しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「悪魔の涙」 ジェフリー・ディーヴァー 

2008年05月07日 | 読書
「悪魔の涙」 ジェフリー・ディーヴァー    文春文庫
  THE DEVIL´S TEARDROP   土屋晃・訳

世紀末の大晦日の午前9時、ワシントンの地下鉄駅で乱射事件が発生。
間もなくワシントン市長に手書きの脅迫状が届く。
「ケネディ市長―
終りは夜だ。解き放たれた<ディガー>は止められない。やつは殺しをくりかえす
―四時と8時と真夜中に。あなたが金を出さない限り。
こちらが要求するのは現金で$二千万ドル」
そして、市庁舎の近くで轢き逃げ事故があり、死亡した白人男性の指紋と脅迫状に残された指紋が一致する。
脅迫状にあった通りに現金を用意するが、取りに現れる者はいなかった。
<ディガー>による銃撃は繰り返されるのか、次の時間が迫っていた。
<ディガー>を見つける手掛かりは手書きの脅迫状しかなかった。
捜査にあたるFBIのマーガレット・ルーカス支局長代理と特別捜査官ハロルド・ケイジは、この国1番の文書検査士で、元FBIのパーカー・キンケイドに協力を要請する。



リンカーン・ライムシリーズにも電話で登場するハロルド・キンケイド。
そのキンケイドが主役で、今度は電話でライムとトムとサックスは登場する。少しだけれど。
何となくイメージしていたキンケイドとは違った人物だった。
何となくライムの仲間という事で、ひとつのことにこだわるちょっと偏った人物を想像していた。

主役になったキンケイドは父親としての役割が大きく興味深い人間だった。
事件を追う他に、キンケイドと2人の子ども9歳のロビーと8歳のステファニーの関係がとてもいい。
父親として、精一杯誠実に子どもに接する姿は色々と参考になる。

事件の方は<ディガー>探しの1本道で、そして解決したと思ったらそこからディーヴァーの本領発揮。
最後まで何が起こるか分からない、ドンデン返しが待ち構えていた。
それも、かなり壮絶なことが次々とあり、本当に最後まで気が抜けない。
しかし、<ディガー>はSFなどでもある、指令を受け止められなくなってしまった殺人ロボットのようなのだが、
そんな<ディガー>にも何となく同情を感じるものがある。

いつも登場人物が魅力的だと思う、ディーヴァーだが、今回面白かったのはハロルド・ケイジ。
「奇跡を起こす男、ハロルド・ケイジ」と言われているらしく、この物語でも奇跡を起こす。
それは、犯人逮捕にはあまり関係がなく、キンケイドを助けるために起こした奇跡なので、詳しくは語られずまさに奇跡。
その奇跡の過程も知りたいが、それは書かれていないのが、ちょっと残念。

タイトルの「悪魔の涙 THE DEVIL´S TEARDROP」は脅迫状のiの点が特徴あるものだったから。
尻尾が真っ直ぐに上に伸び、水滴のような形を作っていて、パーカーはこの特異な点を“悪魔の涙”と命名していた。

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