「グレイラットの殺人」 M・W・クレイヴン ハヤカワ・ミステリ文庫
DEAD GROUND 東野さやか・訳
ショーン・コネリーやジョージ・レーゼンビー、ティモシー・ダルトン、ダニエル・クレイグ、歴代のジェームズ・ボンドのお面を被った6人の男が銀行の貸金庫を襲う。
銀行の監視カメラは60分遅れで映像を流すように設定してあった。
ショーン・コネリーが指示した番号の金庫をピアース・ブロスナンが開けるがそれは空っぽだった。
ショーン・コネリーの面の男は銃を出し、ティモシー・ダルトンの面のお男の頭部を撃ち抜く。
そして空の金庫のふちにラットの置物を置いて引き上げていく。
3年後、カンブリア州で首脳会議が開催されることになり、その会期が迫るなか、ポーはMI5からある殺人の捜査を依頼される。
ポーを推薦したのは、『キュレーターの殺人』で知り合った、FBI特別捜査官メロディ・リーだった。
メロディは首脳会議の安全を確かめる事前調査でイギリスに来ていた。
“政治に忖度せず、誰かを怒らせることをいとわずに捜査出来る人物”として。
殺されたのは、要人をヘリコプターで運ぶ会社の社長兼操縦士のクリストファー・ピーアマン。
殺されたのは、無人だったはずの売春宿で、激しく暴行されていた。
MI5のアラスター・ロックは、なにか警備の機密が漏洩していないか心配していた。
やがて、発見時に撮った写真から暖炉の上から置物がひとつ紛失しているのが分かる。
捜査の上、見つかった置物は3年前に強盗にあった銀行に置かれたラットと同じ物だと判明する。
今回も始めの事件から始まり、銀行強盗の事件や、過去のことへと物語が広がって行く。
事件を調べるとそれぞれの組織の内情や、明るみに出したくない事への配慮など、色々な要素が絡まり、なかなか真相に辿り着けない。
クリストファー・ピーアマンがアフガニスタン戦争の英雄だったことも分かり、戦争のことも係わりがあるのではと、また話が広がる。
その中にポーの住宅の話があったり、色々と盛りだくさん。
けれど、道に迷う事なく物語には付いて行けた。
今回も捜査はポーとティリーのコンビで進む。
自分もWebやSNS、コンピューターのことは、ポーと同じ位の知識だと思うので、ティリーの話は良く分からないけれど、ポーと一緒だから問題ない。
なんだかとっても怖い世界だと思いつつ、どうしようもないのか。
しかし1番怖いのは人間の欲なのだ。
復讐物語で、今回の犯人はそれなりの事をしてしまった、と思う。
そして1番それに相応しい人が復讐者かも知れない。
しかし巻き込まれて被害を受けた人がいると思うと、やはり自分で決着をつける物ではないのかも知れない。
ポーも見逃して、それなりの被害者の救済をしようとしたのだが。
ただ被害は表面に現れているだけではないだろう。
やはり自分で裁いてはならない気がする。
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