なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

AKI・低カリウム血症

2022年10月07日 | Weblog

 火曜日に52歳男性が救急搬入された。3週間前から食べられなくなったという。食べようとすると嘔気が出るが、嘔吐はしていないそうだ。しだいに動くもの大変になって自分で救急要請していた。

 救急隊からの連絡は、「搬入依頼です、ではなく相談なんですが」で始まった。自宅内にアルコール類の缶が多数転がっていて、訳ありと判断したらしい。意識は清明で会話は普通にできるという。来てもらうことにした。

 痩せた男性だった。浮腫はなく、口腔内は乾燥して脱水症なのだろうと思われた。ただ腹部は膨満していて、波動が触れるようだ。腹水が疑われる。

 胸腹部CTで腹水を認めた。肝臓は明らかな凹凸とはいえないが、肝内の濃度が不整で、腫瘍なのかもしれない。胃腸は壁が浮腫性に肥厚していた。明らかな腫瘍は指摘できない。

 非代償性のアルコール性肝硬変と思われる。肝機能障害があり、黄疸を呈していた。ただ問題は腎臓・電解質にあった。

 血清クレアチニン1.64mg/dlは脱水症(腎前性)が疑われるが、血清カリウムが1.3mmol/Lと著明に低下していた。見たことがない値だ。

 心電図モニターで上室性頻拍が出没した。ソルラクト500mlで点滴を開始していたが、塩化カリウム1Aを混合した。そのうち正常洞調律になった。

 カリウムを補充して経過をみるしかない。ソリタT3・500mlにカリウム製剤を混合して点滴を継続した。翌日も血清カリウムは1.2と改善していなかった。

 腎臓内科の若い先生に相談してカリウム製剤内服も追加した。さらにカリウム保持性利尿薬も静注で入れることにした。大学病院から3か月交代で来ている先生だが、腎障害と低カリウム血症が持続・悪化する時は大学病院の方がいいかもしれないといわれた。

 尿カテーテルが挿入できず、水曜日に来ている泌尿器科医に依頼した。尿道口から2~3cmのところに尿道狭窄があり(弁にようになっているといわれた)、尿道ブジーで拡張してスタイレットを使用して尿カテーテルを入れてくれた。

 翌木曜日まで尿量は270ml/日と乏尿だった。血清クレアチニン2.95mg/dlと悪化して、血清カリウムも1.4mmol/Lと低下したままだった。

 前日に相談した腎臓内科医は大学から派遣されている外勤の透析施設に行っていた。常勤の若い腎臓内科医に相談すると(前日は当直明けでいなかった)、この患者さんのことは聞いていましたという。大学病院に送りましょうということになった。

 腎臓内科のその日の当番の先生をお願いします、と大学病院の電話交換に伝えると、教授が出た(ちょっとびっくり)。病状を伝えると、引き受けてもらえることになった。

 

コメント (2)
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