き飛ばそうとしたが、旅人がしっかり押さえていたから脱がせなかった。今度は太陽の番。旅人にアッチッチ~の日差しを降り注ぐと、彼は暑さに耐えきれずにマントを脱ぎ、太陽が勝つという話だ。
まさに今、上空ではその勝負が行われているのではないか。しかし、私はこの上着を脱ぐわけにいかない。たとえ汗だくになっても、熱中症になっても、自宅付近で見苦しい姿を披露するのは御免である。
ご丁寧にも、タイツは真冬仕様。額にも背中にも汗が浮かんできたが、意地でもジャケットを着たまま十分の道のりを歩いた。
どうにか家までたどり着いたとき、頬は赤くほてり、汗で袖の裏地が腕に貼りついていた。しかし、私は耐えたのだ。
天を仰いでニヤリと笑った。
北風さん、太陽さん。
この勝負、引き分けですね!

↑
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
娘が中学生となった年、入学式には、やせ我慢して化繊のツーピースを着ていった。ちょうど、ソメイヨシノが満開のとき。桜と同じピンクのジャケットの下に合わせる、ピンクのワンピースは半袖だった。

「よし、ヒートテックを着ていこう。どうせ見えないし」
この手はよく使う。まずは素肌に白い長袖のヒートテックを着込み、その上から半袖のワンピースを重ねる。見た目は野球部員のようだが、上着を着てしまえばわからない。着ぶくれするわけでもなく、寒さに震えることもなく、春らしい装いが楽しめる。
まあ、ちょっとした詐欺かもしれないが。
「体育館は冷蔵庫みたいだから、80デニールの分厚いタイツにすれば、もう完璧でしょ」
浅知恵が功を奏して、式典では暖かく過ごすことができた。
ところが、中学校からの帰りがいけない。予想以上に日差しが強くて暑いのだ。日傘は持ってこなかった。太陽がジリジリ、ジリジリと容赦なく照り付けてくる。
私は『北風と太陽』という物語を思い出した。太陽と北風は、どちらが先に旅人のマントを脱がすことができるかの競争をする。先に北風が、力任せにマントを吹き飛ばそうとしたが、旅人がしっかり押さえていたから脱がせなかった。今度は太陽の番。旅人にアッチッチ~の日差しを降り注ぐと、彼は暑さに耐えきれずにマントを脱ぎ、太陽が勝つという話だ。
まさに今、上空ではその勝負が行われているのではないか。しかし、私はこの上着を脱ぐわけにいかない。たとえ汗だくになっても、熱中症になっても、自宅付近で見苦しい姿を披露するのは御免である。
ご丁寧にも、タイツは真冬仕様。額にも背中にも汗が浮かんできたが、意地でもジャケットを着たまま十分の道のりを歩いた。
どうにか家までたどり着いたとき、頬は赤くほてり、汗で袖の裏地が腕に貼りついていた。しかし、私は耐えたのだ。
天を仰いでニヤリと笑った。
北風さん、太陽さん。
この勝負、引き分けですね!

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