タイの涅槃仏が大好きである。
先日、海外のおススメ観光地に、
「魔改造によってプラモ魔神に変形しそう」
という、われながら気の狂ったような理由でトルコのブルーモスクをあげたが、それに負けず良い物件がこれだ。
来ましたよ、涅槃仏。
「ゆるキャン△」ならぬ「ゆるパッカー」を自認する私は、この涅槃仏が大好きで、何度鑑賞しても飽きないほどだ。
タイ観光の目玉は首都バンコクにある王宮とワット・ポーだが、まず目を引くのがその絢爛豪華なところ。
アジアの人は金が好きだが、このワット・ポーも御多分に漏れず、ゴルドンかキングギドラというくらいのまっキンキン。
「わびさび」「陰翳礼讃」な日本人からすると、こんな派手でええんやろか。
なんて、よけいなお世話で心配したくなるが、タイはかなり敬虔な仏教国であり、宗教アバウト民族の我々よりも、よほどまじめに信仰しているのだ。
マナーにしたがって靴を脱ぎ、寺の中に入る。
私は神妙な気持ちになって、目を閉じ、手を合わせた。そこには巨大な涅槃仏があるのだ。これが、バンコク観光のハイライトである。
さすがは仏教国タイの仏像。それはなんともすごいものだった。
全長49メートル、高さ12メートル。
ほとんど怪獣というか、ふつうにウルトラマン(身長40メートル)よりもでかいわけで、その巨大仏がこちらを圧倒するようにどーんと……。
寝ていた。
寝ていたのである。
おい待て、寝てていいのか。
ヨーロッパの教会などに行くと、イエス・キリストなど手に釘を打ちつけられて、十字架に張り付けられている。
エジプトの王家の墓では、ツタンカーメンのミイラが鎮座されている。
神殿や教会というのは、本来そういった重々しい場所のはずではないのか。
そこを寝ている。
しかも右手のヒジをつき、手のひらを頭に添え、完全にくつろぎモード。
ビール瓶とコップ、それに阪神巨人戦を映しているテレビがあれば、完全無欠に仕事帰り、家で晩酌してくつろいでいる昭和のお父さんである。
やはり、ゆるゆるだ。
今なら左手にうちわ、右手にスマホを持っていれば、より完璧なビジュアルであろう。きっと、ムチャクチャどうでもいいユーチューバーの動画とか見ているにちがいない。
涅槃仏はまたの名を「寝釈迦」というが、そのまんまである。
「いい塩梅」
という言葉がこれほど似合ういで立ちもなく、これが
「悟りを開いた、もっともエライ人」
なのだから、仏教というのはステキな宗教ではないか。
(『ロンリー・プラネット編に続く→こちら)