『元アイドル!』を読む。
プロインタビュアーであるサブカルライター吉田豪さんが、おニャン子クラブや少女隊、ドラマ『スケバン刑事』の風間三姉妹。
などなど、かつて一世を風靡したアイドルたちから、今だから語れるその時代の真相を、鋭く聞き出していくというもの。
登場するのは、杉浦幸、新田恵利、中村由真、宍戸留美、花島優子、その他いろいろ。
私はあまり芸能界というものに興味がなく、また時代的にもややズレがあり、彼女らのことは名前くらいしか知らない場合も多かった。
が、これがまあなんというか、読んでみると、実に因果なおもしろさがあって引きこまれたのである。
常に人目にさらされる芸能人というのは、素人が想像するだけでも、なんとも大変そうな仕事。
中でもアイドルというのは、その虚構性の強さと宗教的な崇拝と同時に、ファンのストレートなリビドーの対象であるという業の深い存在であることから、その心身へのストレスはハンパではないようだ。
無茶な仕事に、暴力、セクハラにおかしな関係者とか、本当にもう大変。
それにより、円形脱毛症になったり、突然失踪したり、精神科通いで幻覚を見たり、入院して生死の境をさまよったり。
吉田豪さんもインタビューの中で、
「アイドルやってると、自殺を考えるくらいまで追いこまれる人も結構多い」
何度もそう言っているが、お話を聞いていると、「そら、そうなるわ」と、あきれるような事件が目白押しであった。
『ヤヌスの鏡』で有名な杉浦幸さんは、仕事がキツすぎて心がおかしくなったとか。
苦痛な仕事というのはさまざまであり、握手会で「こいつだけは勘弁」というファン相手でも、笑顔で対応しなければならないという本音は、まあこちらも想像はできる。
よくいわれる、「体液的なもの」と一緒に握手をしてくるファンというのは、やはりいらっしゃるようで、それでもニッコリ天使の笑顔。
本人も地獄であるが、とばっちりなのは、その後に並んだ男子たち。
あるアイドル曰く、
「次の人の手で拭きました(笑)」
いやいや、(笑)やないー! 怖いー! やめてー!
ほかのアイドルも負けてなくて、
「封筒を開けたら、猫の死骸が入っていた」
「マネージャー抜きで海外に行かされておかしいなと思っていたら、その場で『脱げ』とおどされた」。
「いきなりスカイダイビングさせられて、勝手に生命保険に入られていた」
「事務所の社長が、タレントに借金を押しつけて蒸発」
全然、笑えない話のオンパレード。
スカイダイビングといえば、若手時代のたむらけんじさんが、まったく同じ目にあったそうであるが(受取人はもちろん吉本興業)、売れっ子アイドルが下積み時代の芸人と同じあつかいとは……。
同期アイドルと対談の仕事で、「枕営業、あるみたいよ」といわれて「どうしよう……」と頭をかかえたというエピソードには豪さんも
「やっぱり、枕営業はあるんですか?」
つっこんで訊くと、
「人によるんじゃないですか? 自分からやろうと思えばいっぱいあると思うし」
「噂ほどあるわけでは絶対ないけど、過去には……」
なんとも微妙なお答え。
まあ、あるんでしょうなあ。
こんなことばっかりやってたら、そらなんぼ気の強い子でも壊れます。
杉浦さんも、とりあえず周囲の気にくわない奴を散弾銃でもって、
「こいつらみんなぶっ殺してやりたい!」
いつも思っていたそうな。意に沿わない仕事や、現場でのいじめで追いつめられ、
「ビルの屋上から飛んだら気持ちいいだろうな……」
……と、茫然と過ごす毎日。そら銃も乱射したくなりますわな。
とまあ、とにかく全編「芸能界は、おそろしいところや」という内容でございまして、アイドル志望の娘さんは必読かも知れません。
読後はもう、テレビを見ていて、
「あんな笑顔を見せてるけど、あの子もウラでは……」
邪推ノンストップ状態になってしまい、なんだか切なくなります。
とりあえず将来、娘ができても、絶対芸能界には行かしたくなくなりますねえ。
(次回に続きます→こちら)