読書日和

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「書店ガール」碧野圭

2013-03-17 19:19:17 | 小説
今回ご紹介するのは「書店ガール」(著:碧野圭)です。

-----内容-----
吉祥寺にある書店のアラフォー副店長理子は、はねっかえりの部下亜紀の扱いに手を焼いていた。
協調性がなく、恋愛も自由奔放。
仕事でも好き勝手な提案ばかり。
一方の亜紀も、ダメ出しばかりする「頭の固い上司」の理子に猛反発。
そんなある日、店にとんでもない危機が……。
書店を舞台とした人間ドラマを軽妙に描くお仕事エンタテインメント。
本好き、書店好き必読!
あなたに「一冊の本」を届けるために、懸命に働く人たちがいる。
『ブックストア・ウォーズ』を改題。

-----感想-----
この作品は以前から気になっていました。
いつだったか書店で平積みになっていたのを見かけ、POPカードに書かれていた手書きコメントに興味を持ちました。
そして先日再び書店の文庫コーナーでこの本を見かけ、今回読んでみることにしました

住みたい街ランキングで度々1位になる人気の街・吉祥寺にある「ペガサス書房」という老舗書店を舞台にした、書店で働く人たちの物語
吉祥寺の駅前に雑居ビルがあって、その三、四、五階にペガサス書房が入っています。
三階が雑誌と文芸書、四階が専門書、五階がコミックと児童書、学習参考書というフロア構成。

物語の中心人物二人、40歳のアラフォー副店長西岡理子と27歳の北村亜紀は仲が悪いです。
まず北村亜紀は冒頭で大手出版社の編集長代理を務める小幡伸光と結婚して小幡亜紀になります。
この結婚披露パーティの会場で、亜紀と理子が大喧嘩。
いきなり修羅場になります
これは冒頭から激しい展開だなという感じで物語は進んでいきました。

書店を舞台にした作品だけあって、本に関する話題が色々と出てきました。
まずは「本屋大賞」のこと。

本屋大賞の運営はボランティアだ。本が売れればそれぞれの書店の利益にはなるが、運営している人間や、投票に参加している書店員にお金が入るわけではない。

投票する人は候補作を全部買って読まなければいけないし、その本も書店員がそれぞれ自腹を切って買うとのこと。
本屋大賞の受賞作は今や芥川賞や直木賞より売れるし話題になりますが、その運営はとても大変なんだなと思いました。
それでも「これは」という本をお客様に手に取ってもらうため、売り場を盛り上げるため、何より自分たち書店員の手でムーブメントを起こしたいという思いから、書店員たちはとても情熱を持っているようです
作中で亜紀が書店に対する情熱を語っていました。

「本屋は本のショールームだもの。POPや飾り付けをして、本が一番魅力的に見えるようにするのが、私たちの仕事なんだわ」
「あたしたちは好きな本だから盛り上げたい。それが売れれば嬉しい。自分の金銭的利害ではなく、本当にそう思って勧めるから、書店員の意見がお客さんに尊重されるんでしょ」


あと、その昔『ハチミツとクローバー』という少女漫画を売り出すために、色々な書店のコミック担当者たちが店舗の枠を超えて「応援団」を作って共同キャンペーンを張ったという話も興味深かったです。
「のちに映画化もされ大ヒットするこの作品の、ブレイクのきっかけを作ったのはこうした書店員たちの努力だったといえるだろう」とあり、なるほどなあと思いました。
小説もコミックも、「これは」という作品は書店員たちの手で掘り出され、やがて大ヒットにつながっていくという例ですね。
今をときめく「本屋大賞」はその最たる例だと思います

それと、「ツイッターをやっている書店員たちが共同戦線を張って盛り上げ、売れた文庫もある。宮下奈都の『スコーレNo.4』がその典型だ」というのも興味深かったです。
ネットで調べてみたら
この本はTwitterで書店員の方々によって結成された「秘密結社」が、大好きな本として全国の書店(その数約100店舗!)で大プッシュしているもの。ハッシュタグは#Schole。
とあり、実際に書店員たちがツイッターで共同戦線を張って盛り上げたことを知りちょっと驚きました
ネット時代ならではの書店員さんたちの奮戦ぶりですね
「書店ガール」は2007年10月刊行の「ブックストア・ウォーズ」を文庫化に当たり改題して大幅に加筆修正とあったので、このツイッターでのエピソードは文庫化で加筆されたものかなと思います。
現在全盛期を迎えているツイッターも当時はまだ認知度が低かったので。

そして、そういったエピソードを織り交ぜつつ、アラフォー副店長の理子とはねっかえりの亜紀が度々喧嘩をしながらも、「ペガサス書房」を盛り上げるために奮戦していきます。
「POPカード」への考え方も理子と亜紀は正反対で、「本の配置の工夫」に重きを置く理子は過度なPOPカードには反対、一方の亜紀はどんどんPOPカードでアピールしていきたいという感じです。
書店でのフェアについても理子は慎重、亜紀はどんどんやりたいという感じでまさに水と油、犬猿の仲です
ただまるで正反対の二人も「書店を良くしたい」という思いは同じ。
危機ともなれば書店のために手を組むこともあります。

平日と休日で並べる本を変えるというのも興味深かったです。
平日訪れるお客さんは地元吉祥寺の人がメインなので、地元の人の嗜好に合わせた本を配置。
一方で休日は「人気の街」ということで沢山の人が訪れるので、そういった人が手に取りやすそうなベストセラーなどを中心にした本の配置に変更。
POPカードも平日は地元の人が落ち着いて本を選べるよう控えめにして、若者がたくさん来る休日はどんどんアピールするよう積極的に配置。
この辺り、売上を伸ばすために日々試行錯誤していました。

そして、終盤で再び亜紀が語る、書店への情熱。
「本屋はちゃんとお店があって、紙の本が並んで、店員とお客様がいるからいいんだわ。本屋は本のショールームだもの。本屋で売っているのが、一番素敵に見えるのだもの」

作中では電子書籍に関する話題も出てきたのですが、これも文庫化に当たって加筆されたものかなと思います。
私も亜紀と同じ心境で、本屋はちゃんとお店があって、紙の本が並んで、店員とお客様がいるから良いんだと思います。
本好きな私としては、やはり本屋で並んでいる新刊本や文庫本のコーナーをじっくりと見て回るのは好きです。
思いもよらぬ本に巡り合った時など胸が高鳴りますしね
この作品の「ペガサス書房」のように、お客さんのことを考えて色々工夫してくれるような書店なら、積極的に足を運んでみたくなるというものです


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