第二外国語の選択はむずかしい。
というテーマでここ数回語っており、ここまで
「フランス語は負け犬(→こちら)、ロシア語は酔狂(→こちら)、中国語(→こちら)とスペイン語(→こちら)は人生の勝利者」
ということになっているが、では肝心の私の専攻であるドイツ語はどうなのかと問うならば、これは論理的構造にすぐれ、医学の世界などでも大いに活躍している言語だ。
さらには名詞に性が3つもあってなんでやねんとか、冠詞や形容詞がいちいち格変化するのが大変で、分離動詞とか再帰代名詞とか意味不明であり、接続法はずっと「雰囲気」で読んでいて。
地方意識強いから方言文化が充実しすぎて、先生によって発音がまちまちだったり(「ライプツィヒ」が「ライプツィク」になるとか)、巻き舌苦手だといきなり挫折しかけるとか、もう正直やっとられっか!
……などなどとても魅力的なものであり、もちろんのこと、超のつくほどおススメです(大本営発表)。
まあ、私の場合は「好きだから」という理由でドイツ文学を選んだわけだから、ドイツ語に関しては大変とか言ってもしょうがないわけで、皆様にすすめられるか客観的な判断は難しい。
ちなみに、私の今のドイツ語は、そこはスペシャリストということで、すでに現役を退いた現在でも、
「見たらドイツ語かどうかはわかる」
というレベルをキープしているのは、さすがと言わざるを得ない。
アルファベートの上に点がついてたら、だいたいドイツ語です(ホントかよ)。
一応、海外旅行で駅の表示やレストランのメニューとかくらいは理解できるし、辞書さえあれば簡単な文章くらいは読めそうだけど、まあその程度。
いわゆる「中2英語」と大同小異であろうか。
「語学学習というのは、穴の開いたバケツに水をくむようなもの」
という言葉通り、外国語はダイエットと同じで、継続しないとすぐに力が落ちます。
まあ、それはどのジャンルでもそうなんでしょうねえ。生きるって大変だ。
そこで今回は、すっかり「語学隠居」な私が、学生時代に勉強の足しにと読んだ本などを紹介したい。
そこから興味を持っていただければ幸いである。
★藤田五郎『ドイツ語のすすめ』
講談社現代新書の一冊。字通りの「ドイツ語って、こんなんだよ、楽しいよ」とすすめてくれる内容。
参考書としては物足りないけど、読みやすくて入門書には最適だった。
「トーナスだと!」など、時代を感じさせる言い回しも、今の視点で読むと楽しい。
中級編に『ドイツ語の新しい学び方』というのもある。
☆池内紀『ぼくのドイツ文学講義』
ドイツ文学者である池内先生の本は、ほぼほぼすべて読んでいるが、文学入門書といえばこれがいいかも。
「ぼくの」とあるように、普遍的な解釈や講義ではないが、池内流の静かでいながら独特の筆さばきが冴える。
「カフカの『変身』は一級のコメディー作品」
「ハインリヒ・ハイネは情熱の詩人であるとともに、したたかな実際家」
「たった一着の制服で国じゅうを笑わせた、ドイツ流風刺劇について」
などなど、一見「お堅い」独文学のイメージを一変させてくれる。
本流というよりは、あくまで「池内流」の料理法だが、既存のかたくるしい「文学論」が苦手な人は、ぜひこちらから入ってみるのも手。
池内本はどれもおもしろいけど、ドイツ文学関係では他に、『ゲーテさんこんばんは』『カフカの生涯』などもおススメ。
★NHKラジオ『ドイツ語講座』
定番だが、やはり自宅で生ドイツ語を聴きたければ、ネットのない時代はこれ。
テキスト代数百円で、毎日ちゃんとした講義が聴けるのだから、こんなオトクな話はない。
ラジオ講座にかぎらず、語学はすべてそうだけど、「五感を総動員」するのが学習のコツ。
ただ漫然と聴くだけでなく、単語や文法をおぼえるのはもちろん、暗唱できるようになるまでくりかえし音読し、例文を何度も何度も書き写す。
余白には、調べたことを書きこみしまくって、テキストを自分流のノートにするとか「骨までしゃぶりつくす」ことが肝心。
もちろん、コラムや雑談の類も、しっかり読みこみましょう。
☆『MD 月刊基礎ドイツ語』
ドイツ語の老舗である三修社から出ていた、ドイツ語学習者専門雑誌。
「MD」とは「Mein Deutsch」(私のドイツ語)の略。
「ドイツ語編」と「ドイツ文化編」に分かれており、語学編は月ごとに「仮定法」とか「関係代名詞」とかテーマがあって、1年通読すると一通り基礎文法がマスターできるというもの。
私は「文化編」が好きで、ドイツの現代音楽や少数民族事情など、日本ではなかなか知りえない情報が満載。
「ソルブ人とソルブ語の保護問題」
なんて、これを読まなきゃ接することもなかったろうなあ。
銀行や歯医者の待ち時間、いつも開いてました。今でも青春の思い出。
休刊してしまったのが、残念でならない。