なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

「MRSA腸炎はあるのか?」

2019年04月03日 | Weblog

 今月初めに89歳の女性が脳梗塞で内科に入院していた。経口摂取が困難で、担当医はCVカテーテルを挿入して高カロリー輸液を行っていた。その後尿路感染症になり、抗菌薬を投与して解熱軽快していた。

 先週また発熱があり、抗菌薬が開始された。その後に下痢が起きて、CDIの検査と便培養を提出していた。高熱ではないが、37~38℃の発熱が続いた。CDは抗原・トキシンがいずれも陰性だった。便培養でMRSAが有意増殖菌として報告された。

 今週のASTカンファランスで、ICN(CNIC)・細菌検査技師から、バンコマイシン点滴静注が行われていて、これはどうですかと相談された。MRSA腸炎が本当だとしても、点滴静注では大腸に移行しない。

 発熱があった時に培養検査を提出しないで抗菌薬が開始されていたので、評価ができない。胸部X線・血液尿検査もなかった。週末の忙しい時で、本来はFever work-upを行うべきだが、人のことを言うのは簡単だが自分も絶対きちんとやっているわけではない。

 ICNの話では下痢をしたのは、便秘が続いて下剤を使用した後らしい。2日続いた下痢はその後消失している。下痢症・腸炎と言うわけではない。バイタルは安定しているので、いったん抗菌薬を中止して、血液培養と尿培養・胸部X線・尿検査をしてから治療を開始することもできそうだ。

 

 入院患者さんで下痢した時は、CDの検査を提出するが、便培養はそもそも提出しないものと認識している。ところで、今回は感染症としての下痢ではなかったようだが、検査技師さんからMRSA腸炎の話が出た。

 岩田健太郎先生が、「MRSA腸炎はあるのか?」を発表している。岩田先生によれば、日本でだけMRSA腸炎というものが報告されたが、ほとんどはクロストリディウム・ディフィシル感染症(CDI)だろうということだ。MRSA腸炎がないとは言えないが、MRSA腸炎と正しく診断されたことはないという(他の原因をきちんと除外した論文がない)。

 今日当院に来ていた感染症の先生に検査技師さんが訊いたところ、「それはMRSA腸炎」といわれたそうだ。もう一人の感染症の先生にも後日こっそり訊いてみよう。

 

 

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