2007.12.20(木)~12.30(日) 銀河劇場
原作/手塚治虫 脚本・演出/倉田淳
<ストーリー>
1936年、ベルリンオリンピックの取材でロンドンへと渡った峠草平は、留学中の弟を何者かに殺される。
やがて真相は、彼がヒットラーに関する重大な秘密を知ったことによる口封じのためであり、さらにその秘密の書かれた文書が日本に向けて送られたことを知る。
一方、神戸ではドイツ領事館のカウフマンも本国からの指令を受け、文書の行方を追っていた。
熱心なナチス党員の彼は、一人息子のアドルフを国粋主義者として育てようとするが、アドルフは強く反発する。
同じ名を持つ無二の親友アドルフ・カミルが、ナチスの忌み嫌うユダヤ人であったから。
差別が厳しい日本で懸命に生きる2人。
いつしか惹かれあい、かばい合い、揺るぎない友情で結ばれていく。
しかし、時はヒットラーという独裁者が支配する暗黒の時代。
運命は2人の少年の澄んだ友情を残酷にも引き裂いていく―
※チラシより※
<感想>
手塚治虫さんも原作は単行本で5冊。
その長さを3時間にまとめると、やはりテンポが速く、なかなか登場人物に感情移入が出来ないまま過ぎてしまうところもある。
しかし原作を読んでいるので、勝手に補っているのだが。
まったく知らないで観た人はどうなのだろう、と毎回同じようなことを思う。
手塚さんの漫画は時代背景も丁寧に描かれているので、その時代知らない世代でもよく分かるが、舞台ではさすがにそこまでは無理。
台詞の中に「アカ」「特高」などの言葉は出てくるが、きっとよく分からない人もいるだろう。
是非原作も読んで欲しいと思う。
でも、さすがに倉田さん。とてもよくまとまっていると思う。
そして、言わずもがなだが、原作のストーリーもいいので、飽きさせない盛り上がりのある作品になったと思う。
というか、手塚ファンとして身内の作品を観ているようなので。
最初と最後が同じ場面になりが、その時にアドルフ・カウフマンがいう「俺の人生はなんだったのだろう。正義をいう言葉を追いかけて、何もかも失ってしまった」というのがテーマなのだと思う。
戦うことの虚しさを充分伝えてくれる作品だった。
アドルフ・カミルの方がカットされてしまったが、カミルをメインにしたら、また少し違ったものになった気がする。
同じ、戦争・ナチスが舞台の「パサジェルカ」は個人への思いが強かったが、「アドルフに告ぐ」は社会の中で翻弄される人間を可哀想に思えた。
Wキャストは主人公の2人だけで、あとはシングル。
そして、124人の登場人物を29人で演じるということで、1人7役の人もいる。
男女の違いや、かなり雰囲気の違う時はいいが、顔がしっかり分かり、同じ成人男子だったりすると、“あれっさっきは”と気になる時もあった。
まだ劇団員がいるのだからなるべく沢山の役者で、というのは難しいのか。
舞台裏は大人数で着替えも多くて大騒ぎだろう、と想像はしてしまうが。
<個人感想>
☆Ehre(エーレ)=誇り
*Mut(ムート)=勇気
アドルフ・カウフマン
☆山本芳樹
子どもの時の動きがすごく可愛い。
半ズボンをとても恥ずかしいと言っていたが、まだまだ子ども役も大丈夫。
ただ、ドイツに行って学校に入って優等生になった時もちょっと弱々しくて、とても優等生に見えなかった。
何を考えているかちょっとわかり辛い感じがした。
日本に戻って来た時から大人になった感じの方がしっくりした。感情を殺した冷たさを感じさせてくれた。
*荒木健太朗
まだ見た目でもそのまま子どもに見える。その点は得かも。
荒木さんの方がしっかりして優等生になっていた。
結構苦悩する役が似合う。苦しんでいる感じは荒木さんに出ていた。
そして、エリザに恋をした事も荒木さんの方が分かりやすかった。
アドルフ・カミル
☆小野健太郎
飄々としていて、アドルフ・カウフマンを守ってやろうとする兄的存在に見えた。
日本人に馴染んで行こうとするカミルなので、庶民的な感じがあっていたと思う。
舞台では、アドルフ・カミルの存在は少し薄かった。
*松本慎也
自分が持っているイメージに縛られているのかも知れないが何となく、合わない役だった気がする。
強さを見せる時も無理をしているように感じてしまう。
どちらかと言えばカウフマンの方が合ったような。
曽世海司
*峠草平 原作はごつい感じだが、スマートな好青年。
語りも分かりやすく上手なので、狂言回しのこの役はぴったりな感じ。
重要な役なので、唯ひとり1役。
由季江を背負って空襲を語るシーンが印象に残る。
藤原啓児
*イザーク・カミル
この舞台の中で一番印象に残ったの人物はイザーク・カミル。
原作のどっしりした、ちょっと怖そうな雰囲気とは違うが。
リトアニアから、ドイツでの最期のシーン。
死にたくない、生きたい、と必死になる姿はその1シーンだけ見ても心に響いた。
藤原さんの演技力もあるのだろう。
石飛幸治
*本多大佐
あごのラインもすっきりした石飛さん。役の為に25キロ体重を落としたとのこと。
でも、厳格な軍人よりや優しさを感じてしまう。
これも石飛さんおイメージがあるからだろうか。
甲斐政彦
* アドルフ・ヒットラー
あのヒゲと髪型で誰でもヒトラーに似てしまうのだろうか。
甲斐さんもヒトラーにそっくり。
狂気と臆病な小心さを感じさせたヒットラーだった。
* スリの親分
子分の深山さんと一緒に演じたパントマイムの動きは面白かった。
倉本徹
* ランプ
みんなが知っている手塚さんのキャラクターということで、プレッシャーもあったそうだ。
でも、ランプの色々な形で登場してくるから、あまり縛られたイメージはないから。
頭にランプを立てる訳にはいかないし。でも何だか妖しい雰囲気は出ていたと思う。
漫画でもこのランプの役はつかみ所がない感じだから。
林勇輔
* 小城先生
結構、漫画では重要な役なのだが、舞台では笑いを取る役になっていたのが、少々不満。
笑いを取る必要はないと思うし、シリアスな役に徹して欲しかった。
* 他6役で合計7役の林さん。
その度にしっかり違った人物になっていたのはさすが。かつらや帽子など使って、頭が違うのがいいのかな。
悪ガキが結構似合っていて、これはさすがだと思う。本当にガキだった。
寺岡哲
* カウフマン・父
ライフ一スーツの似合う役者、と自己紹介していたが、自分もそう思う。
怖い役なのだが、無理して怖くしている感じ。
本当はこんな役回りは嫌で、もっと妻や子どもには優しくしたいのではないだろうか、と思ってしまうのは、寺岡さんのキャラクターだから。
愛国心を押し付けられて、悩んでいる感じがした。
奥田努
* 赤羽刑事
特高警察の刑事。執念深さがよく出ていた。
奥田さんも、合計7役。
その中で、林さんと同様に悪ガキがとってもはまっていた。
本当に子どもで可愛い悪ガキ。
ランニングシャツを頭に被るからのびのびになってしまったのも可愛かった。
牧島進一
* 米山刑事
関西弁は深山さんに指導してもらったそうだ。
ただ、このお関西弁の時がわりと台詞が聞き辛かった。声の強弱が強すぎるからかな。
三上俊
* カウフマンの母・由季江
とても綺麗で落ち着いた女性になっていた。日本人だけれど、上品なミセスという感じ。
この役はぴったりはまっていたと思う。
由季江の着物姿も見たかった。
関戸博一
* カミルの母・マルテ
こちらの方がドイツ人だけれど、女将さんという感じ。
でも頼りがいはありそう。
吉田隆太
* 芸者・絹子
準備に1時間、登場1分という絹子はうつ伏せで死んでいるので顔が見えない。残念。
後で写真が大きく写るが、それがとても綺麗に見えた。
それが好評で、ブロマイドをして売ったのだが、それを見ると、ちょっと怖い。
舞台挨拶の時、寺岡さんが「魔除け(ブロマイドのこと)がよく売れているそうで」と言い「絹子を退治する役」と言ったのに図らずも納得してしまった。
* エリザ・ゲルトハイマー
可憐な少女役。ちょっと気が強いエルザで、そんな役が吉田さんにはよく似合う。
舞台では神戸に来てからの様子がほとんどないので、カウフマンとの再会のシーンがなんとなくドイツと心情とつながらない気がした。
仲原裕之
* 本多芳男
長髪で繊細な感じが漫画のイメージとは違ったが、凛とした真っ直ぐな感じがとても好感がもてた。
姿勢がいいし、仲原さんはとても上品な感じがする。
あまり、石飛パパには似ていないけれど、母親似だな。
原作/手塚治虫 脚本・演出/倉田淳
<ストーリー>
1936年、ベルリンオリンピックの取材でロンドンへと渡った峠草平は、留学中の弟を何者かに殺される。
やがて真相は、彼がヒットラーに関する重大な秘密を知ったことによる口封じのためであり、さらにその秘密の書かれた文書が日本に向けて送られたことを知る。
一方、神戸ではドイツ領事館のカウフマンも本国からの指令を受け、文書の行方を追っていた。
熱心なナチス党員の彼は、一人息子のアドルフを国粋主義者として育てようとするが、アドルフは強く反発する。
同じ名を持つ無二の親友アドルフ・カミルが、ナチスの忌み嫌うユダヤ人であったから。
差別が厳しい日本で懸命に生きる2人。
いつしか惹かれあい、かばい合い、揺るぎない友情で結ばれていく。
しかし、時はヒットラーという独裁者が支配する暗黒の時代。
運命は2人の少年の澄んだ友情を残酷にも引き裂いていく―
※チラシより※
<感想>
手塚治虫さんも原作は単行本で5冊。
その長さを3時間にまとめると、やはりテンポが速く、なかなか登場人物に感情移入が出来ないまま過ぎてしまうところもある。
しかし原作を読んでいるので、勝手に補っているのだが。
まったく知らないで観た人はどうなのだろう、と毎回同じようなことを思う。
手塚さんの漫画は時代背景も丁寧に描かれているので、その時代知らない世代でもよく分かるが、舞台ではさすがにそこまでは無理。
台詞の中に「アカ」「特高」などの言葉は出てくるが、きっとよく分からない人もいるだろう。
是非原作も読んで欲しいと思う。
でも、さすがに倉田さん。とてもよくまとまっていると思う。
そして、言わずもがなだが、原作のストーリーもいいので、飽きさせない盛り上がりのある作品になったと思う。
というか、手塚ファンとして身内の作品を観ているようなので。
最初と最後が同じ場面になりが、その時にアドルフ・カウフマンがいう「俺の人生はなんだったのだろう。正義をいう言葉を追いかけて、何もかも失ってしまった」というのがテーマなのだと思う。
戦うことの虚しさを充分伝えてくれる作品だった。
アドルフ・カミルの方がカットされてしまったが、カミルをメインにしたら、また少し違ったものになった気がする。
同じ、戦争・ナチスが舞台の「パサジェルカ」は個人への思いが強かったが、「アドルフに告ぐ」は社会の中で翻弄される人間を可哀想に思えた。
Wキャストは主人公の2人だけで、あとはシングル。
そして、124人の登場人物を29人で演じるということで、1人7役の人もいる。
男女の違いや、かなり雰囲気の違う時はいいが、顔がしっかり分かり、同じ成人男子だったりすると、“あれっさっきは”と気になる時もあった。
まだ劇団員がいるのだからなるべく沢山の役者で、というのは難しいのか。
舞台裏は大人数で着替えも多くて大騒ぎだろう、と想像はしてしまうが。
<個人感想>
☆Ehre(エーレ)=誇り
*Mut(ムート)=勇気
アドルフ・カウフマン
☆山本芳樹
子どもの時の動きがすごく可愛い。
半ズボンをとても恥ずかしいと言っていたが、まだまだ子ども役も大丈夫。
ただ、ドイツに行って学校に入って優等生になった時もちょっと弱々しくて、とても優等生に見えなかった。
何を考えているかちょっとわかり辛い感じがした。
日本に戻って来た時から大人になった感じの方がしっくりした。感情を殺した冷たさを感じさせてくれた。
*荒木健太朗
まだ見た目でもそのまま子どもに見える。その点は得かも。
荒木さんの方がしっかりして優等生になっていた。
結構苦悩する役が似合う。苦しんでいる感じは荒木さんに出ていた。
そして、エリザに恋をした事も荒木さんの方が分かりやすかった。
アドルフ・カミル
☆小野健太郎
飄々としていて、アドルフ・カウフマンを守ってやろうとする兄的存在に見えた。
日本人に馴染んで行こうとするカミルなので、庶民的な感じがあっていたと思う。
舞台では、アドルフ・カミルの存在は少し薄かった。
*松本慎也
自分が持っているイメージに縛られているのかも知れないが何となく、合わない役だった気がする。
強さを見せる時も無理をしているように感じてしまう。
どちらかと言えばカウフマンの方が合ったような。
曽世海司
*峠草平 原作はごつい感じだが、スマートな好青年。
語りも分かりやすく上手なので、狂言回しのこの役はぴったりな感じ。
重要な役なので、唯ひとり1役。
由季江を背負って空襲を語るシーンが印象に残る。
藤原啓児
*イザーク・カミル
この舞台の中で一番印象に残ったの人物はイザーク・カミル。
原作のどっしりした、ちょっと怖そうな雰囲気とは違うが。
リトアニアから、ドイツでの最期のシーン。
死にたくない、生きたい、と必死になる姿はその1シーンだけ見ても心に響いた。
藤原さんの演技力もあるのだろう。
石飛幸治
*本多大佐
あごのラインもすっきりした石飛さん。役の為に25キロ体重を落としたとのこと。
でも、厳格な軍人よりや優しさを感じてしまう。
これも石飛さんおイメージがあるからだろうか。
甲斐政彦
* アドルフ・ヒットラー
あのヒゲと髪型で誰でもヒトラーに似てしまうのだろうか。
甲斐さんもヒトラーにそっくり。
狂気と臆病な小心さを感じさせたヒットラーだった。
* スリの親分
子分の深山さんと一緒に演じたパントマイムの動きは面白かった。
倉本徹
* ランプ
みんなが知っている手塚さんのキャラクターということで、プレッシャーもあったそうだ。
でも、ランプの色々な形で登場してくるから、あまり縛られたイメージはないから。
頭にランプを立てる訳にはいかないし。でも何だか妖しい雰囲気は出ていたと思う。
漫画でもこのランプの役はつかみ所がない感じだから。
林勇輔
* 小城先生
結構、漫画では重要な役なのだが、舞台では笑いを取る役になっていたのが、少々不満。
笑いを取る必要はないと思うし、シリアスな役に徹して欲しかった。
* 他6役で合計7役の林さん。
その度にしっかり違った人物になっていたのはさすが。かつらや帽子など使って、頭が違うのがいいのかな。
悪ガキが結構似合っていて、これはさすがだと思う。本当にガキだった。
寺岡哲
* カウフマン・父
ライフ一スーツの似合う役者、と自己紹介していたが、自分もそう思う。
怖い役なのだが、無理して怖くしている感じ。
本当はこんな役回りは嫌で、もっと妻や子どもには優しくしたいのではないだろうか、と思ってしまうのは、寺岡さんのキャラクターだから。
愛国心を押し付けられて、悩んでいる感じがした。
奥田努
* 赤羽刑事
特高警察の刑事。執念深さがよく出ていた。
奥田さんも、合計7役。
その中で、林さんと同様に悪ガキがとってもはまっていた。
本当に子どもで可愛い悪ガキ。
ランニングシャツを頭に被るからのびのびになってしまったのも可愛かった。
牧島進一
* 米山刑事
関西弁は深山さんに指導してもらったそうだ。
ただ、このお関西弁の時がわりと台詞が聞き辛かった。声の強弱が強すぎるからかな。
三上俊
* カウフマンの母・由季江
とても綺麗で落ち着いた女性になっていた。日本人だけれど、上品なミセスという感じ。
この役はぴったりはまっていたと思う。
由季江の着物姿も見たかった。
関戸博一
* カミルの母・マルテ
こちらの方がドイツ人だけれど、女将さんという感じ。
でも頼りがいはありそう。
吉田隆太
* 芸者・絹子
準備に1時間、登場1分という絹子はうつ伏せで死んでいるので顔が見えない。残念。
後で写真が大きく写るが、それがとても綺麗に見えた。
それが好評で、ブロマイドをして売ったのだが、それを見ると、ちょっと怖い。
舞台挨拶の時、寺岡さんが「魔除け(ブロマイドのこと)がよく売れているそうで」と言い「絹子を退治する役」と言ったのに図らずも納得してしまった。
* エリザ・ゲルトハイマー
可憐な少女役。ちょっと気が強いエルザで、そんな役が吉田さんにはよく似合う。
舞台では神戸に来てからの様子がほとんどないので、カウフマンとの再会のシーンがなんとなくドイツと心情とつながらない気がした。
仲原裕之
* 本多芳男
長髪で繊細な感じが漫画のイメージとは違ったが、凛とした真っ直ぐな感じがとても好感がもてた。
姿勢がいいし、仲原さんはとても上品な感じがする。
あまり、石飛パパには似ていないけれど、母親似だな。
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