ベルギーのX‐Man グザビエ・マリスvsロジャー・フェデラー 2012年ウィンブルドン4回戦

2021年11月05日 | テニス

 グザビエマリスがツアーに復帰していた。

 このところ、テニス観戦の時間がグッと減ってしまったのが悩みである。

 おそらくは、ここ数年、将棋番組を観る機会が増えたせいで、先日も白瀧あゆみ杯決勝の終盤戦がメチャクチャおもしろく、パソコンの前に釘付けになった。

 小高佐季子女流初段が、詰むや詰まざるやの場面を見事に逃げ切り(渡辺明名人がちょっとウッカリした筋を見逃さなかったのがスゴイ!)、九州研修生の松下舞琳さんに勝利して優勝。

 最近、こうして女流棋士の将棋を観られる機会が増えて、これがまあうれしいわけだが、そんなノリで将棋のはなしが増えて、いかんいかん、今日はテニスだとヒザを正すわけである。

 テニスはグランドスラム大会だと試合時間も長いし、将棋や自転車ロードレースと違って、「ながら観戦」がむずかしいのもネックだが、それではいかんと、遅ればせながらインディアンウェルズ大会をチェック。

 キャスパールードの活躍とか、マッテオベレッティーニテイラーフリッツの打ち合いはいいなあとか決勝ニコロズバシラシビリキャメロンノリーで、「地味な選手萌え」の私にはたまらんとか。

 それと同時に、最近のツアーのニュースも集めているのだが、そこで目を引いたのが、

 

 「グザビエ・マリス、ツアーに復帰」

 

 グザビエマリス

 私の世代だと、「ザビエルマリッセ」表記の方がなじみがあるが、10月のアントワープ大会でダブルスだがエントリーしているようなのだ。

 私のようなオジ……壮年の紳士にはなつかしい名前で、また「地味選手萌え」な身としても、これは確認せねばなるまい。

 最高ランキングが、シングルスで世界19位、ダブルスでも25位。 

 2002年ウィンブルドンでは、ベスト4(準優勝したダビドナルバンディアンに敗れた)。

 また、2004年ローランギャロスでは同胞のオリビエロクスと組んでダブルス優勝という、ベルギーのレジェンド選手なのだ。

 ベルギーのテニスといえば、このころは女子のジュスティーヌエナンや、キムクライスターズが活躍しており、男子はさほど目立たない印象だった。

 それでも、今見れば実績はなかなかのもので、マリスに加えて、


 フィリップデブルフ(最高ランキング39位1997年ローランギャロスベスト4

 オリビエロクス(最高ランキング24位2004年ローランギャロスダブルス優勝


 などなど、いいプレーヤーは多いのだった。

 そんなマリスは、コーチを務める南アフリカのロイドハリス24歳・世界31位)と組んでダブルスに出場。

 弟子とのコンビと言うことで、真剣勝負というよりも「指導モード」に近いのかもしれないが、それでも昔取った杵柄でベスト4進出を果たしたのは、さすがである。

 そんなマリスと言えば、今でも忘れられない試合がある。

 それが2012年ウィンブルドン4回戦ロジャーフェデラーとの一戦。

 理由のひとつは、この試合でマリスが非常にいいプレーを見せてくれたこと。

 もうひとつは、アスリートのインタビューなどでよく聞く、

 

 「勝負の世界は、いい人と思われたらお終い」

 

 という言葉の意味を、少しばかり理解することができたからだ。 


 (続く→こちら

 

 

 

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大駒「不成」は必死の証 羽生善治vs谷川浩司 1992年 第5期竜王戦 森内俊之vs谷川浩司 2001年 第19回全日本プロトーナメント 

2021年11月02日 | 将棋・好手 妙手

 大駒の「不成」には、子供のころ感動したものだった。

 将棋において、桂馬香車は「不成」で使うのが好手になるケースは多いが、一方で飛車に関しては、まずありえない。

 それが、唯一と言っていいほどのレアケースで生ずるのが、「打ち歩詰」を回避する手筋。

 将棋は最後に、持駒の歩を打って詰ますのは反則で、それだけだと意味のよくわからないルール。

 なのだが、幸いにと言っては変だが、これがあるおかげで、ものすごく奥が深くなったのが詰将棋の世界。

 この筋を回避するため、詰将棋には飛車や角をあえて不成」で使うという形が出て「おー」と歓声が上がり、実戦(その一局や詰将棋は→こちら)にも出たことがあるのは、こないだもお伝えした通り。

 また、ここに「打ち歩詰」ほどではないにしろ、なかなか見られない「大駒不成」があって、前回は奇跡的ともいえる実戦の「飛不成」を見ていただいたが(→こちら)、今回ちょっとちがう「不成」のお話。

 

 前にやってた、第3回アべマトーナメントで、高野智史五段が、今泉健司四段相手に「飛車不成」を披露して話題になった。

 といっても、ここでは「打ち歩詰め」は関係なく、単に取られそうな飛車を逃げただけだが、この大会が「フィッシャールール」を採用していると聞けば、「あー、あれね」と、うなずく方もおられるだろう。

 そう、ここで高野が指したのは、

 

 「時間かせぎの不成」

 

 将棋では終盤で時間が無くなると、1秒でも、いやそれこそ0、01秒でもいいから考える時間がほしいもの。

 そのためには、駒を裏返す時間も惜しいということで、とっさに披露することもあるのだ。

 これはのちのトップ棋士でも、いくつかやってるケースがあって、たとえば1992年の第5期竜王戦

 谷川浩司竜王棋聖王将と、羽生善治王座棋王で争われた七番勝負の第2局

 

 

 

 

 先手玉に受けがなく、後手玉を詰ますしかないが、次の手にビックリ。

 

 

 

 

 

 ▲41飛不成が、「え?」となる手。

 たしかこれ、10代のころ並べていて、思わず手が止まったのをおぼえている。

 「誤植」にしか見えないから、どういうこっちゃと混乱したわけだが、このブログのため、あらためてこの将棋の棋譜を並べ替えしたときも(その記事は→こちら)、

 「ん? ん?」

 もう一回、目が回りそうになったから、かなりのインパクトだ。

 もちろん、時間に追われて飛車をひっくり返す余裕がなかったからだが、竜王戦という頂上決戦の、しかも羽生-谷川というゴールデンカードでこういうことがおこることからして、

 「大駒の不成」

 これが「必死の証」であることがよくわかる。

 「」まで読まれて、ギリギリに駒をすべらせた羽生の姿が、目に浮かぶようではないか。

 この場合、後手は△41同玉と取るしかないから、成っても成らなくても、一応は問題ない。

 結果は後手玉に詰みがなく、谷川が勝ち。

 

 もうひとつは、2001年の第19回全日本プロトーナメント(今の朝日杯)。

 谷川浩司九段と、森内俊之八段との決勝五番勝負の最終局

 

 

 

 

 難解な終盤戦から、後手の森内がようやく抜け出した場面で、ここまでの流れでいえば、次の手はもうおわかりでしょう。

 

 

 

 

 

 

 △78飛不成が、当時話題になった手。

 やはり、さっきの羽生と同じく決死の時間かせぎだが、ちょっとちがうのは、森内はその後、この手のことを聞かれて、わりと自覚的に指していたことを認めている。

 つまりは、ハッキリと

 

 「いよいよ秒読みになったら、不成を発動させて勝つ」

 

 という意志があったわけで、そこまで割り切って成らないというのも、なかなかに、めずらしいスタイルではないか。

 後年、森内自身が語るところによると、さすがに自分でもやりすぎだったと反省するようなことを、おっしゃっていた。

 その後、森内は実績的にも人格的にも、文句のつけようのない大棋士になるのは、ご承知の通り。

 そんな人が若いころには、こういうなりふり構わぬ闘志を見せていたのというのが、今見るとなかなかに熱いではないか。

 

 (中原誠名人による「詐欺師の手口」編に続く→こちら

 

 

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