なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

イメグリミンの講演会

2022年11月09日 | Weblog

 火曜日は市医師会の学術講演会があり、座長をしていた。新規経口血糖降下薬のイメグリミン(ツイミーグ)についての講演だった。たぶん医師会講演会の座長をするのはこれが最後になると思う。

 講師は大学病院糖尿病代謝科の若手の先生(助教)で、他県からのWeb講演だった。最初はイメグリミンの作用機序に関する話で、ミトコンドリアへの作用を介するが、これはなかなか複雑でわかりにくい。

 しかし作用機序の話が10分くらいで終わると、その後は臨床試験(TIMES試験)に話になり、自験例での単独あるいは他の糖尿病薬と併用した際の血糖の変化の話になり、具体的でわかりやすかった。

 1名の先生が質問されたが、訊いてみたいことがいっぱいあったので、もっぱら当方が質問してしまった。イミグリミンのイメージがはっきりして個人的にはよかった。

 

 メトホルミンの改良薬ということで、インスリン抵抗性改善作用にインスリン分泌促進作用も付随した薬という印象を持っていた。実際には違っていて、むしろインスリン分泌促進作用にインスリン抵抗性改善作用も付随している薬ということだった。

 イメグリミンのインスリン分泌促進作用はよくわかっているが、インスリン抵抗性改善作用はそれほどわかっていないらしい。

 イメグリミンはDPP4阻害薬+弱いメトホルミン作用、ということだった。消化器症状の発現に注意は必要だが、メトホルミンの代わりに使用するというより、(インスリン抵抗性改善作用の)メトホルミンと併用する薬だった。

 消化器症状の発現の問題があり、併用する時はメトホルミン1000mg/日以下に減量したほうが良いと言われた。もっともメトホルミンを1500mg/日まで使用している例は少なく、ほとんどは500~1000mg/日で使用している。

 高齢者には、DPP4阻害薬以外は使用しがたいが、腎機能に問題なければ、消化器症状に注意は必要だが案外使用しやすいかもしれないという話もあった。

 日本のみでの販売で、そうなると大規模臨床試験は行い難い。心血管疾患の予防効果が証明できないので、欧米のガイドラインに載るのは難しいのかもしれない。

 

(糖尿病治療ガイド2022-2023)

イメグリミン 

 商品名ツイミーグ錠500mg 1回1000mgを1日2回朝夕(4錠分2)                                                   グルコース濃度依存性インスリン分泌促進作用インスリン抵抗性改善作用による血糖降下作用                                作用機序はミトコンドリアへの作用を介すると推定                                      ビグアナイドを作用機序の一部が共通、両者の併用で消化器症状が多い、ビグアナイドとの併用は慎重に           インスリン、SU薬、グリニド薬との併用で低血糖リスクが増加(3剤の減量を検討)                   eGFRが45mL/分/1.73m2未満の腎機能障害者への投与は推奨されない

 

イメグリミンの臨床試験                                                イメグリミンの第3相臨床試験(TIMES試験:Trial of IMegrimin for Efficacy and Safety)

1)TIMES 1試験  イメグリミン単剤投与(24週間)による血糖降下作用

20歳以上の2型糖尿病患者、HbA1c7.0~10.0%(平均年齢62歳、平均BMI25.4kg/m)                  除外基準:腎機能障害(eGFR<45mL/1.73m2)、心不全(NYHA心機能分類Ⅲ度・Ⅳ度)、24週以内に発症した冠・脳血管疾患患者                                                     一次エンドポイント:24週時点のベースラインからの平均HbA1cの変化                        二次エンドポイント:24週時点での「反応者割合」(24週時点でHbA1c7%未満に達した被験者あるいは24週時点でHbA1cがベースラインの値よりも相対的に7%以上減少した被験者)

イメグリミンでベースラインからのHbA1cの変化が24週時点で-0.87%

24週時点でHbA1c7%未満に達した被験者はイメグリミン群で35.8%に対しプラセボ、あるいは24週時点でHbA1cがベースラインの値よりも相対的に7%以上減少した被験者)

イメグリミン投与で、                                               1)HOMA-βは増加(インスリン分泌能の改善効果)                                2)HOMA-IRは有意差は認められなかったが、QUICKIは有意に低下(インスリン抵抗性改善の可能性)

イメグリミンの副作用                                              プラセボ群と同程度、重症の副作用なし、重症低血糖なし

2)TIMES 2試験  既存薬剤へのイメグリミンの上乗せ効果

イメグリミンの上乗せ効果により有意な血糖低下                                   DPP-4阻害薬-0.92%、チアゾリジン薬-0.88%、α-グルコシダーゼ阻害薬-0.85%、グリニド薬-0.70%、メトホルミン-0.67%、SGLT2阻害薬-0.57%、SU薬-0.56%、GLP-1受容体作動薬-0.12%

3)TIMES 3試験 イメグリミンのインスリンへの上乗せ作用

 HbA1cがベースラインから0.60%低下

イメグリミンの血糖降下作用                                            グルコース依存性インスリン分泌促進作用が大きな役割を果たす                           インスリン抵抗性改善作用も一定の効果が期待できる                                 心血管イベントの抑制作用や腎障害の予防などの臓器保護作用を示すことも期待される

 

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