しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「過ぎ去りし王国の城」 宮部みゆき 

2017年01月26日 | 読書
「過ぎ去りし王国の城」宮部みゆき   角川書店    

中学3年の尾垣真は、銀行のロビーにある展示パネルで1枚の絵に目を止める。
それは、幼い子供たちがカラフルに描いた絵の下にぶら下がるように貼られた、お城のデッサンだった。
大人が描いたと思われる場違いなその絵に、真は引き付けられる。
銀行の用事が終わり、再びパネルに目を向けるとその絵は下に落ち、通り過ぎた人に踏まれてしまう。
真は思わず、拾い上げポケットに入れて持って帰って来てしまう。
くしゃくしゃになり、足跡の付いた古城の絵を見つめると、風の音が聞こえた気がする。
そして、森の匂いも感じられる。
真は絵の中に別の世界があると確信する。
そして、絵の中に入る方法を考え始める。









宮部さんの物語はすぐにその世界に入って行ける。
ただ、それがどんな世界なのかは、進んで行かないと分からない。
今回はダークファンタジー。
異質の世界ではどうしても負のエネルギーが働く。
絵の中に入り込む、閉じ込められる、エネルギーを吸い取られる。
絵の世界と現実の世界の行き来も、違和感なく丁寧に描かれている。
しかし、絵の世界の冒険が始まってからが足早な感じ。
現実世界での謎解きの部分も面白かったが、その分絵の中の世界での広がりあまりなかった。
深い話なのに、あっさり終わった印象。

現実の問題は、イジメとネグレスト。
だから、物語は決して明るくない。
それでも、城田珠美は凛としている。
イジメに対するには、こういう姿でいればいいという感じもある。
ただ、あくまでも城田は強い。
それはそれでいいのだが、もう少しいじめる側に何かペナルティや良くない事が起こって欲しかった。
現実はそう上手い事行かないのかも知れないが。
物語の中だからこそ、いじめをしたら報いを受けるような事があってもいいのかなか、と。

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