昨日は経口摂取が難しくなった80歳女性にCVカテーテルを挿入した。年末年始から末梢静脈からの点滴が難しくなっていた。
昨年10月末に一過性意識障害で当院内科に入院した(担当は別の先生)。頭部MRIでラクナ梗塞があり、もともと心房細動があったことから脳血栓塞栓症が起きたのだろう(ほかにも細かい血栓が飛んだはず)。
意識が回復してからは、認知症による感情失禁がひどく(大声で泣きわめく)、在宅介護や施設入所にもできず、精神科病院に転院となった。(通常、精神科は認知症でも相当に暴力・暴言がひどくないと受けてくれないから、よほどひどいと思われたのだろう。)
転院翌日に発熱と黒色吐物があり、地域の基幹病院に救急搬送された。消化器内科で胆嚢結石・胆嚢炎と診断された。内視鏡検査をした時には出血源は不明だった(出血性びらん程度だったのだろう)。
胆嚢炎は軽快したものの、認知症・感情失禁で経口摂取はできず、末梢静脈からの点滴をした状態で当院に転院となった。
家族と相談して、点滴継続で嚥下訓練をして、経口摂取が難しければ、経管栄養か高カロリー輸液になると説明した。胃瘻造設は希望しないということだった。
点滴を1本か2本しながら、少し経口摂取できていたが、感情とともに摂取量にはムラがあった。一度誤嚥性肺炎になって、その後嚥下訓練を再開したが、経口摂取は難しくなった。年末年始に入ってからは、末梢静脈からの点滴のみで経過していたが、もう点滴自体も難しくなった。
年末病院に来た時に、ちょうど来ていた夫に話をして、高カロリー輸液の同意書をもらっていた。昨日は、2名の看護師さんが患者さんの両手と首を抑えて、右内頚静脈からCVカテーテルを挿入したが、案外大人しくしてくれた。最近は感情失禁も小声でちょっと言うだけで、不穏というほどではなくなっている。
経口摂取ができれば、精神科病院転院の予定だったが、こうなると転院依頼は療養型病床のある一般病院になる。
経口摂取できなくなった認知症の高齢者に高カロリー輸液を行うのは、どれほどの意味があるかという問題はあるが、定期的に行っている処置になる。
病棟の看護師さんたちは現実的なので、これで転院のあてがついた、不穏の時は(経口摂取を気にしなくていいので)抗精神薬が静注で使用できる、という。まあ同じ病院内でも一般病棟から地域包括ケア病棟に転棟になると、一般病棟としてはこれで終わりという感じになってしまう。
明日別の88歳男性が、高カロリー輸液の状態で療養型病床のある病院に転院する。転院予定だったが直前の感染症発症で2回くらい延期になっていた。担当のソーシャルワーカー(MSW)は、やっとこれで介入が終わりになるとほっとしていた。
患者さんや家族にとっては転院という事実があるだけで、これからまだまだ続いていくのだが。
ちなみにこの前療養型病床のある病院の看護師さんに訊いたところ、経管栄養(1日3回注入)よりも高カロリー輸液の方が助かるそうだ。確かに1日1回交換するだけだし、いつでも点滴も静注もできる(血管確保の手間がいらない)。療養型は看護体制1:20なので、ぎりぎりで大変だという。