ボーナスが出たはいいが、まだ何にも使っていない。
7月最後の週末である。デパートまで出かけることにした。
「えっと、長袖のブラウスはどこだ?」
ナラ・カミーチェというブランドが好きなので、手ぶらで帰るまいという覚悟で店に行ったが、商品の半分は半袖である。欲しいものは見つからなかった。
買い物は、理屈ではないと思っている。「ピピッ」とくる商品があれば買うし、なければ買わない。今すぐ必要、というものでない限り、妥協することはない。早々にブラウスをあきらめ、秋になったらまた来ようと決めた。
次にやってきたのは靴売り場。さすがにサンダル類が幅を利かせているが、それぞれに個性があって面白い。宝探しのつもりで、素敵な商品はないかと目を走らせていた。
「ん?」
アナスイの棚で目が止まる。フェミニンで、ヨーロッパの雰囲気をまとったサンダルがあったからだ。アンティーク調の装飾と、貴婦人のような佇まいに「ピピッ」どころか「ピピピピピピッ」ときた。
好きなカテゴリーのど真ん中に、直球を投げ込まれた感覚である。さっそく足を入れると、ちょっとキツい。でも履ける。若い子用の商品らしいが、このサイズなら大学2年の娘にも合うだろう。共用にすればいいやと考えて、買うことにした。
欲しいものが買えると、帰り道も足取りが軽い。ドトールでお茶を飲んだあと、元気いっぱいで家に着いた。
「ジャジャーン」
玄関でアナスイの箱を開けてみると、先ほどの貴婦人が顔を出した。
ヒールがオシャレ。
ロココ調? ちょっと細いけれど、華奢なデザインに惹かれる。
後姿の優雅なことといったらない。
しかし、途中でお茶を飲んだのがいけなかったのか、家に着いたら足が入らない。
「うそっ、何で?」
ストッキングを履けば入らないこともないが、きゅうくつで息苦しい。これでは長時間歩くことは無理だろう。幅広の足は、貴婦人に拒否されたのかもしれない。
「……いいや、ミキにあげよう」
残念ながら、娘へのプレゼントとなってしまった。ガクッ。
しょんぼりしてサンダルを箱に収納していたら、目の前を大きな蚊が通って行った。叩こうとしたが逃げられ見失う。そのうち、左手の肘の近くがかゆくなってきた。
「わっ、刺された~!」
貴婦人に夢中になっているところに、やぶ蚊が忍び寄っていたようだ。卑怯なヤツめ。ムカムカしながら、プクリと赤く盛り上がった部分にムヒを塗る。
泣きっ面に蜂ではなく、泣きっ面にやぶ蚊である。
いいことは何もなかった。
まあ、そんな日もあるさ。
↑
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
7月最後の週末である。デパートまで出かけることにした。
「えっと、長袖のブラウスはどこだ?」
ナラ・カミーチェというブランドが好きなので、手ぶらで帰るまいという覚悟で店に行ったが、商品の半分は半袖である。欲しいものは見つからなかった。
買い物は、理屈ではないと思っている。「ピピッ」とくる商品があれば買うし、なければ買わない。今すぐ必要、というものでない限り、妥協することはない。早々にブラウスをあきらめ、秋になったらまた来ようと決めた。
次にやってきたのは靴売り場。さすがにサンダル類が幅を利かせているが、それぞれに個性があって面白い。宝探しのつもりで、素敵な商品はないかと目を走らせていた。
「ん?」
アナスイの棚で目が止まる。フェミニンで、ヨーロッパの雰囲気をまとったサンダルがあったからだ。アンティーク調の装飾と、貴婦人のような佇まいに「ピピッ」どころか「ピピピピピピッ」ときた。
好きなカテゴリーのど真ん中に、直球を投げ込まれた感覚である。さっそく足を入れると、ちょっとキツい。でも履ける。若い子用の商品らしいが、このサイズなら大学2年の娘にも合うだろう。共用にすればいいやと考えて、買うことにした。
欲しいものが買えると、帰り道も足取りが軽い。ドトールでお茶を飲んだあと、元気いっぱいで家に着いた。
「ジャジャーン」
玄関でアナスイの箱を開けてみると、先ほどの貴婦人が顔を出した。
ヒールがオシャレ。
ロココ調? ちょっと細いけれど、華奢なデザインに惹かれる。
後姿の優雅なことといったらない。
しかし、途中でお茶を飲んだのがいけなかったのか、家に着いたら足が入らない。
「うそっ、何で?」
ストッキングを履けば入らないこともないが、きゅうくつで息苦しい。これでは長時間歩くことは無理だろう。幅広の足は、貴婦人に拒否されたのかもしれない。
「……いいや、ミキにあげよう」
残念ながら、娘へのプレゼントとなってしまった。ガクッ。
しょんぼりしてサンダルを箱に収納していたら、目の前を大きな蚊が通って行った。叩こうとしたが逃げられ見失う。そのうち、左手の肘の近くがかゆくなってきた。
「わっ、刺された~!」
貴婦人に夢中になっているところに、やぶ蚊が忍び寄っていたようだ。卑怯なヤツめ。ムカムカしながら、プクリと赤く盛り上がった部分にムヒを塗る。
泣きっ面に蜂ではなく、泣きっ面にやぶ蚊である。
いいことは何もなかった。
まあ、そんな日もあるさ。
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