これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

2時間半のランチタイム

2017年05月28日 21時33分03秒 | エッセイ
 仕事で横浜に行った。遊びではないけれど、ランチタイムは2時間半と長い。
「岩崎ミュージアムに行かれるかもしれない」
 そんな期待をして、密かに計画を練った。
 岩崎ミュージアムは、港の見える丘公園の近くにある。学校法人岩崎学園が運営する服飾とアートのミュージアムだから、「ドレス体験コーナー」なるものもあり、レトロでゴージャスなドレスを着付けてもらって記念撮影をしてくれる。横浜には何度も来ているのに、なかなか時間がとれなくて、後ろ髪を引かれながら素通りするのが常だった。
「よし、今度こそ行くぞ!」
 ランチタイムを短くすれば、余裕で行かれることは確実だが、どこでも食べられるお昼は避けたい。嗅覚を働かせてネットサーフィンをしたら、メルパルク横浜が見つかった。
「なになに、3皿プラスデザート、ドリンクつきで1500円? ここにしよう」
 いやぁ、ここは非常にコスパがよかった。



 料理はどれも美味しいし、サービスにも満足できるし、何よりもゆったりした雰囲気がありがたい。次に横浜に来たときも、ここでランチをしたいものだ。ちなみに、オールデーランチは月替わりらしく、6月のメニューは夏らしさにそそられた。
 また食べに来ちゃうかも~!
 同じことを考える人が多いのか、店内は結構混んでいた。ランチは11:30からだが、私の到着した11:45にはほぼ満席になっていた。平日なのに大人気らしい。でも、回転は早いから、満席でもロビーのソファーにのんびり腰かけ、優雅に読書でもして待てばよいのだ。
 誤算だったのは移動時間だ。港の見える丘公園を抜けて、海を見てからドレスをと思っていたのだが、ここでも「うおっ」と驚くイベントがあった。
 ハンギングバスケットと書かれたスペースに、西洋館のミニチュアが勢ぞろいしているではないか。









「なにこれ、なにこれ。かっわい~!」







 どうやら、6月4日まで「第33回全国都市緑化よこはまフェア」なるものを開催していて、ここもイベント会場の一部となっていたようだ。緑や花で彩られた西洋館たちの華やかなこと、華やかなこと。通り抜けようと思っても足が動かず、すっかり見とれて2周くらいグルグルと回ってしまった。





「ここは今だけ、ドレスはこの次もある!」
 時計をチラ見して、ミュージアムに行くのはあきらめた。こうなったら、残りの時間は植物に囲まれて過ごしたい。おっと、その前に、海だけはチェックしておかねば。



 香りの庭、イングリッシュローズの庭を堪能し、山手111番館に向かう。



 ミュージアムの代わりに、せめて西洋館に入りたい。



 これこれ、この雰囲気は、ミニチュアでは味わえませーん! 



 たしか、ブロ友さんが、ここのローズソフトはイチオシだと言っていたはずだ。パラソルの下の席に座り、ローズソフトを食べてみた。



 くんくん鼻を動かすと、バラの香りがするあたりが素晴らしい。いや、ソフトクリームだけでなく、この辺りの一帯に花の香りが漂っているのだ。ここでは、バンパネラ(吸血鬼)になった気分が味わえて、実にロマンティック。これからまた仕事が待っていることなど、きれいさっぱり忘れてしまう。
 さて、お次は横浜スタジアム。ランチタイムは終わった。また働かねば。
 ここも、緑化フェアの会場になっていたようだ。



 岩崎ミュージアムのドレスは、私に着られたくないのかしら……。
 この次こそは、この次こそは、記念撮影にこぎつけたいものだ。


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ブラックキャップ

2017年05月25日 21時14分33秒 | エッセイ
 このところ、やたらと暑い。日本はいつから、5月が真夏になったのだろう。
 暑さとともにやってくるのが害虫である。夫はすでに蚊に刺されている。蝿も好きではないが、何といっても楕円形の茶色いヤツが一番憎い。
 今年は耳より情報をゲットした。ブロ友さんが、毎年3月末から家中の角という角にブラックキャップを置くようにしたところ、8年間で2匹しかヤツらに遭遇していないのだとか。
 もっぱら我が家ではコンバットだった。だが、去年は何匹も見つけている。これでは、効き目があるとは言いがたい。風呂上がりに退治すると、もう一度浴室に戻りたくなる。本当に不衛生で腹立たしい。日中、網戸にしておくのが悪いのだろうか。それとも、家の中に巣があるのだろうか。濁点をつけると余計に汚く感じるので、「コキ」と呼ぶことにしよう。
 ブラックキャップは売れているようだ。4月上旬、スーパーに行ったら一つも残っていなかった。どの家も、この時期からコキ対策をするのかと焦ったが、ドラッグストアにはたくさん残っていたため入手できた。部屋に何個もセットして、コキの迎撃態勢をとっている。



 さあ、くるなら来い!
「おっと、加湿器をしまわなくちゃ」
 わが家は2階で、3階は収納庫になっている。ひな人形や衣類、ブーツ、タオル、毛布などが所狭しと積み上げられており、この暑さでは何分もいられない。空調もなく熱帯のようだ。
「ん? コキは湿度と温度の高い場所が好きなんじゃなかったっけ……」
 気づいた瞬間ゾッとした。
 ここだ! ここがヤツらのアジトに違いない!
 道理で、いくら退治しても、もぐら叩きのように切りがないわけだ。3階にこそ、ブラックキャップを置かなくてはいけなかった。
 1箱12個入り。ありったけを床や柱に並べて収納庫を閉めた。ときはすでに5月。はたして間に合うだろうか。一週間経ったが、見るのが怖くて、あれから3階に行っていない。


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2017 けやきひろばビール祭り

2017年05月21日 20時43分26秒 | エッセイ
 国内最大級といわれる「けやきひろばビール祭り」に行ってきた。クラフトビールは大好きだ。今日で最終日を迎えるのが残念である。
「どこからいこうか。いっぱいあって迷うなぁ」
 近場は今日でなくてもよい。やまぐり鳴滝高原ブルワリーという店を選んだ。決め手となったのは、4種類のお試しセットが美味しそうだったから。



 以前、横浜のオクトーバーフェストに行ったときは、プラカップではなかった。デポジット制とはいえ、グラスで飲めたのが懐かしく思い出される。
「うん、うまっ」
 全部美味しかったけれど、特にヴァイツェンが気に入った。プラカップでもこれだけ美味しいのだから、グラスだったらもっとイケただろう。でも、グラスだったら、少量の飲み比べはできないと思う。
「まあ、どっちもどっちってことか」
 ついでに日本酒風のビールも購入し、5種を試してみたところ、すべてが合格点。山口に行ったら、ここのビールをみやげに買いたい。
「お腹すいた。あっ、宇都宮餃子がある」



 お酒だけでなく、食べ物メニューも充実している点も嬉しい。
 私たちは、立ち飲み専用の丸テーブルにいたのだが、レジャーシートを広げている人が多かった。テントの下には予約席もあるのだが、有料だし、きゅうくつな印象を受ける。雨が降らない限り、開放感のある場所で飲みたい。
「じゃあ次。松坂牛ホルモンっていうのと、松坂牛フランクもいいね」
 本格的に食べ始めると、飲むのを忘れてしまうのは私の悪い癖だ。松坂牛を売っている、伊勢角屋麦酒というお店で、またまた4種飲み比べをすることにした。



 レッドエールとブラウンエールが品切れでガッカリ……。でも、伊勢茶エールやら、ヒメホワイトやら、聞いたことのないビールが買えた。



 こちらも合格点。クラフトビールらしく、少々苦みがあって、私は好きだ。
「ついでに、チャーハンと焼きそば~♪」
 私はすっかり食べる方に集中してしまった。
 宇都宮餃子は保温してあったけれど、チャーハンと焼きそばは冷たい。店の特徴を、しっかりおぼえておいて、次回に反映させよう。
 お腹いっぱいになり、予定していた田沢湖ビールを飲み損ねた。メジャーなビールみたいだから、またどこかでお会いできるだろう。
 ここには、仕事帰りにフラッと立ち寄り、珍しいビールを1~2杯飲んだら帰るというスタイルがよさそうだ。レジャーシートに寝転がってウダウダしているところを、知人に見られたら大変だし。
 帰ってから、チラシをじっくり見て、霧島ビールを飲めばよかったと後悔した。瓶がやたらとカッコいいのだ。これもまた来年かな。
 出店された方々、ごちそうさまでした。


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定期がない!

2017年05月18日 20時47分08秒 | エッセイ
 6:58の電車に乗るため家を出た。改札口で定期券を出そうとしたら、スカッと空振りをする。
 あれれ?
「うわ、大変。定期を忘れた」
 前の日は、書類の入る大きめのバッグを持っていった。定期券は、まだそこにあるのだろう。名刺入れをいつものバッグに戻しただけで、定期がそのままとは不覚である。
「しょうがない。切符を買うか」
 家から駅までは徒歩10分。再度、往復する元気はない。交通費の800円を払った方がマシだ。
 財布を開けると、小銭がジャラジャラしている。ちょうどいいからこれを使ってやれ、と券売機にぶち込んだ。
「ん? いつの間にか240円になっている……」
 最後に切符を買ったときは、池袋まで230円だった。IC定期になると精算もしないから、値上がりしたことにも気づかないままだ。
「IC専用? ダメだ、ここもあそこも入れない」
 さらに、自動改札が行く手を阻む。ICカード専用改札ばかりで、切符が使える改札がなかなか見つからない。ようやく見つけて、ホームにたどり着いたときは安堵した。
 定期がないだけで、こんなに面倒なのかと驚く。池袋に着いたら、今度はJRの切符を買わねば。
 いつもの電車に乗れるかなぁ……。
 20年ぶりに定期券を忘れ、時代の移り変わりを実感する。今の世の中は、カードを持たない人に冷たい。運賃は高くなるし、切符対応の改札でないと入れないとは何事か。券売機が「カードのご利用をおすすめします」などと表示してきたので、カチンときて「忘れたんだってばよ!」と言い返したくなった。
 去年の5月に、スーパーのクレジットカードを作った。支払いは楽になったが、1000円札が不足しがちだ。これまで、スーパーで5000円くらいの買い物をして1万円札を出し、釣りとして1000円札を手にしていた。このサイクルが狂うと、ちょっとした支払いのときに困る。急いでいる朝にタクシーを使い、万札を出すのはいかがなものか。コンビニで、500円足らずのものを買うときも同じだ。
「そうだ、機械だったら気にしなくていいんじゃない?」
 機械はせっかくだから、券売機で1万円札を使わせてもらうことにした。気が弱いワタクシにはピッタリの作戦である。
「えーと、JRは160円だから……」
 券売機で160円のボタンを押し、10060円を投入した。50円玉は使わず10円玉6枚が減り、財布が一気に軽くなる。釣銭は9900円。ついでに、最寄駅までの240円の切符も1万円で買った。もう10円玉は残っていなかったが、9760円をゲットする。



「よし、これでしばらく1000円札には困らないぞ!」
 800円は無駄になったが、転んでもただでは起きないのが笹木流である。
「帰ったら、すぐバッグに定期を入れよう」
 ……ちょっと、やせ我慢したかもしれないが。


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2017 おねだり母の日

2017年05月14日 21時48分52秒 | エッセイ
 今日は母の日だが、大学生の娘は出かけている。帰りは夜だ。何か買ってあげるとも言われていない。
「ママ、カーネーション買ってきたよ」
 夫が気を利かせたつもりで、スーパーから戻ってきた。気持ちはありがたいのだが、1輪だけというのが引っかかる。
「ありがとう。でも、おばあちゃんのは?」
「おふくろの?」
 義母は認知症を患い寝たきりだ。二世帯住宅の一階に住んでいるから、これをあげればいいのにと思った。
「おばあちゃん、花が好きだったじゃない。きっと喜ぶよ」
「そうだな。じゃあ、そうさせてもらうよ」
 カーネーションは夫に連れられ、階段を下りていった。



 義母のそばには、夫の弟がいたらしい。
「おふくろ、起きてる? カーネーションなんだけど」
「今トイレ。ああ、花瓶がキレイだね」
 おっと、花瓶かい……。どうにも嚙み合わない会話である。男の兄弟は、こんなものなのだろうか。
 ともあれ、義母は母の日であることを理解し、大喜びしたとか。
 めでたし、めでたし。
 携帯電話を取り出し、娘にメールを送る。スマホではなくガラケーだ。
「母の日スイーツは、ねんりん家のバウムクーヘンがいいな~」
 私の母は、意外に控えめな人間で、自分から〇〇が欲しいなどとは決して言えない。思っていても口に出せないのである。察してくれるのを待ち、もらえなかったら我慢する。子どもの側からすれば、「言ってくれればいいのに」となるから、不思議で仕方なかった。
 そんな母には先に、クッキーとチョコレート、ドリップコーヒーを渡してある。これで安心だ。
 夕方になり、やっと娘から返信がきた。
「わかった。お店で電話するから、何を買えばいいのか決めておいて」
 やった~!
 




 賞味期限が先の、丸いものからいただいた。ふわふわしていて、口当たりがよい。いくらでも食べられそうだが、血糖値を心配して4分の1にとどめておく。
 細いほうは21日まで日持ちする。でも、その前に確実になくなるだろう。
「おいしい」
 夫も娘もガバガバ食べている。義母はすっかり食が細くなり、スイーツどころではなくなった。元気に食べられるうちが華である。
 実は、スイーツだけでなく、他にも欲しいものがあった。
「ねえ、今度は黒のワイシャツ買って~。ワンピースの下に合わせたいのよね」
「…………」
 バイト代が入り、娘の懐が潤っていることは知っている。断られなかったから、近いうちに買ってくれるだろう。
 図々しいくらいがちょうどいい、ってことでいいかしら。


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ハンコ愛

2017年05月11日 23時00分52秒 | エッセイ
 今年は思いのほか、授業がスムーズだ。開始後すぐに寝てしまう生徒はいないし、おしゃべりに明け暮れたり、教科書も開けずにボンヤリしている者もいない。
 優秀な生徒が集まったわけではないから、おそらく、授業内検印制にしたことがよかったのだろう。
「これから検印票を配ります。毎時間、使いますから、問題集に貼っておきましょう」
 最初の授業でこう宣言して、検印の数が成績に入ることを伝えておいた。
 3ページから4ページまでできたら、チャイムが鳴る前に検印をペッタン。次の授業では、5ページから6ページができたらペッタンという具合に、毎回1つずつ増えていく。



 私は「野村」さんではないが、こんな感じのハンコを使っている。
 以前は、課題を提出させて、職員室で検印をしていた。でも、提出物に不備があるとハンコが押せない。返却して直させるのは、結構手間である。欠席者の課題は返せなくてたまるし、課題の山を見るのがストレスだった。
 そこで、生徒の目の前でハンコを押すスタイルに変えたら、これが彼らにとっても私にとっても、ベリグ~ッなのである。
「ここ書いてないよ。これじゃ検印が押せない」
「あっ、本当だ。待って先生、今書いたからハンコちょうだい」
「よし、ここに押しておくからね」
「わーい」
 という具合に、生徒は1時間分の努力を認められて満足する。また、ハンコの数が少ないと気後れするのか、他の子に負けないよう授業に参加する。成果の「見える化」を図るだけで、居眠りや無気力が激減するとは思わなかった。
 また私も、提出物の山を持ち帰らずにすむから、次の授業準備に時間をかけることができる。いいことだらけだ。
 もし、これがハンコではなく、〇などの記号やサインだったら、こんなに頑張らないのではないか。日本はハンコ社会である。日本人のDNAには、「ハンコをもらいたい」という根本的な要求が刻み込まれているのかもしれない。
 そういえば、小学生の夏休み、毎朝神社に集まってラジオ体操をした。参加すると、日にちのところにスタンプを押してもらったものだ。これが実にうれしくて、1回でも欠けてなるものかと早起きに励んだのだっけ。
 今日も、やんちゃな男子が検印票を持って話しかけてきた。
「先生、この前押してもらえなかったところ、終わったから見て」
「どれどれ。あっ、できてる」
「頑張った」
「じゃあ、ここに押すね。追い付いてよかったじゃない」
 彼は隣の子の検印票と見比べて、安心したような笑みを浮かべた。生徒も私も、検印が大好きなのである。
 ネットでスタンプを見ていたら、こんな印を見つけた。



 可愛いカルガモ! 欲しくなっちゃった~!


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2017 ゴールデンウイーク

2017年05月07日 20時14分36秒 | エッセイ
 毎年、ゴールデンウイークは遠出しない。3日には娘の誕生会、5日には甥の節句を祝うため、親族が集まるからだ。
 誕生会はわが家で行うが、今年は寿司やすき焼きを注文せず、自分で作ってみたくなった。きっちりとした計画性はなく、ちょっとした思いつきである。もう一つフライパンが必要とわかり、妹にメールをする。
「ねえ、フライパンを貸してくれる?」
「フライパン? いいよ」
「来るときに持ってきてね。忘れたら料理が作れなくて大変よ」
 借りる分際にしては、少々脅迫めいた言い回しである。しかし、妹はドライバーを務める義弟のノンアルコールビールを忘れたこともあるので、「もし持ってきてくれなかったら……」と不安になったのだ。
「こんばんは。ケーキとフライパン持ってきたよ」
 不安を吹き飛ばすように、妹一家が時間通りにやってきた。これでパエリアが作れる。だが、早くから準備をした割に、料理が追いつかない。
「ねえ、奈津、この本見て、カルパッチョのソースを作ってくれる?」
「えっ、アタシが?」
 戸惑いつつ、妹は手伝ってくれた。から揚げ、キッシュ、マグロのカルパッチョができ上がる。だが、チーズとクラッカーを食べすぎたのか、ホタテのグラタンが焼きあがったときには、「もうお腹いっぱい」などという悲鳴が上がっていた。
 これはまずい。
 親族も高齢化が進み、たくさん食べられなくなっているようだ。気づいたのは、一番食べてほしかったパエリアが出来上がったときである。
「入るかなぁ」
「ひと口あれば十分」
 パエリアは、フライパンひとつで4人分できるのだが、結局、それしか売れなかった。妹のフライパンで作ったパエリアは、手つかずで丸々残っている。



「しょうがないなぁ。奈津、悪いけど、フライパンごとおみやげに持ち帰ってよ」
「ははは、じゃあいただくわ」
 妹を脅してまで、フライパンを借りた意味がわからなくなった。しかし、無謀な計画を立てる姉に、嫌な顔もせず助けてくれたことには、ひたすら感謝するばかりだ。奈津、ありがとう!
 5日は、妹の家に集まった。今度は、私が子どもの日ケーキを持っていく。
「おお~、いつ見ても立派な兜だねぇ」



 うちには男の子がいないので、兜もこいのぼりもない。実は、毎年、これを拝むのを楽しみにしている。
「ちょっと。座っていないで手伝ってちょうだい」
 この日は、姉と姉の夫が先に来ていた。サラダを分けている姉が、ダンナをこき使おうとしており、私の出番はなさそうだった。母も、割り箸を与えられて、用事を言いつけられている。早く着くと、ろくなことがないような気がする。
「これ、食べてみる? いぶりがっこっていうんだよ」
「いぶりがっこ?」
 鉄道マニアの義兄は、全国各地を旅行している。今回は秋田まで足を延ばしたようだ。



「焚き木たくあんだってさ。ここに説明が書いてあるよ」



「ほお~」
 ひとつもらって食べてみたら、まさにスモークたくあんではないか。なかなかイケた。ビールにも合う。
「おいしいじゃん」
 子どもたちにも好評である。さすが、学力テスト上位県の秋田、きっちり計算された味だ。
「岡山の『ママカリ』っていう魚もあるよ。食べる?」
 義兄のみやげは果てしない……。
 妹の用意した料理は多すぎず、少なすぎずで、ちょうどよい量だった。食後のケーキも楽々胃袋に入る。
「こどもの日おめでとう」
「おめでとう」



 ケーキを撮っているとき、義弟がふざけて写真に入り込んできたのだが、さすがにそれはアップせずにおこう。
 今年のGWは、「ごはん、わんさかいらん」だったようだ。


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心が広くなれる場所

2017年05月04日 21時22分51秒 | エッセイ
 5月1日は仕事が休みだった。仲良しの幸枝を誘い、横須賀に行く。
 紫外線を天敵とする私にしては珍しい選択だ。毎日PCとにらめっこして、室内で一日の大半を過ごしていると、開放感のある場所が恋しくなる。子どものとき、毎年のように海水浴をした観音崎に行きたくなった。
 観音崎は、三浦半島の端っこにある海水浴場である。横須賀駅からでも、馬堀海岸駅や浦賀駅からでもバスで行くことができる。10時半に浦賀駅で待ち合わせをしたら、幸枝はすでに到着していた。
「横須賀には来たことないの。すごく楽しみ~」
 幸枝はどちらかといえば肉体労働が多い。最近は、腹の立つことも頻発するようで、日常生活を忘れられる場所に行きたかったのだとか。利害関係が一致し、ウキウキとバスに乗り込んだ。
「バーベキューやってる人がいるね」
 観音崎は、ほどよい人出だった。誰もいないと不安になるが、人がいすぎても落ち着かない。海岸で火器をセッティングしている若者や、幼い子どもを連れた家族連れ、ラブラブなカップルなどが目に入る。
「海だ」



 空はイマイチ青くない。午後からは雷雨の予報だから、晴れているだけありがたいと思うべきだろう。石畳に下りて水辺に近づいた。
「見て、透明度が高いね」



 幸枝は興奮気味だ。セルカ棒を出して自撮りに励んでいる。
 私は、やたらと立派なカメラを構えた人の多いことが気になった。ここは撮影スポットなのだろうか。
「あ、船が見える」



 幸枝の指さす方を見ると、やたらとデカい船がゆっくりと航行していた。すかさず望遠レンズをのぞき込む。やけに長くて、客船ではないようだ。



 ヨットも出ていた。初夏の風に吹かれて、さぞかし心地よいのではないか。



 さきほどの船の後ろに黒い影が見えてきた。写真を撮りながら、幸枝に耳打ちする。
「あれが房総半島だって。千葉の富津までは7kmしか離れていないそうよ」
「えー、そんなに近いの? 知らなかった」



 きっと、富津からも三浦半島が見えるのだろう。泳いで渡れる人がいたりして。
 観音埼灯台には、絶対に登りたかった。急な上り坂を歩き、ゼイゼイしながら入口までたどり着く。



 ここにはマムシがいるらしい。ついでに、食べ歩きをしていると、悠々と飛んでいるトンビが急降下してきて奪うそうだ。注意を促す掲示物があった。



 灯台からの眺めは素敵だ。



 海は限りなく広く大きい。いろいろな種類の船が水しぶきを上げて通り過ぎていく。





 山には藤がたわわに開き、新緑に彩を添えていた。



 こんな景色を見て暮らしたら、イライラムカムカしたりせず、寛大な気持ちで毎日を送れるに違いない。
「いいねぇ。心が広くなれそう」
「ホントだね。来てよかった」
 すっかり気をよくして灯台を下りると、受付のオバちゃんが話しかけてきた。
「今日はね、護衛艦のいずもがこの浦賀水路を通りましたよ」
「いずも? そういえば、朝のニュースでやってたっけ……」
 画像を調べてみたら、最初に見たバカでかい船が、まさにそれだった。道理で、カメラをのぞき込んでいた人が多かったわけだ。
「うそぉ、いずもだったの!?」
「すごいじゃない、見ちゃったね!」
 政治的な問題はさておき、新聞の一面を飾るような大ニュースの現場に出くわすことはめったにない。米艦防護の任務は3日に終了したようだが、その瞬間にいたというだけで、関連記事を読み漁るようになった。我ながら現金なヤツである。
 トンビに隠れてソフトクリームを食べたあとは、横須賀行きのバスに乗り、どぶ板商店街に向かう。雲行きが怪しくなり、雨がポツポツ降ってきた。
「TSUNAMIってところだよ」
「あったあった」
 ここはネイビーバーガーが有名な店だ。ショーウインドウでは、背の高い「第7艦隊バーガー」のサンプルが光っていたが、とても食べきれそうにない。



 小さめの「ジョージ・ワシントンバーガー」を注文した。



 これでも、かなり食べごたえがあり、あごが疲れてしまった。
「ドナルド・トランプバーガー」や「バラク・オバマバーガー」もあったが、こちらは次回のお楽しみに。
 心が広くなる成果は十分あった。昨日も今日も、夕食の支度に手間取ったのに、イライラしたり慌てたりしなかったのだ。「なるようになるさ~」と緩く構え、平常心でいられるのが不思議である。
 もっとも、家族は「まだ?」とジリジリして待っていたが……。


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