これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

ひと月遅れの結婚記念日

2009年04月30日 18時01分33秒 | エッセイ
 3月末の結婚記念日に娘が熱を出し、泣く泣くキャンセルした鉄板焼きの店に、先日、家族3人で行ってきた。
 場所は、池袋にある某ホテルの地下だ。以前にも行ったことがあり、この界隈ではランクが上の方だと思っていたのだが……。
「いらっしゃいませ、お待ちしておりました~」
 対応した女性を見て、ちょっと考えさせられた。年齢は私と同じか、やや上といったところなのだが、髪はパーマが取れかかって無造作に広がり、首にも耳にも装飾品はなく、化粧も雑だった。
 哀しいことに、中高年の女性が身なりに気を配らないと、やけにみすぼらしい印象を与え、お店のランクまで下がるような気がする。接客業なのだから、もっとおしゃれをするべきだと感じた。

 でも、私だって、そう見えるのかもしれない……。

 一応、私もサービス業である。40代に突入した身としては、決して他人事ではない。彼女を反面教師として、美しい歳の重ね方を学習していく必要があるだろう。
「アラフォー世代は、アイメイクが大事なの。ちゃんとマスカラつけなさいよ」
 以前、姉に言われた言葉が蘇ってきた。

 前菜のカルパッチョは新鮮だったし、伊勢海老に牛ヒレステーキも満足のいく味だった。
 ガーリックライスを炒めはじめたところで、夫が席を立ち、私に言った。
「はい、ママ。プレゼント」
 夫から、小さな青い手提げ袋を受け取った。
「あ、ありがとう……」
 反射的にお礼を言ったが、あまりにも意外すぎて、あとの言葉が続かなかった。
これ以上のサプライズはないだろう、というのが率直な感想だ。何しろ、結婚して以来、結婚記念日はおろか、誕生日やクリスマスにもプレゼントをもらったおぼえはないし、娘へのホワイトデーのお返しすら用意しない夫である。一体何が起きたのか、不思議で仕方なかった。
 まあ、動機はともかく、自分のことを想ってくれる気持ちはうれしい。私は声を弾ませた。
「何が入っているのかな? 開けていい?」
「どうぞ。気に入るといいけど」
 中に入っていたのはネックレスだった。18金でできたハートが2つ、鎖状につながって、下のハートにはパールが入っている。

 夫にしては、珍しくセンスのいいチョイスである。いつもは、「どこにつけていけばいいのよ!」とボヤきたくなる代物を買ってくるのだから上出来だ。思わず口元が緩んだ。
「わあ、可愛い! いいじゃない、すごく気に入ったよ」
 私の反応を見て、夫も安心したようだ。
「一通り見て回ったんだけど、どれがいいかわからなくて、最初に見たのに決めたんだ」
 ……そうか、下手に考えなかったからよかったのかもしれない。

 デザートのアイスクリームを食べ、私たちはお店を後にした。
「うわ、雨!!」
 地上に出たら、雨が降っていた。さきほども、空が暗いとは思っていたのだ。
私は心の中で、「変わったことをした人もいるしね」とつぶやき、折りたたみ傘を取り出した。

 実は、夫にもらったネックレスと、ちょっと似たものを持っている。
 銀色の、四つ葉のクローバーに、小さなパールがついているものだ。

 あらかじめ、もらえることがわかっていれば希望も伝えられたのだが、こればかりはどうしようもない。

 これは、なかったことにしておこう。

 夫の目に触れぬよう、私は四つ葉のクローバーのネックレスを、引き出しの奥深くに押し込んだ。

 さて、明日からは、ハートのネックレスとマスカラつけて、仕事に行くか……。



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みなさんのおかげです!

2009年04月26日 20時38分05秒 | エッセイ
 ブログを開設したのは、2008年4月26日のことである。
 つまり、今日でちょうど一周年を迎えたというわけだ。

 ピカピカのブログ1年生になり立ての頃は、全然写真を使わなかった。
「エッセイはね、画像に頼らず、文章で表現することが大切なのよ」
 私は、そんな発言をして強がっていたが、実のところ、単に写真の載せ方を知らないだけだった。マニュアルを見てもちんぷんかんぷんで、まったくわけがわからない。
 それなのに、「ブログ作ったんです。見てくださーい」などと図々しく知人に紹介していた。メールにURLを添付して、誰彼かまわず送りつけていたのだから、まったく怖いもの知らずだった。
 しかし、その結果、「ここは、もっとこうしたほうが……」と教えてくれる師匠をゲットした。この分野の専門知識を持つ人は、持たない人に惜しみなく教えてくれる傾向があるようだ。
 師匠からは、画像のアップはもちろんのこと、YAHOOやGoogleなどへの登録の仕方や、アクセスアップのための手法をあれこれ教わった。他人のブログへのコメント回りソフトもいただいたし、人気ブログランキングへの参加方法など、数えればキリがない。
 とりわけ、役に立ったのはVIXというソフトウェアだ。
 私が利用しているgooブログでは、1メガバイト以上の画像はアップロードできない。師匠にボヤいたら、このVIXをダウンロードして画像を縮小すればよいと教わった。
「大体、320×240でリサイズすればちょうどいいと思いますよ」
 以来、急激に写真を使うようになったというわけだ。
 こうして、私のブログは、お粗末レベルから人並みレベルにグレードアップした。

 作品にもよるが、私が一回の更新にかける時間は、約2~3時間である。テーマをしぼり、文章を考え、写真を準備すると、そのくらいは軽くかかってしまう。
 わが家には、WINDOWS98の骨董品パソコンがあるのだが、意外にこれが役に立つ。ネットにつながっていると、ついmixiで遊んでしまったり、ブログを読んだりして時間を浪費することが多いけれども、これはつながっていないから集中できる。
 今、記事数が123だから、一回の更新に2時間かけたとすると、延べ時間は246時間だ。実に10日以上もの時間をブログに注いでいる計算となる。
 飲みにも映画にも行かず、大好きな読書もせず、ときには睡眠時間を削ってまで、よく続いたものだと我ながら感心する。ちなみに、私はアフィリエイトをしていないので、金銭的な報酬もない。
 でも、何度も読みに来てくれる人がいて、アクセス数に反映されていれば、それだけで十分うれしいのだ。さらに、温かいコメントが入っていたりすると、報酬では得られないやり甲斐を感じる。
 加えて、自分自身の成長も実感できた。私は、早口の人や押しの強い人が苦手だったのだが、ブログを始めてからは、自分のペースで対等に話せるようになった。おそらく、言語能力がアップしたのだろう。相手の主張が、以前より迅速に理解できるし、それに対する返答を、的確な言葉をつかって表現できるようになった。
 決して無駄な時間ではないと思う。

 人気ブログランキングを見ていると、入れ替えの多さに驚くことがある。
 彗星の如くランクインするブログもあれば、いつの間にやら消えてしまったブログがあったりして、ブログの寿命を考えずにはいられない。
 たとえ、更新のペースが落ちても、読者がいてネタがあるかぎり、私は書き続けたい。

 お読みいただき、本当にありがとうございます。
 今後とも、ご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。



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朝食係の悩み

2009年04月23日 19時42分06秒 | エッセイ
 両親が住む那須の家に、一族といっては大げさだが、親族が全員集まるときがある。
 お正月やGWなどに、私と夫と娘、妹・義弟・姪・甥、そして姉と義兄がやって来て、11人もの人数となるのだ。
 困るのは食事の仕度である。夕食は妹や姉、義弟などが母を手伝ってくれるが、宴会が深夜にまで及ぶと、朝になっても誰も起きてこない。
 私は朝型なので、つい目が覚めてしまい、段取りの悪い母の朝食作りを手伝う羽目になる。
 まずはメニューの確認からだ。
「何を作るの?」
 母の答えは簡潔だった。
「ピザトーストよ」
 しかし、材料がおかしい。
「でも6枚切りと8枚切りの食パンしかないじゃない」
「4枚切りがなかったから、しょうがないでしょ。それでいいんだよ」
 ……まあ、あるもので間に合わせるしかないけれど……。
 ベーコンの上にピーマンを重ね、チーズを散らしていると、一人、二人と起きてくる。しかし、オーブントースターは一度に二枚のパンしか焼けない。焼き上がりを待つうちに、腹ペコ集団が続々と集まってきた。
「一枚じゃ足りない。もっと」
 しかも、夫をはじめとする男性陣は、おかわりまでする始末……。せめて厚切りならばよかったのだが。十回ほど繰り返し焼き続けると、さすがに疲れ果ててしまった。
 大人数の朝食に、ピザトーストは向かない。
 もう、母には任せるのはよそうと決心した。

 どうせ朝食を作ることになるのなら、自分のやりやすい方法で仕切るのが一番だ。
 次に全員が集まったとき、私は朝食用の食材を持参した。那須のスーパーは車で20分かかる上、品数が揃っているとは限らない。
「明日の朝食はドッグバイキングだからね」
 どっさり用意したドッグパンやロールパンに、各自で玉子、ハム、ソーセージ、キャベツ、コロッケ、ジャム、生クリームなどを挟み、好きなだけ食べてもらえばよい。
 カボチャのポタージュと、デザートのピンクグレープフルーツも用意しておけば、栄養バランスもバッチリだ。
 その夜、私はワインと完璧な朝食計画に酔って寝た。

 翌朝、七時頃起きると、母が気を利かせたつもりで余計なことをしていた。
「おはよう。カボチャは茹でておいたよ」
 そっそれは、コンソメスープで柔らかくするのに、何てことを!
 心なしか、水っぽいスープができ上がった。
 8時を過ぎると、ほとんどの者が起きてきた。でも、今日は待たせないから大丈夫、と私は胸を張って声をかけた。
「じゃあ、自分で好きなものをはさんで、セルフサービスで食べてちょうだい」
 が、夫は不満げな反応をした。
「まな板ない? パン切るのに必要だよ」
 まな板ぁ? んなもんなくたって、パンくらい切れるでしょうに……。
 しぶしぶ渡すと、夫はまな板にパンを横向きに置き、左手でしっかりと押さえながら、慎重に包丁を動かしはじめた。あまりのぎこちなさに、みんなの目が釘付けになった。
 義弟は姪と甥の具を選んでいるところだった。
「パパ、ぼくジャムがいいな」
「さっきから、そればっかりだろ」
 ジャムのパンばかりを食べたがる甥に、与えられたものを素直に平らげる姪。
「お父さん、ミキ、次はコロッケにする!」
 そして、全種類制覇しようとして、食べすぎの娘……。
「コーヒー飲みたい」
 私が準備に追われ、まだ何も食べていないのに、夫はすでに食後のコーヒータイムに突入している。
「食欲ない……」
 昨夜飲みすぎた姉と義兄は、パンにほとんど手をつけず、スープのみですませるらしい。

 くそっ、せっかく作ったのに。

 どうにか食事が軌道に乗り、やれやれとため息をついたときだ。義弟が、ニヤニヤと笑いながら話しかけてきた。
「さっき、お義父さんが、キャベツと生クリームを挟んで食べていたけど……」
「なに、その組み合わせ~!!」
 父以外のみんなが笑い転げた。

 バイキングにすると、好きなものばかりを食べたり、人気のない具材が余ったりして、これまたよろしくないことがわかった。
 さて、今年のGWは、どんな朝食にしようかな……。



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栃木は美味しい

2009年04月19日 20時34分11秒 | エッセイ
 両親が、住み慣れたさいたま市から那須塩原市に引っ越して、はや2年となる。
 以来、年に数回は、泊まりがけで遊びに行くようになった。

 観光地とは逆の、さびれた場所である。舗装されていない砂利道には、背の高い雑草が路肩に生え、雑木林も広がっている。歩行者や自転車はおろか、車さえもめったに通らない。
 だが、隠居するにはもってこいの静けさだ。
 母が、1キロほど離れた場所に小さく見える民家を指さし、言った。
「ほら、あれがお隣さんよ」
 回覧板を回すにも、車で届けるのだという。新聞の配達はあるが、ゴミの回収はない。車を20分ほど走らせて、直接、ゴミ処理場に持ち込む仕組みになっているらしい。
 不便きわまりないが、田舎での暮らしは、隣家の生活音まで筒抜けの都会生活では味わえない開放感がある。子供たちがけたたましい笑い声をあげて、ドタドタと走り回っても近所迷惑にならないし、楽器の演奏だって、カラオケだってやり放題だ。

 この春休みにも、夫と娘と3人で泊まりに行った。東北自動車道に乗り、途中の佐野SAで休憩したとき、目を惹く弁当があったので買ってみた。
 その名も『日光百物揃千人武者行列~栃木の美味しい名物が行列を作ってやってきた~』である。

 日光の伝統行事から名づけられたこの弁当には、霧降高原豚の辛みそ焼・地元産の雛鶏のカツ・日光ゆばの煮物・栃木のゴボウとかんぴょうの煮物・鹿沼こんにゃくの煮物・日光強めし・桜ごはん・プチトマト・お漬け物・柏屋特製「小福もち」といった、県自慢の逸品がおさめられている。

 宇都宮の餃子は、残念ながら入っていない。仕方ないので、帰りのお土産にすることにした。
 800円という値段の割には、満足のいくお弁当だったので、東北道に乗った際にはぜひお勧めしたい。

 両親は、家庭菜園を作り、茄子やきゅうり、小松菜、カボチャ、トマトなどの野菜を育てて暮らしている。しかし、所詮はアマチュアの道楽といったレベルだ。近所の、といっても何キロも離れているのだが、親しい農家の方に、あれこれアドバイスをもらって勉強中である。
「小松菜、持っていく?」
 母に聞かれて、もらうことにした。東京で買うより、味が濃くて美味しいような気がする。
 じゃがいも、長ネギ、山芋などをもらったこともある。
「ウチのだけじゃないんだよ、近所からももらうから、とても食べきれないの」
 何と、両親が育てているものと同じ野菜を、プロからおすそ分けされることがあるのだという。
「しかも、ウチでできたのより、ずっと立派でね……。悔しいけど……」
 母のふくれっ面に、私は失笑した。相手に悪気がないとはいえ、実力の差を思い知らされて落ち込んだようだ。
「ははは、しょうがないよ、キャリアが違うもん。じゃあ、ありがたく頂きましょ」

 栃木の人は温かく、食べ物は美味しい。
 私も退職したら、栃木に住もうかな……。



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酔えない幹事

2009年04月16日 21時12分17秒 | エッセイ
 今年度は、同僚4人と職場の親睦会を担当することになった。
 先週、初仕事として、新任者の歓迎会を企画した。若手のゆき子ちゃんが、チラシ片手に職場近くの居酒屋を吟味し、予約してくれた。
 次に、職員50名の出欠をとる。こちらでは、職員名簿を回し、○か×をつけて幹事に戻す仕組みとなっている。
「笹木さん、○でいいですか?」
「うん、大丈夫。行かれるよ」
 ゆき子ちゃんが、先に幹事の出欠だけを入れておいた。出席者の少ない飲み会は「つまらない」と敬遠されそうだから、幹事だけでも○にしておかないと人が集まらないだろう。
 彼女はさらに、近くにいた先生にも声をかけた。
「山田さんは大丈夫ですか?」
「あ、オレ、その日は予定があって行けないんだよね~」
 それを聞いた瞬間、私は悪いことを思いついた。
「ねえ、山田さん、来なくていいから○にしておいてよ。×が多いと何だから」
「ああ、サクラか。……まあ、別にいいけど」
 山田氏は、スッキリしない表情で部屋を出て行った。
 ゆき子ちゃんが、今度は別の先生に尋ねた。
「木村さんはどうされますか?」
「う~ん、僕もちょっとね……」
 すかさず、私が割り込んだ。
「じゃあ、それも○ってことで!」
 サクラばかりになっても仕方がないので、それくらいにして、他の先生に回すことにした。

 数日後、全職員の出欠が記入された名簿が戻ってきた。
「ちょっと、何これ~!!」
 私もゆき子ちゃんも、年配の幹事長も仰天した。名簿の記号は×のオンパレードだったのだ。たまに○の人がいる程度で、まるでコピーしたように、きれいに×が並んでいた。
 なぜか、△もある。私は思わず首をひねった。
「この△っていうのは何なのよ」
「わからないという意味だそうです」
 うーん、これだから教員は……。新しい記号を増やされても困るんだけどなあ。
 結局、参加人数はたったの13人しかいなかった。
 とりわけ許せない欠席は、昨年の幹事である。たしか、去年も人数が少なかったから、幹事が必死になって私に、こう頼み込んできたのだ。
「新しい先生の歓迎会なのに、人数が少ないと体裁が悪いから、何とか都合つかない?」
 彼女を気の毒に思い、無理して参加したのに、幹事ではなくなったとたんに知らん顔とは……。
 ひとこと言ってやりたい気持ちもあったが、新任者自体が9人中3人しか出席になっていない。

 ダメだ、こりゃ……。

 もうお手上げである。かくなるうえは、いる人間で楽しくやるしかない。

 その日の歓迎会は6時からだった。しかし、定刻には、幹事を含めてわずか7人しか集まっていなかった。手分けして残りの6人に連絡を取ったが、不在だったり留守電だったりで、なかなかつかまらない。
「いいですよ、もう始めましょう!」
 気の短い幹事長がゴーサインを出し、宴会がスタートした。私は赤ワインのデキャンタをキープし、枝豆とシーザーサラダに手を伸ばした。枝豆の量が多めだ。
 えびせん&ポテトフライが運ばれてきた。ちょっと油が気になるけれども、えびせんはパリパリしていて美味しかった。続いて刺身盛り合わせが並べられたのはよいが、しょうゆがなくてすぐには食べられなかった。
「来ませんね~」
 ゆき子ちゃんが心配そうに空席に目をやった。宴会開始からすでに1時間がたっている。
 幹事長も、渋い表情でゆき子ちゃんに確認した。
「場所と時間の連絡はしたんだよね?」
「はい、直接手渡しした人もいますし、席を外していた人には机上に置いておきました」
 が、空席に並べられた料理が増えていくばかりである。
 炭火焼盛り合わせ、鶏とネギのピリ辛揚げは、ワインによく合っていた。これでチーズがあれば最高なのだが……。
「もう待てない。テンジャンチゲに火をつけよう」
 残り時間40分というところで、私たちはカセットコンロを点火した。ちょっと辛いけど、これが一番の楽しみなのだ。ハフハフ食べていたら、ようやく2人がやって来た。
「遅くなってスミマセ~ン」
 これで9人。あと4人はどうなっているのだろう?
「もう、職員室には残っていませんでしたよ。帰ったんじゃないですか」
 衝撃的な知らせに、幹事3人は顔を見合わせた。

 信じられない!!!

 ショックで呆然としたが、明太マヨポテトピザと雑炊うどんは、しっかりお腹に収めた。
 どのお料理も美味しかったのが、せめてもの救いだ。
 案の定、4人は来ず仕舞いのまま、宴会はお開きとなった。たった9人の歓迎会とは、新記録、いや珍記録間違いなしだろう。

 デキャンタは空になったが、全然酔えない歓迎会だった。



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最強の母娘

2009年04月12日 20時42分49秒 | エッセイ
 いよいよ、週明けから本格的に授業が始まる。
 今年は担任をしていないので、初対面の生徒が多く、ちょっと気合いが入る。

 そうだ、美容院に行こう!

 2カ月放置していた髪を切り、春らしくゆるいパーマをかけて、ふんわりとした髪型にしてみたい。
 パーマをかけるのは6年ぶりだ。私の髪は、かかりにくくて落ちやすい。人より時間がかかるわりには、ひと月ほどでウエーブが取れてしまうから、パーマ向きではない。
 担当の美容師さんはいつも同じ男性を指名している。デーモン小暮が化粧を落としたらこんな感じになるのでは、という外見の彼だが、腕は確かで、いつも私を満足させてくれる。
「今日は久しぶりに、ふわっとした感じの、ゆるいパーマをかけて欲しいんだけど……」
「じゃあ、あまり切らないほうがいいね。この長さで、ウエーブだけ入れましょう」
 あえて、細部の指示はしない。私があれこれ口出しするよりも、彼に任せたほうが、似合う髪形になるからだ。
 買ったばかりの本を読み、カットもパーマもお任せで、ろくに鏡を見なかった。
 シャンプー台でパーマ液を流し、最後にドライヤーでブローし始めたとき、鏡に映った自分の髪が、イメージと違っていることに気づいた。
「……あれ? ソバージュになってる?」
 驚いて私が言うと、彼はもっとビックリしたようだった。
「え? ウエーブつけるんでしょ?」
「いや、ストレートに近い感じで、フワッとゆるめのパーマって言ったつもりだったんだけど……」
 デーモン氏と私は、鏡の中で目を合わせた。
 二人の間を、ピューッと風が通り抜けたような気がした……。
 どうやら、説明不足だったらしい。
「うーん、真っ直ぐにしたければ伸ばしますよ。どっちでも大丈夫です」
「じゃあ、伸ばしてください」
 彼はブラシを交換し、ソバージュになった私の髪をストレートに戻した。

 うん、そうそう。こんな感じ!

 すっかり軽くなった髪型で帰宅すると、家族から「いいね~」とほめられ、私は鼻高々だった。
 しかし、夜、髪を洗ったが最後、どんなに一生懸命ブローしても、真っ直ぐな髪にならない……。こっそりパーマをかけた生徒が、頭髪検査前に必死で伸ばしたかのような、バリバリの髪になってしまった。

 えええーっ、どうしようー!!

 これなら、まだソバージュのほうがマシだ。不本意ながら再び髪を濡らし、教員には似つかわしくないグリグリの頭で寝た。
 翌朝、娘のミキに大笑いされた。
「なに、お母さんの髪型、爆発してるじゃん!! 昨日と全然違う~」
 ゲラゲラと笑い転げる娘を見て、私はすっかりしょげてしまった。
 落ち込む私に、さらに追い討ちがかかる。
「お母さん、これでミキの気持ちがわかったでしょっ!!」
 ミキはかなりのクセ毛で、メデュウサのような髪をしている。



 野放しにしておくわけにいかず、常にゆわかなければならない。一度、「ミキの髪はモジャモジャで困るね」と言ったことがあり、ずっと根に持っていたようだ。
 ミキの笑い声を背景に、私はひたすら鏡を凝視していた。

 うーん、何かに似てるよ、これ……。

 鏡に写る自分は、決してファッショナブルではない。エレガントでもない。でも、過去にインプットされた何かに似ているのだ。はてさて、何だろう?
 
 わかった、ルイ14世だ……。

 

 相手は偉大なる太陽王とはいえ、かなり微妙だ。とても授業をする気にはなれない。
 ああ、明日は休もうかしら……。

 それにしても、母はルイ14世、娘はメデュウサなんて、すごくない?



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お花見ランチ

2009年04月09日 20時07分29秒 | エッセイ
 先日、娘のミキが中学校に入学した。
 新入生は240名もいて、高校並みである。どこもかしこも人だらけで驚いた。
「新入生が入場します。拍手でお迎えください」
 司会の言葉に、パチパチパチという大きな拍手が起こった。

 ふと思い出したことがある。
 前の職場では、入学式の担当者がイスの数を確認せず、新入生の座席が足りなかったという珍事があった。
 職員や来賓・保護者の注目を浴びて、緊張しながら入場した新入生である。いざ座ろうとしたら、「あっ、席がないっ」ではあんまりだ。たまたま近くに座っていた保護者が、気を利かせて、サッと自分のイスを譲ってくれた。私たち職員は、急いで別のイスを用意し、一件落着となったのだが……。
 滅多にあることではないし、あってはならない。

 ミキの入学式では、そんなトラブルもなく、小一時間ほどで終了した。
 PTAの委員決めに、記念撮影を終えて、ようやく帰宅したら12時を回っていた。
 その日は風もなく、ポカポカとした陽気が心地よかった。せっかく休暇を取ったのだからと、お花見ランチをすることにした。
 わが家には桜の木がある。毎年、入学式の時期には花びらが散ってしまうのだが、今年はたわわに実った葡萄のように、花びらが密集して咲いていた。

「ちょうど満開だね」
 夫がレジャーシートを引きながら言った。桜の下で食べるランチは、「なだ万」で調達したお弁当である。
 私が選んだのは、カロリーが低そうな「ふきよせ寿司 華」だ。


 ミキは「幕の内弁当 葵」を選んだ。


 夫は「春彩菜弁当」にした。

 さすがは「なだ万」、一年に一度、春のイベントに賭ける期待を裏切らない。美しくて美味しいお弁当だった。
 特に気に入ったのが、花びら型に切ったゆり根である。ニンジンと合わせて、花見ムードが盛り上がった。

 ホタルイカの目玉が硬かったので、食べずにフタに載せておいたら、黒アリがやってきた。
「あ、アリだ。目玉を運ぶかなぁ?」
 ミキは自分の弁当をストップして、じっとアリを見つめていた。
 アリは右へ左へと回り道しながら、ようやく目玉にたどり着いた。頭と前足をつけて、何やら思案している。
「一匹じゃ、重くて持って行けないでしょ」
 私が言うと、アリは目玉から体を離し、フラフラとどこかへ歩いていった。
 ミキが弾んだ声をあげた。
「きっと、仲間を呼びに行ったんだよ!」
「でもさ、仲間が来る頃には片づけちゃうから、目玉はないね」
「あはは、そうか~」
 ミキが弁当の残りを平らげたので、私たちはゴミを持って室内に引き上げた。

 果たして、あのアリは、仲間を引き連れて戻ってきたのだろうか。
「さあさあ、こちらでございます」
 などと働きアリの大群を先導してはみたものの、たどり着いたときにはすでに、「あっ、エサがないっ」では立場がないだろうな。
「嘘つき!!」と罵られたりして……。



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うどんの姫君

2009年04月05日 21時00分43秒 | エッセイ
 先週、17回目の結婚記念日を迎えた。
「お母さんとお父さんは何婚式になるの?」
 娘のミキが聞いてきたが、全然わからなかったので調べてみた。
 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によると、以下のとおりとなる。

 1周年:紙婚式
 2周年:藁婚式、綿婚式
 3周年:革婚式
 4周年:花婚式、絹婚式、皮婚式(皮革婚式)、書籍婚式
 5周年:木婚式
 6周年:鉄婚式
 7周年:銅婚式
 8周年:青銅婚式、ゴム婚式、電気器具婚式
 9周年:陶器婚式
 10周年:アルミ婚式、錫婚式
 11周年:鋼鉄婚式
 12周年:亜麻婚式
 13周年:レース婚式
 14周年:象牙婚式
 15周年:水晶婚式
 20周年:磁器婚式、陶器婚式
 25周年:銀婚式
 30周年:真珠婚式
 35周年:珊瑚婚式
 40周年:ルビー婚式
 45周年:サファイア婚式
 50周年:金婚式
 55周年:エメラルド婚式
 60周年:ダイヤモンド婚式
 75周年:プラチナ婚式

「17年は半端だから、名前がついていないみたいだよ」
「なーんだ、つまらない」
「お祝いに鉄板焼きを食べに行こうね」
「うん、ミキ、鉄板焼き大好き!」
 結婚記念日の翌日は休暇を取って富士急ハイランドに行き、一泊するという小旅行も計画した。
 しかし……。
 結婚記念日の前日、ミキは2年ぶりくらいに熱を出した。37.7度もある。
「風邪ですね。左の扁桃腺が腫れています」
 医師から薬をもらい、氷枕を作って寝かせた。でも、食欲はありそうだ。
「何か食べたいものある?」
「うどん」
 私が聞くと、ミキは迷わず答えた。この子は小さなときからうどんが好きで、体調不良のときなどは特に、うどんばかりを食べたがる。太くて食べ応えのある讃岐よりも、細くてやわらかい麺を好むようだ。
 保育園に通っていたときは、ケーキ屋さんのショーケースに並んでいるモンブランを見て、「何で、うどんがこんなところに……」と名言、いや、迷言を吐いたことがある。
 
 翌日も熱は下がらず、泣く泣く鉄板焼きをキャンセルした。
「元気になったら、また行けばいいよ。何食べる?」
「うど~ん」
 乾麺300gが瞬く間になくなった。あわてて夫をおつかいに行かせ、麺とつゆを補充する。体温は37.3度。このまま下がるような感じがした。
 多分大丈夫だろうと高をくくり、その夜は翌日の宿泊の準備をして寝かせたのだが……。
 ミキがトイレに起きてきて、青白い顔で私を呼んだ。
「お母さん、今、吐いちゃった……」
 時間は22時になろうかという頃だ。もう旅行どころではない。落ち着くまで背中をさすり、急いでホテルに電話を入れた。何度も宿泊しているホテルなので、融通が利き、キャンセル料はかからなかった。
 夜が明けると、また小児科を受診した。熱は37.8度。
「今度は右の扁桃腺が腫れていますね。吐き気があるなら、胃の薬も出しておきましょう。食欲はあるかい?」
 医師の問いかけに、ミキは元気よく答えた。
「はい、うどんなら食べられます!」

 そんなこんなで、かけうどん、ざるうどんを交互に作ってばかりの3日間になってしまった。
 わが家の17周年の結婚記念日は「うどん婚式」だろうなぁ。



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パソコンの性別

2009年04月02日 20時07分04秒 | エッセイ
 ときどき、インターネットが不調になる。
 友人の日記に7行くらいのコメントを入れ、確認画面に進むはずが……。数十秒の沈黙のあとは、「このページはInternet Explorerでは表示できません」のメッセージに切り替わってしまった。

 ああっ、私のコメントがぁ~!!

 泣く泣くページを閉じ、夫を呼んだ。
「ねえ、インターネットができなくなっちゃった!」
「え? オレもさっきやったけど、何ともなかったよ」
 夫は怪訝な顔をしてアイコンをダブルクリックした。
 すると、何事もなかったかのように、YAHOO JAPANがバーンと飛び出した。
「ほら、大丈夫だろ」
 彼は勝ち誇ったような顔で胸を張った。
「え~、さっきは本当にできなかったのに……」
 不可解だが、つながったのなら使うまで。だが、反応がとても遅い。イヤな感じだなと思っていたら、10分後にはまたさっきの画面が出てしまった。
「ねえ、やっぱりダメだよ。清水さん呼んで」
 清水さんというのはフリーのエンジニアで、パソコンのトラブルを格安で解決してくれる、とてもありがたい人である。
 わが家では、昨年11月にパソコンがクラッシュしたとき、彼に直してもらったことがある。詳細については、『スカートの中』をご参照いただきたい。
「わかった、明日電話してみるよ」

 翌日の午後、清水さんはやってきた。
「じゃあ、早速拝見しましょう」
 彼が操作すると……あーら不思議、何事もなかったかのように、インターネットにつながった。
 私のときは拒否されてばかりなのに、夫や清水さんだと上手くいく。まるで、男性ばかりにいい顔をする女性のようだ。私は嫌悪感で胸がいっぱいになった。

 この男好きめ!!

 おや、「おめーもだよっ」と反論されたような……。

 それからしばらくは、私が操作してもどうにか動いてくれたので、ネットの不調を忘れかけていた。
 しかし、先日、ブログを更新しようとしたら、また「このページは表示できません」のメッセージが出て、ネットにつながらなくなってしまった!
 私にとって、日曜・木曜のブログ更新はとても重要だから、飲み会や食事会にも行かないくらい気合いを入れているというのに……。
 
 キャーッ、どうしよう!!

 すっかり取り乱し、パソコンを再起動して何度もトライしたのだが、やはりつながらない。悔しかったけれども、諦めてシャットダウンした。
 少し間をおき、ご機嫌が麗しくなってから、再度挑戦するしかない……。
 わが家は無線LANを使っている。30分ほど経ってから、今度は場所を変えてやってみることにした。あまり拒否されたことのないキッチンがよさそうだ。
 
 あ、つながった~!

 キッチンが落ち着くとは、まるで主婦……。冷や汗ものだったが、なんとかブログを更新することができ、ホッとした。こんな思いはもうイヤだ。
「多分、それはメモリ不足ですよ」
 職場の同僚に愚痴ったら、そんな答えが返ってきた。大容量のメモリに交換すれば、劇的に安定するらしい。試すだけの価値はありそうだ。

 よし、今度は従順な20代男性型、熟女好みのメモリをゲットして、グレードアップするぞ~!!
 ヤ○ダ電機で売っているかしら?



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コメント (16)
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