前回の続き。
深夜ラジオで、年始に見たロシア映画の『フライト・クルー』について、アシスタントのアコちゃんに熱く語るシャロ村ジュン先生。
人命救助に飛び立ったエリートパイロットのアレクセイだったのですが、洪水のように流れる灼熱の溶岩に道をふさがれ立往生。
このまま、なにもできずに終わるのか。
しかしそこに、かすかな希望の光が……。
絶望にくずれ落ちそうになるところ、どこからか声が聞こえてきた、
「アホ、ここであきらめてどないすんねん、天才パイロット!」
「え?」と振り向くと、そこにはCAのアンドレイの姿が。
「アンドレイ、おまえここで、なにしてるんや!」
「なにって、救助活動に決まってるやないか」
「でも、おまえの仕事は……」
そこでアンドレイはニヤッと白い歯を見せて、
「オレもおまえも、仕事は同じ。乗客の命を守ることやないか」
そう言うと、なんとアンドレイはシャツを脱ぎすて、やおら溶岩の海に飛びこむ!
なんてことをするんや! 死ぬ気か!
思わずさけぶアレクセイやが、しばらくするとアンドレイは向こう岸から疲れ切った人々を、大量に乗せた輸送車を運転して帰ってくる。
すごい、カッコイイやん。
そこにおる全員が「よっしゃ!」とガッツポーズを決める。
「大丈夫、全員無事や!」
「それはええけど、アンドレイ、おまえは平気なんか?」
そこでアンドレイは鼻をこすると、
「ああ、実はオレ、昔は素潜りのオリンピック選手やったんや」
「ポセイドン号みたいな奇蹟やな。でも、熱くないんか?」
「なーに、コーヒーを煎れるんで、なれてるんや」
それを聞いて、思わず笑いあう二人。男の友情が生まれた瞬間です。
だがしかし、その熱い場面は轟音によってかき消される。
がけ崩れが起こって、巨大な岩が2人の上に転がってくる。
危ない! 間一髪でよけたが、一難去ってまた一難。そこに、狂ったライオンのような吠え声が響き渡るんや。
えー。もうやめたげてー。
なんや、なんなんや! パニックになりそうな中、くずれた山肌を見上げると、なんとそこには巨大怪獣が!
体長1キロメートルはあろうかという、でっかいでっかいアザラシの怪獣マグマラーがはい出てくる。
「こいつや、こいつが噴火の原因やったんや!」
「なんてことや、この科学島は旧ソ連の極秘施設やったが、まさかこんなもんを開発してたとは……」
さすがの勇気ある2人も、これにはどうしようもない。絶体絶命かと思われたとき、なんと空から1機の航空機が飛んでくる。
あれはなんや! アレクセイが空を見上げる。ジェンチェンコさんの飛行機や! アンドレイが応える。
そこに無線が入る。声の主は、もちろんジェンチェンコや。
「ワシや。これから当機は怪獣に特攻をかける!」
なんやて! そんな無茶な。そんなことをしたら、アンタも死んでまうんやで!
いやー、そんなんイヤやわー。
しばらく間があったあと、
「ええんや。こんな事故を起こしていしまったのも、元はと言えばワシらの責任や」
ジェンチェンコによると、冷戦時代、彼もまたこの科学島で働いていたスタッフだった。
そして、西側諸国への軍事的対抗策として、この悪魔のような怪獣を開発していたと。
「まさか、コイツがまだ生きとったとは……。この責任は、ワシらの世代が清算せなアカンのや。若いおまえらは生きろ。そして、新しい平和なロシアを作っていくんや」
「機長!」
「あとはまかせた。死ね、怪獣!」
ドカーン! ボーン、ドーン!
機長の体当たりで、怪獣は大きなダメージを受けた。やったで!
ジェンチェンコの最後の言葉に、泣き崩れるアレクセイ。
「ドアホ、機長の死をムダにするつもりか、このぼけなす!」
彼を強引に立たせるアンドレイ。
大きな犠牲は払ったが、なんとか住民を助けることには成功した。あとは飛行機を発進させて、安全な場所へ帰るのみ。
アレクサンドラと分けて、2機の飛行機で飛ぶことになったが、不運なことに燃料が少ない。
飛ぶにはギリギリや、もし失敗してもやり直しはきかん。まさに気合発進で気合着陸。
へー、どうなんの?
なんとかもってくれ。飛べ、飛んでくれ、フェニックス! なんとかワシらと乗客の命を救ってくれ!
祈るようにハンドルを握るアレクセイ。それが通じたか、機体は見事に浮かび上がった。
やったー、すごーい。
飛んだ! こうなったら冷静になるアレクセイは、ゆっくりとクラッチを切ってアクセルを踏みこむ。あとは自動操縦にまかせたらええ。
これでついに、すべてのミッションをクリア。飛行機は救助者を乗せて、とうとうモスクワの空港に到着。
大きな犠牲は払ってしまったが、それでも救われた命も多かった。ようやってくれた。
プーチン大統領の言葉に、敬礼で答えるアレクセイらクルーたち。
わー、空手八段の人やー。
その後、災害の後処理をするため、またも飛ばなければならない国際救助隊やが、その前に束の間の休息があたえられる。
そこでアレクセイは言うんや、
「オレはこの事件から、自分が本当に大事に思っているものを見つけたんや……」
その先にいるのは、恋人やったアレクサンドラ……やなくて、CAのアンドレイ。
彼もまた、無言でうなずく。
2人は手を取り合うと、
「今夜は俺たちが大噴火だな」
「へへ、救助を呼ぶほど激しいのは勘弁してくれよ」
アッハッハとこだまする、男たちの笑い声。ふんどし姿でビーチを走る2人。
『戦国自衛隊』と『ヒーローインタビュー』リスペクトの美しいラストシーン。聞こえてくるエンディングテーマ、流れるスタッフロール。
感動やわー。
さて、ここから話はどうなるのか。
どうなるの?
続きは映画館でお楽しみください。
注1・シャロ村さんは「レビューのために、もう1回見直す」のがめんどくさいので、記憶をもとにだいたいで再現する「黒岩涙香スタイル」を採用しています。
注2・読んだ方の中には「ネタバレだ!」と怒る人もいるかもしれませんが、たぶん3割くらいしか正確な情報がないので、安心してご鑑賞ください。
注3・『ありがとう浜村淳』が、いつの間にか週1放送に。
中学生時代、通学路に停まっている軽トラのラジオから流れてくる、浜村さんの極右トークを聴くのが朝の楽しみでした。
注4・『サタディ・バチョン』は北村安湖さんのファンでした。
この世代の関西人にとって映画レビューは「全部語る」がデフォですよね。