火曜日午前の救急当番を、内科の若い先生の都合で別の日と交代していた。その日朝病院に来た時に、救急の音が聞こえると思っていたら、病院の前を通り過ぎて行った。迎えに行くところなのだろう。
その後、下腹部痛・血便の90歳女性が救急搬入されていた。気になっていた病棟の仕事を一通り行ってから、確認した。
前夜から下腹部痛と血便が続き、動けない状態になって(家族が)救急要請していた。認知症があり、簡単な受け答えしかできないようだ。
市内の医院に、高血圧症・GERDで通院していた。心房細動があるが、抗凝固薬ではなく、抗血小板薬が処方されていた。
37.3℃の発熱があったので、発熱外来扱いになったが、陰性確認後は通常の救急患者として診察・検査が行われた。貧血はなく(Hb12.1g/dl)、BUN35.1・血清クレアチニン1.61と、元々CKDと消化管出血を示唆する値だった。
腹部CT(単純)では横行結腸から直腸まで腸管壁の肥厚と、腸管周囲の毛羽立ちを認めた。たぶん発症の順序は腹痛が最初で、血便が後だと思うので、虚血性腸炎が疑われる。
若い先生は、心房細動があるので、腸間膜動脈閉塞と感染性腸炎も疑っていた。部位的には上腸間膜動脈ではなく、下腸間膜動脈になるので、動脈閉塞はたぶん違うとは思うが否定もできないか。まずは虚血性腸炎疑いで入院となった。
診察記事には「血便」とあり、CT検査依頼には「下血」と記載していたのが気になった。「下血(melena)は通常上部消化管出血でみられる黒色便を、血便(hematochezia)は通常下部消化管で認められる赤色便(鮮血便)を指すものとして用語が定義されている.」から。
他科の先生に下血と言われると、「赤い便ですか黒い便ですか」と確認している。