これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

ふかふか布団で見た夢は

2013年09月29日 19時43分19秒 | エッセイ
 敷布団を打ち直しに出したら、ひと月後、倍に膨らんで戻ってきた。



 ふわふわだ~!

 打ち直しは夏にするものではない。実家にいたころ、7月に新しい敷布団が届いたときがある。綿が過密で熱がこもり、毎日大汗をかいて寝た。あれは失敗だった。
 肌寒くなってきた最近なら、暖かい布団がちょうどいい。たっぷりの綿に体を沈ませ、リッチな気分になれる。「こりゃ、いい夢が見られそうだ」と喜んで寝た。
 たしかに、ぬくぬくして気持ちよかったのだが、おかしな夢で目が覚めた。
 夢の中の私は、ケーキが食べたくて、洋菓子店に行く。そこで生クリームたっぷりの、美味しそうなカットケーキを買うのだが、家に帰ってビックリする。

 あれっ、ケーキがトイレットペーパーになってる……。



 箱のフタを開けると、そこにはトイレットペーパーが5個、芯の空洞が見える状態で並んでいるではないか。「何で? 何で?」と混乱していたら、朝が来ていた。
 不可解な夢には心当たりがある。
 寝る前に見た、夕刊のスイーツだ。



 記事には、栗抹茶ロールケーキと書いてあった。大変、食欲をそそられ、ジッと凝視していたが、京都のお店らしい。遠くて買いに行けないと、結局はあきらめたのだった。
 ロールケーキへの執念が形を変え、トイレットペーパーになったのであろう。

 どうせなら、ペロペロキャンディーやのり巻きになればいいものを、なぜトイレットペーパーなのかなぁ!?

 寝心地のいい布団の、ちょっとしたいたずらだったのかもしれない。
 さて、今日はどんな夢が見られることやら。


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オーストラリアみやげ

2013年09月26日 20時17分13秒 | エッセイ
 同僚がオーストラリアに行ってきた。
「エアーズロックからシドニーに行きました。天気にも恵まれて、メチャよかったですよ!」
 雨女の私には、羨ましいことだ。
 エアーズロックは、天気が悪いと登れないらしい。出発前、彼は心配していたが、難なくクリアできたと聞き安心した。
 私もオーストラリアには行ったことがあるが、ゴールドコースト、メルボルン、シドニーといったコースで、大自然には触れていない。もし、機会があれば、晴れ女か晴れ男を連れていかねば。
「オペラハウスには行かれました?」
 そこは、私の好きなスポットのひとつである。ぜひ、感想を聞きたくなった。
「はい、見てきました。オペラハウスもいいけれど、ハーバーブリッジクライムといって、ブリッジのてっぺんまで歩いて上ることができるんです。あれがすごく楽しかったなぁ」
 へえ、そんなところがあったのか。これも次回の楽しみに取っておこう。
 どの学校にも、海外旅行の好きな人が何人かいる。彼も奥さんと、毎年どこかの国に出かけているという。旅行が待っていることを考えれば、面倒な仕事も頑張れるのだから、その威力は絶大だ。
 しかし、「飛行機が怖い」とか「英語が苦手」などと敬遠する、アンチ海外旅行派も存在している。彼らから見たら、わずか8日間の旅行に大金をつぎこむ気持ちがわからないようだ。安くはない金額だが、少なくとも私は、将来の自分に投資している。
「これ、おみやげです。よかったら使ってください」
「わあ、ありがとうございます!」



 おみやげといえばお菓子、という発想しかなかったが、同僚からいただいたものは石鹸だった。
 箱の裏面には、ユーカリ油配合などと書かれている。



 箱から出すと、明るい緑色の石鹸が出てきた。ユーカリも、こんな色をしているのだろうか。



 きめ細かい泡立ちで肌にやさしく、大変気に入った。

 今度からお菓子をやめて、私も石鹸にしようかなぁ。

 単細胞なので、ふとそんなことを考えた。
 ところで、我が家の引き出しの中には、年代物の紙せっけんがある。



 これは、私が10歳くらいのときに、大宮の雑貨屋さんで買ったものだ。
 すでに35年は経っている。果たして泡が立つのか、洗浄力があるのか、試してみたくなった。
 2枚ほどはがして濡らし、両手でこすってみたら……。



 すごい、ちゃんと石鹸の役割を果たしてる!

 昭和50年代ならば、この紙せっけんもMADE IN JAPANだろう。日本製は優秀なのである。
 ユーカリソープの上に、この紙せっけんを載せたら、日豪合同、無敵の強力洗浄石鹸が誕生したりして。


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2013 誕生日会

2013年09月22日 20時48分36秒 | エッセイ
 甥が13歳、姪が11歳の誕生日を迎え、お祝いをしに出かけた。
「簿記やってみる」
 妹の家に着くと、高2の娘がカバンから簿記の問題集を取り出した。先日、某大学の模擬授業を受け、簿記に興味を持ったらしい。11月に検定を受ける予定だが、問題集を買っただけで安心してしまい、ページをめくるのは初めてである。



「えーと、次の各項目について、資産に属するものにはAを、負債に属するものにはBを、純資産に属するものにはCを、いずれにも属さないものにはDを記入しなさい」
 問題を声に出して読んでいると、父が近寄ってきた。
「なんだ、簿記か」
「あ、おじいちゃん」
「じいちゃんも、簿記できるんだぞ。備品はAだ」
「A?」
「買掛金はB、貸付金はA……」
「ちょっと、ちょっと」
「建物はA、現金もA……」
「お母さん、おじいちゃんがミキの問題集、やっちゃうよ~!」
 さて、主役の一人である甥は、歯列矯正のため歯科に行っていた。帰ってくるなり、「今日はグルグル巻きにされた~」と、不自由なワイヤーを嘆いていたが、すぐに機嫌を直していた。
 姪は、かなり身長も伸びてきて、食事の準備を手伝っていた。子どもの成長は早い。
「ミキ、そろそろご飯みたいだから、問題集をしまいなさい」
「はーい」



「お誕生日おめでとう。かんぱーい!」
 誕生祝といっても、それを機に親族が集まることに意義がある。
 残念ながら、アルコール係の姉夫婦は仕事で来られなかった。だから酒類が淋しい……。もとい、姉がいなくて淋しい、と言うべきか。
 妹は、テーブルとキッチンを往復して忙しそうだ。かといって、ジジババを話し相手にすると、やたらと体力を消耗する。
 たとえば、母に「牛タン食べる?」と聞くと、「うん」と答えた。しかし、現物を見ると、「牛タンはいらない」と断わるではないか。だいぶ、理解力が落ちたようだ。
 父は父で、頑なに私が勤務先を異動したと思っているし、どうも話がかみ合わない。やはり、姉がいないとつまらなくて、妹の漫画を読んでいた。
 ケーキを食べ終わったところで、甥と姪にプレゼントを渡していないことに気づいた。
「いかん、いかん。おーい、プレゼントだよ~!」



 包みの中身はゲームソフトだ。2人とも喜び、早速3DSで遊びはじめた。図体は大きくなっても、こういうところはまだ幼い。ゲームを卒業するのはまだ先なのだろう。
「ゲームは手先を動かすから、高齢者にもいいって。この前、テレビで言ってたよ」
 夫が思い出したように言った。
 いや、ゲームよりも、ボケ防止の名案がある。父が、ミキに簿記を教えてくれればいいのだ。頼りにされれば、きっと張り切るだろう。高齢者に活躍の場を提供することが大事だ。
「あ、おじいちゃん、間違ってる。資本金はCなのに、Bって書いてあるじゃん」
「…………」
 答え合わせを始めた娘が、赤で×をつけていた。こんな初歩的なところを間違えたら、ちょっと頼めないかも……。
 もやもやした気分のまま、誕生日会はお開きになった。
「ごちそうさま。またね!」
「おやすみ。ありがとう!」
 次に会うのはクリスマスである。
 ジジババに、ゲーム機をプレゼントするべきか否か。


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新居はやめて

2013年09月19日 21時12分24秒 | エッセイ
 新しいバスマットを買った。
 今まで使っていたものは薄手だったせいか、1年ほどしか持たなかった。今度は少々厚手の、マットにした。早速、洗濯機に入れ、洗ってから床に敷く。
 これで、湯上がりは気分いいこと間違いなし。



「ただいま~」
 7時過ぎに帰り、真っ先に洗面所に行く。コンタクトレンズを外し、目をスッキリさせるのだ。
 電気をつけたら、新しいバスマットが目に入った。ふかふかで、サイズもちょうどいいではないか。

 ん?

 そのとき、マットの下に、黒いものが滑りこんでいった。
 見間違いであってほしいと願ったが、青いマットからはみ出している、2本の長い触角が現実であることを物語っている。言わずとしれた、楕円の「G」と呼ばれる嫌われ者だ。

 洗いたてのおニューに、何てことを~!!

 おそるおそるマットをめくると、Gは「キャーッ」と悲鳴を上げんばかりに逃げ出した。
 今年はまだお目にかかったことがなかったのに、こんなところに隠れていたとは。容赦なく叩きのめし、三途の川を渡っていただいた。
 Gは、バスマットが好きなのかもしれない。以前も、マットの下にヤツらのフンが落ちていた。一家団欒の場所なのか、デートスポットなのか、寝床なのかは定かでないが、やけに出現率が高い。
 バスに限らず、マット自体を好むようだ。勤務先の学校では、数年前にトイレのマットを撤去した。床掃除のためにめくったら、Gの卵がびっしり産みつけられていたからだ。聞くだけでかゆくなってくるが、事実である。
 楕円のヤツらの家にならないよう、気をつけねばなくては……。
 
 今日は十五夜。
 雲もなく、月がキレイだ。
 


 ああ、楕円じゃなくてよかった。


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2013 敬老の日

2013年09月15日 20時35分11秒 | エッセイ
 明日は敬老の日だが、先月あたりから91歳の義母の様子がおかしい。
「電気代の計算がわからなくなっちゃった」
 わが家は二世帯住宅なので、電気代は世帯ごとにメーターを見て分けているのだが、やり方を失念したらしい。
「どこに行くの?」
 出かけようとしたら、行き先を尋ねられた。前の日も、その前の日も、旅行先を教えていたはずなのに、すっかり忘れている。カレンダーに書き留めておいたことも、頭から抜けてしまったようだ。
 9月に入り、義母の部屋から足のニオイのような異臭が漂ってきたときは、いよいよ不安になった。
「おばあちゃん、大丈夫かな」
「たぶん」
 息子である夫は、あまり心配していない。少々イラッとした。
 今年は、敬老の日にあわせて、「紅白かもめの玉子」を用意した。まだまだ、長生きしてもらわねば。



 ここで、もっとビッグなお祝いが飛び込んできた。
「ヤエちゃん、赤ちゃんが生まれたって」
 娘がスマホを見て、大きな声をあげる。ヤエちゃんというのは、夫の弟の娘、つまり姪なのだが、8月末に無事女児を出産したという。先日、赤ちゃんを連れて実家に戻ってきたそうだ。義弟の家は隣なので、早速、娘と見に行った。
「わあ、ちっちゃ~い」
「うん、予定日より早かったから、他の子より小さいの」
「あ、動いてる」
「そろそろ、お腹がすくころだよ」
 ヤエちゃんは初めての出産で、昼も夜もミルクやおむつの世話に追われ疲れ気味だが、母親になったことを楽しんでいるように見える。顔をしわくちゃにして「うぎゃあ」と泣き始めた赤ちゃんを抱っこし、ミルクを飲ませ始めた。フォークみたいに小型の両手をグーにして、ベビーは力いっぱい哺乳瓶に吸い付いている。
「かわいい♪」
「ありがとう」
 この子は、義母にとってはひ孫だ。また、格別の想いを抱くに違いない。
「おばあちゃんにも見せたんだよね」
「うん、おととい行ってきた。すごく喜んでくれたんだけど、赤ちゃんが寝ちゃって起きなかったの」
 目を開けなくても、うれしいことに変わりはない。私だって、久しぶりの赤ちゃん誕生で、こんなにウキウキしているのだから。
 ヤエちゃんの家から、まっすぐ義母の部屋に寄った。
「こんにちはー」
「あら、いらっしゃい」
 義母は、きちんと化粧をして、出迎えてくれた。
 部屋には異臭もない。
「今、ヤエちゃんの赤ちゃんを見てきました」
「あらそう、可愛かったでしょう」
 娘がカメラを出して続ける。
「目を覚ましたから、写真撮ってきたよ。おばあちゃん、起きてるところ見てないでしょ」
「どれどれ、見せて」
 よかった、いつも通りの義母だ。赤ちゃんのおかげかもしれない。
 敬老の日、おめでとう。


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シンガポールの罰金

2013年09月12日 05時32分22秒 | エッセイ
 先日、娘が修学旅行でシンガポールに行ってきた。4泊5日で、マーライオン公園を観光したり、ユニバーサル・スタジオ・シンガポールで遊んだり、ナイトサファリを見たりと、盛りだくさんだったらしい。



 マーライオンは、正面から撮らないほうがいいかも……。



 旅行前に保護者会があったのだが、そこでは「シンガポールの罰金について」、細かく説明を受けた。
「地下鉄で飲食したらS$500の罰金です。1シンガポールドルは約80円なので、4万円相当です」
「ええー」
 保護者がどよめく。
「トイレ使用後水を流さないとS$1000(8万円)、ゴミのポイ捨てもS$1000、非常ベルを間違って押したらS$5000(40万円)、お猿さんに食べ物を与えたらS$10000(80万円)です」
「ひっ」
 と悲鳴をあげつつ、誰もが「なぜ猿?」という顔をしている。
「公共物などに落書きしたら、ムチ打ちの刑に加えて収監されます」
「ひええー」
 厳しい規則のせいで治安はいいようだが、高額の罰金は痛い。ムチ打ちはもっと痛い。
 少々不安になった。



 親の心配をよそに、予定通り娘が帰ってきた。
「ただいま、あっちは雨ばっかだったよ」
「罰金は?」
「大丈夫。なんか緩い感じだった。食べ歩きしている人もいたし」
 ん? 食べ歩きも禁止だったっけ? まあ、見つからなければ咎められないということだろうか。
「おみやげ買えた?」
「うん! ユニバーサル・スタジオで、キャラクターグッズが安かったの。エルモのぬいぐるみ、こんなに大きいのに、S$39.90で買えるんだよ! 信じられないよ」
 たしかに、こちらでは、3200円ぽっちで買えないだろう。友達と、目の色を変えて買いあさってきたようだ。



「お母さんに、ボールペン買ってきた」



「へー、可愛い! ありがと」
「でしょ」
 何の問題もなく、無事に終わってよかった。
 そう思ったのだが。
 翌朝。
「うーん、お腹が痛い……」
 娘が腹痛を訴え、夫が内科に連れて行った。
「ああ、旅行者下痢症です。東南アジアに行くと、かかることが多いんですよ。病原性大腸菌やウイルスが原因になります」
 なんと。
 警戒すべきは、罰金でなく、バイキンだったのかしらね。


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やる気の素

2013年09月08日 15時19分40秒 | エッセイ
 2学期が始まって、一週間たった。
 実は、今、かなり前向きになっている。

 よっしゃ~、仕事だ! やるぞやるぞやるぞ~!!

 理由はいたって単純。去年の11月から悩まされていた、ニキビダニが完治に近い状態になったからだ。(関連記事Dannyはこちらから、ニキビダニの治療法はこちらから)
 あのころは、顔が赤くなり、頬のあちこちにポチポチができて、鏡を見るのもイヤだった。しかし、10カ月経過した今、ようやく肌の凹凸がなくなり、赤みも引いて、ツルッとした餅肌が帰ってきたのだ。まだ、赤い発疹が2~3箇所は残っているものの、当時に比べたら雲泥の差である。
 気温が30度を超え、太陽が灼熱光線で攻めてきても、「空が青いっていいわね」と流せる余裕がある。



 振り返ってみれば、6月まではろくなことがなかった。母が入院したり、会議でボロ負けしたり、仲の良かった友人と疎遠になったり……。しかし、7月からは徐々に運が上向いてきたので、やる気になっている。これを、日常生活に生かさない手はない。
 手始めに、出勤時間を早めてみた。今までは、定刻の20分前に職場に到着していたのだが、思い切って40分前まで繰り上げる。
「おはようございます」
 早出したら、わずか20分違うだけで、仕事の効率が上がるということがわかった。お茶を飲みながら、提出物のチェックをし、一日の計画を立て、関係部署と打ち合わせができる。仕事が進んだ分、帰る時間が早まり、遅くまで残らずにすむ。

 そういえば、新人のときは、定刻の1時間前に出勤していたっけ……。

 出産を機に、保育園に合わせて出勤するようになり、定刻ギリギリに飛び込む習慣が身に着いた。保育園から卒業しても、悪癖だけが残っていたというわけだ。
「そんなの最初だけでしょ。まったく、口ばっかりなんだから」
 私の決意に、家族はそろってケチをつける。腹が立ち、ますます「やってやろうじゃないか!」という気になってきた。
 モチベーションの高いときは、何でもできる。床が汚れていれば、すぐに雑巾を持ってきてふき取り、通販で買いたいものがあれば、サッと電話をかけ、あと回しにしない好循環が作れるのだ。
 雑巾を洗いながら、鏡で何度も肌をチェックする。白い肌が戻ったことに満足し、消費したやる気が、再び満タンになる。「字もキレイにしたいから、ペン字の本を買おうかな」などと、調子に乗ったアイデアも浮かんできた。
 考えてみると、新たに得たものは何もない。
 失ったものを取り返しただけで、ものすごく得した気分になっているのだ。
 さらには、2020年オリンピック開催地に東京という朗報も耳に入り、気分の高揚に拍車をかける。
 まさに、単細胞のなせる業。
 このまま、2013年を突っ走るぞ~!



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気まずいコメント

2013年09月05日 19時53分39秒 | エッセイ
 夏休みが終わり、2学期が始まった。
「通知票を持ってきた人は出しなさ~い」
 1学期の終わりに渡した通知票は、親の印とひと言をもらって学校に提出することになっている。
「忘れました」
「じゃあ明日」
 9月5日になっても、全員分はなかなか揃わない。
 中には、親に見せないまま2学期を迎える生徒もいる。ほとんど親子で話をすることがないから、「通知票を見せなさい」とも言われないらしい。そんなことでいいはずがない。



 同僚は、ある女子生徒から、怪しい通知票を受け取った。
「先生、このコメント、パパが書いてくれたんだよ~」
「へー、お父さんが?」
 彼女から通知票を受け取り、中を開けてみると、子どものような字が見える。読んでみたら、目が点になった。
「予想以上に成績がよかったので安心しましたwww  これからもがんばってもらいたいです!」
 エクスクラメーションマークがひときわ大きく書かれているばかりか、wwwまで通知票に書く親がいるだろうか……。思わず、ポロリと言葉がこぼれ落ちた。
「これ、本当にお父さんが書いたの?」
「えっ、そうだよ~!」
「……ふーん」
 まさか、この子は通知票を見せていないのでは。
 だいいち、「パパが書いてくれた」と断るあたりがわざとらしい。自分で書いて、もしくは友達に書いてもらって、それを提出したのかもしれない。
 しかし、決めつけはよくないと考え直し、それ以上は言わなかった。言わずとも、背後には思いっきり「疑り」オーラが出ていたようだ。教室を出て、職員室に向かったところで、さきほどの女子に呼び止められた。
「先生、今パパに電話してるの。ちょっと待って」
「えっ、電話?」
「あ、パパ? 先生がね、本当に通知票にコメント書いたのかって聞きたがってるよ。はい、先生」
 いきなり彼女からスマホを渡され、同僚は動揺した。
「あ、あの、担任の○○です。どうも、は、はじめまして」
「いつもお世話になっております! アヤナの父親です。はじめまして」
「いえあの、その、通知票に、ずいぶんお若い文が書かれているなって思ったものですから」
「ははは、ボク、若いんです。まだ30代ですから」
「ああ、そうだったんですか。失礼しました」
「いえいえ」
「ははは。じゃあ、アヤナさんに代わりますね」
「はい、今後ともよろしくお願いします」
「ははは、こちらこそ」
「ははは」
 同僚は、ひきつった笑いを浮かべたまま、彼女にスマホを返した。

 同僚は私と同年代だ。今の親の世代とは、大きな隔たりがある。
 なにやら、自分がひどく年老いた気がしてきた……。


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ヴェルサイユは大変な人ですこと

2013年09月01日 17時41分35秒 | エッセイ
 フランスの2大世界遺産といえば、モン・サン・ミッシェルとヴェルサイユ宮殿である。(モン・サン・ミッシェルの記事はこちらから)
 パリから車で30分、豪華絢爛なヴェルサイユ宮殿に向かった。
「このトンネルで、ダイアナさんは事故死されました。ちょうど、13本目の柱に激突したんです」
 ガイドさんがマイクを手に説明する。事故の痕跡などどこにもなかったが、大破した車の映像を見たことはおぼえている。何日か前にロンドン観光で、ガイドさんから「ウィリアム王子は、ダイアナさんにロイヤルベイビーのジョージを見せたかったと語っていました」と聞いたばかりだ。死後もなお、ダイアナさんの人気は衰えない。
 駐車場は、すでにたくさんの観光バスやマイカーでいっぱいになっていた。団体は予約ができるので、まず中に入り、庭園から見てくださいと言われた。



 庭園は広い。ゴルフ場10個分の面積があるとか何とか……。



「じゃあ、予約団体の入口に向かいます。一般の人はこの暑い中、ずっと待っていなければなりませんから、大変ですよ」



 19年前の冬に来たときは、こんな行列はなかった。風が強く、傘が壊れそうになった記憶はある。ゆっくり観るなら、夏は避けたほうがいいのかもしれない。
「いいですか、みなさん。くれぐれもスリに気をつけてください。グループで固まって、他の人を中に入れないようにしましょう」
 ガイドさんのひと言に、グループの誰もが緊張する。華麗な宮殿の中で、団子状態になって移動するのもいい思い出だ。
「ヘラクレスの間です」



 人がすごくて、壁はほとんど見えない。必然的に、天井ばかりを撮影することになる。
「ヴィーナスの間です。天井に愛と美の女神が描かれています」



 ルイ14世の彫刻もあった。



 写真を撮ったらバッグを見て、異常がないかを確認して進む。
「ディアーヌの間です」



 ディアーヌとは、月と狩りの女神というから、一般的には「ダイアナ」か。ここにも、ダイアナさんが登場した。
 天井画の色彩が素晴らしい。



「マルスの間です」



「メルクリウスの間です」



 メルクリウスとは、水星と商業の神だから、「マーキュリー」のほうがわかりやすいだろう。
「アポロンの間です」
 アポロンこそ、ルイ14世が自己を投影した太陽と芸術の神である。
 ここには、ルイ16世の肖像画と



 ルイ14世の肖像画が向かい合わせに配置されている。



「鏡の回廊です。鏡は全部で357枚といわれています」



 華やか~☆



 ちなみに、オリジナルの鏡には銀を使っているため、曇って見えるそうだ。クリアな鏡はあとから入れ替えたもので、時代の重みがない。



「牛眼の間です。ここは来客の目に触れないので、天井画がありません。ルイ14世は実務家だったため、余計なところにはお金をかけなかったんです」



 なるほど!
「王の寝室に行きましょう」





「王は、寝ている間に緊急事態が起きても、すぐ対応できるように、隣に会議室を作りました」
 閣議の間。



 ちゃんとテーブルもある。



「王妃の寝室です」



 寝室には、マリー・アントワネットの母親マリア・テレジアと



 兄のヨーゼフの肖像画がある。



 それにしても、華やかなベッド……。



 オーストリアから嫁いだとき、市民から贈られた宝石箱を大事にしていたそうだ。



「貴族の間です。ここは、王妃の謁見の間として利用されました」



「大膳式の間です。王と王妃が公式の食事をしました」
 使った食器が公開されている。



「衛兵の間です。マリー・アントワネットと子どもたちの肖像画があります」



「戴冠の間です。ここには『ナポレオン1世の戴冠式』が飾られています」



 絵の作者は、ジャック=ルイ・ダヴィットだが、この絵にはささやかな仕掛けがあるのだそうだ。
「ルーブルにも同じ絵があり、どちらも本人が描いています。ナポレオンの注文で、実際には出席しなかった母親が中央にいます。そして絵を描いた本人も、上段に描かれているんですよ」
 さらに、ルーブルと違っているのは、左から4人目の女性が、ピンクの衣装を身に着けているところだ。ルーブルの絵は、白になっている。



 裏話が聞けるのは面白い。宮殿内も見事な装飾であった。
だが、この混雑には閉口する。ようやく見学が終わり、バスに戻って安心した。
 マリー・アントワネットが、ルイ15世の寵姫デュ・バリー夫人にイヤイヤかけた言葉、「本日のベルサイユは大層な人出ですこと」という名言があるそうだ。
 この先も、ずっと使えそうな気がするのだが。


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