読書日和

お気に入りの小説やマンガをご紹介。
好きな小説は青春もの。
日々のできごとやフォトギャラリーなどもお届けします。

「上村愛子 smile」山石 やすこ のご紹介

2007-03-11 19:22:43 | ノンフィクション・エッセイ
今回ご紹介するのは「上村愛子 smile」です。
上村愛子さんは長野オリンピックで初めて見ました。
髪にビーズを付けたりしているのがテレビで紹介されたりしていました。
この当時はまだモーグルという競技はそれほど有名ではありませんでした。
当時僕は13才で、18才の上村さんをカッコいいお姉さんと思ったものです。
愛嬌があり、人を惹きつける華を持った人だと思います。
その上村さんのトリノオリンピックまでの道のりを綴ったのが「上村愛子 smile!」です。
上村さんは長野オリンピックは7位、ソルトレイクシティオリンピックは6位でした。
みなさんも、上村さんが長野からソルトレイクまでの間に圧倒的に力を付けたのはご存知だと思います。
テレビのニュースでも、上村さんがワールドカップで表彰台に上がったという話が聞かれるようになりました。
ソルトレイクのときもメダル候補に上がっていました。
長野で金メダルを取った里谷多英より実力が上と見られるようになっていたのです。
しかしソルトレイクではまさかの6位に終わりました。
この本は、そのときの心のうちなどが書かれています。
写真付きで、ソルトレイクの湖に行ったときの様子が紹介されたりもしています。


話の中心はこのソルトレイクが終わってからトリノまでの道のりです。
普段テレビでしか上村さんを見たことがないので知りませんでしたが、トリノまでの道のりは険しかったようです。
上村さんがトリノで見せた必殺技、コークスクリュー720は、会得するまでにかなり苦労したとあります。
僕たちはテレビで上村さんのコークスクリュー720が決まるのを見て大はしゃぎでしたが、やっている本人は血の滲むような努力を重ねているのです。
夏場にプールを使ってコークスクリュー720の練習をしていたのはこの本で初めて知りました。
また、本の1ページ目に、2005年ワールドカップ・ボス大会で優勝したときの写真が載っています。
上村さんはとても誇らしげで、長きスランプから脱出した喜びが伝わってきました。


また、上村さんはいじめに遭っていたそうです。
スキー板を隠されたり、無視されたり、かなりひどいいじめだったとあります。
普段愛くるしい笑顔を見せている姿からは想像がつきませんが、つらい過去があったのだなと思います。


トリノオリンピックの結果は5位でした。
メダルを取れなかったとはいえ、上村さんは本番でもコークスクリュー720を決め、持てる力を出し切ったと思います。
上村さんはバンクーバーオリンピックにも出場すると言っていました。
それを聞いて安心しました。
一日でも長く、モーグルで活躍する上村さんを見ていたいです。
今度こそ、メダルを手にすることが出来ると信じています。

※図書レビュー館を見る方はこちらをどうぞ。

「リトル・バイ・リトル」島本理生 のご紹介

2007-03-11 15:33:56 | 小説
こんにちは。
今日は風が強いみたいで、外にいると風邪を引いてしまいそうです。
体調に気をつけましょう。
さて、今回ご紹介するのは、「リトル・バイ・リトル」(著:島本理生)です。
この本は装丁が印象的で、子供の女の子が何か食べているのを写真で撮って、それをそのまま装丁にした感じです。
食べているのはゼリーとかでしょうか?
水晶のようにも見えますが、なかなかわかりません。
写真はカメラ目線でなくて、自然な感じがして良いと思います。


主人公は「ふみ」という高校を卒業して間もない子です。
ふみには「ユウちゃん」という父親違いの妹がいます。
二人の母親は整骨院で働いている人で、院長の夜逃げで職を失ってしまいます。
それがきっかけで、ふみは英会話教室の宣伝用ティッシュ配りのバイトを始めます。
ふみと、ふみを取り巻く人々とのふれあいを描いた小説のようです。
純文学という言葉がピッタリなのではと思います。


ふみと、キックボクシングをしている「市倉君」という男の子が出会う場面があるのですが、これは展開が読めました。
母親が別の整骨院で働き始め、ふみが寝違えて首を痛めたとき、その整骨院に来いというのです。
その何ページか前にこの母親は、お客さんの中にふみの好みそうな男の子がいると言っていました。
で、すぐにこの展開です。
でも変に話をひねるより、この展開の方がリトル・バイ・リトルの世界感に合っているのかも知れません。


リトル・バイ・リトルで描いているのは本当に平凡な日常です。
でもその平凡さが読んでいてとても居心地良く感じます。
母親が二度目の離婚をしたりと、意外と重い題材も含まれているのですが、それを全く感じさせない平和な空気が満ちています。
世界観がサザエさんと似ているような気がします。
人と人との平凡な会話を中心にした小説、こういうのも良いのではと思います。


死というのが二度に渡って出てきます。
一度目は飼っていたモルモットの死、二度目は通っている習字教室の奥さんの死です。
それでも暗い影を落とさないのは、この作品の平和な世界観のおかげだと思います。


高校から、借りっぱなしにしている本を返すように催促される場面があります。
これも平凡な日常ですが、僕にもそういう経験があり、懐かしくなりました。
借りパクはいけないことですが、人の日常ではそういうこともあります。
こんな平凡な場面でも、この小説の中だと輝くのが不思議です。


これだけ平和的でゆったりした小説は初めて読みました。
読んでいて心が落ち着く、日常を絵に描いたような小説です。
興味を持たれた方、ぜひ読んでみてください。


※「島本理生さんと芥川賞と直木賞 激闘六番勝負」の記事をご覧になる方はこちらをどうぞ。

※図書レビュー館(レビュー記事の作家ごとの一覧)を見る方はこちらをどうぞ。

※図書ランキングはこちらをどうぞ。