88歳女性が急性腎盂腎炎で入院していた。当院の糖尿病外来(外部の先生担当)と整形外科の外来に通院している。それに内科クリニックにも通院していて、当院とそこのクリニックから安定剤・睡眠薬がダブって処方されていた。心気的な方なのだろう。
入院した時は高熱で動けなくなり、当院の救急外来に搬入された。救急当番の外科医が対応して、急性腎盂腎炎の診断で内科入院を依頼された。その時の尿培養・血液培養2セットから大腸菌が検出された(感受性は良好)。
セフトリアキソンで解熱軽快したが、整形外科に通院している両側膝関節の熱感・疼痛が悪化した。膝関節X線では変形性関節症の変化と関節内石灰化があり、感染症をきっかけに偽痛風発作が起きたと判断された。
もともと整形外科外来でNSAIDのセレコッコスが断続的に処方されていたが、関節痛に応じて内服したりしなかったりしていたそうだ。その時は内服していなかったので、セレコックスを再開した。
整形外科外来を受診した時は、毎回ではないがデカドロン静注をしていた。糖尿病で通院しているのは知っているのか知らないのか。 安定剤の処方も含めて、通院している科がそれぞれお互いの診療を把握していないという、よくある話だと思って診ていた。
ところが当方も、もともと血清クレアチニン0.8~0.9mg/dlと年齢を考慮すると腎機能障害があることを、軽視してしまっていた。自覚症状は何もなかったが、その後の腎機能検査で血清クレアチニン1.64mg/dlと上昇して、血清カリウムが7.0と上昇していた。心電図は正常で高カリウム血症の所見はない。
すぐにセレコックスを中止して、血清カリウム抑制剤(カリメート)を開始した。心電図モニターをつけて、血清カリウムを再検したが同じ値で変わらなかった。
最後に行ったのがいつか思い出せないGI療法を行うことにした。10%グルコース500ml+速効型インスリン(ヒューマリンR)10単位を点滴静注すると、血清カリウム5.0まで低下した。
終了直前に血糖60mg/dl台に低下していたが、夕食直前だったので、その後グルコースの点滴をしなかったが、血糖は正常化した。DI療法の後は低血糖になるので、グルコースの点滴を継続とあるのは、確かに重要なことだと改めて思った。
その後はカリメート内服継続で血清カリウム値は正常域になり、腎機能も普段の値に戻ったので、カリメートは漸減中止とした。もうNSAIDは使えないので、今後変形関節症や偽痛風の関節炎が悪化した時はどうするか。整形外科の問題ではあるので、関節内局注をしてもらうかないようだ。
糖尿病はインスリン30ミックスの2回打ちをしていた。経口血糖降下薬の処方はなく、血糖コントロールは良くない。今回はDPP4阻害薬+持効型インスリン1回打ちのBOTに変更して、血糖コントロール良好となった(これだと低血糖の心配がほとんどない)。血糖測定は痛いんでやりたくないといっていた。これまで毎日血糖測定の指示だった。BOTで血糖が安定していれば、毎日血糖測定の必要はないと伝えると喜んでいた。