CareNeTV
一発診断
第4回 腹部膨満を訴える寝たきりの80歳男性
Illness Script 7
80歳男性
現病歴:老人保健施設に入所中で寝たきり。数日前からの腹痛・腹部膨満感・食欲不振を訴えて受診。腹部手術の既往なし。
身体所見・検査所見:腹部は膨満し、腸蠕動が低下。
腹部X線:coffee bean sign
一発診断:S状結腸軸捻転
結腸軸捻転
・腸閉塞の原因となる、緊急処置が必要な疾患の1つ
・大腸閉塞の原因として悪性腫瘍・憩室炎の次に多い
・腸捻転の部位はS状結腸が最多(75~80%)
S状結腸軸捻転
危険因子:
高齢男性
長期臥床
慢性便秘
精神神経疾患の合併(パーキンソ ン病、認知症、統合失調症など)
薬剤性(下剤、鎮静薬、抗コリン 作用のある薬剤)
解剖学的特徴:
癒着、巨大結腸、結腸過長症など
症状:
腹痛・腹部膨満・便秘(三徴)
嘔気がみられるが嘔吐は少ない
身体所見:
視診では左下腹部が虚脱
拡張した大腸を触診できることが ある
腸蠕動は亢進・減弱いずれも起こ りうる
腹膜炎を起こしていなければ圧痛 は認めない
腹部X線
・診断率は57~90%
・coffee bean sign
典型的な所見は60%以下(CTを推 奨)
・下記所見のどれかが当てはまれば 診断可能(特異度00%)
1)ループの頂点が左横隔膜の下
2)ループの壁が左下方へ収束
3)ループの壁が下行結腸に重なる
腹部CT
whirl sign:捻転部位で結腸管膜と血管が渦を巻いているように見える
beak sign:捻転し拡張した腸管が鳥のくちばし様に先細りして見える
直腸は虚脱し、ガスを認めない
治療・予後
腹膜刺激症状・血便・壊死を疑う 所見が
(-)→内視鏡敵整復術
(+)→緊急手術
約60%の患者で再発がみられるため、待機的手術が望ましい
S状結腸軸捻転は小児・若年者でも起こりうる
一発セオリー
寝たきりの高齢男性に腹痛・腹部膨満・便秘がみられ、直腸診で便塊を認めず、腹部X線でcoffee bean signがあればS状結腸軸捻転
Illness Script 8
34歳女性
現病歴:4週間ほど前に37℃の発熱・鼻汁・咽頭痛があり、市販の風邪薬を内服。数日で症状は良くなったが、その後から咳が始まり治まらないため受診。
身体所見・検査所見:
咽頭所見 鼻汁が咽頭後壁に流れ落ちている
聴診 異常なし
胸部X線 異常なし
下腿浮腫 なし
胸やけ なし
一発診断
上気道咳嗽症候群(UACS)
慢性咳嗽の原因
1)上気道咳嗽症候群(UACS)
2)咳喘息(気管支喘息)
3)胃食道逆流症(GERD)
4)非喘息性好酸球性気管支炎(NAEB)
5)感冒後咳嗽(PIC)
1)~3)で90%
非喫煙者・ACE阻害薬(-)・
胸部X線異常なし→1)~3)で慢性咳嗽の99.4%
上気道咳嗽症候群(UACS)
・慢性咳嗽の原因で最多41%
・上気道の異常に関連して生じる咳 の総称
・ウイルス感染症やアレルギー性鼻炎などの炎症により咳受容体が刺激されるために咳が出現するといわれているがはっきりわかっていない
原因:
急性鼻咽頭炎、副鼻腔炎、アレル ギー性鼻炎、非アレルギー性鼻炎 (血管運動性鼻炎など)、妊娠性 鼻炎など
症状:
咳嗽、鼻症状(鼻汁・鼻閉)
頻回の咳払い(喉にひっかかり飲 みたくなる痰)
嗄声、鼻汁が喉に落ちてくる感 じ、喉のむずむず感
診察:
咽頭粘膜の敷石状変cobblestone appearance
鼻汁の垂れ込み
喘鳴
喘鳴を来す最も多い原因は上気道 咳嗽症候群
上気道咳嗽症候群には、
・特徴的な症状や所見はない
・咳以外に症状や所見がないこともある20%
・後鼻漏による咳嗽患者の20%は後鼻漏に気づいていないかその存在と咳嗽の関連に気づいていない
・後鼻漏が咳の原因であることを証明できる検査はない
受診時に鼻症状がなくても、鼻症状を伴う感冒後に長引く咳をみたら本疾患が原因と考えて診断的治療を開始するのが妥当
治療:
・鎮咳薬は効果なし
・第1世代の抗ヒスタミン薬+鼻粘膜うっ血改善薬
・アレルギー性鼻炎が原因なら
第1世代の抗ヒスタミン薬+ステロイド点鼻薬
少なくとも1週間(必要があれば4週間)は続ける必要がある
咳嗽の原因
・原因が2つ以上18~62%
・原因が3つ42%
最初に処方した薬の効果が十分でない場合でも中止せずのほかの病態を考慮して薬を追加する
一発セオリー
慢性咳嗽の最も多い原因は上気道咳嗽症候群