なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

Dr.岡の感染症プラチナレクチャー~ケアネットまつり

2023年10月30日 | 感染症

 CareNeTVで、ケアネットまつりとして著明な先生方の講義が出ている。岡秀昭先生のレクチャーは何度も見返している。ご著書の「感染症プラチナマニュアル」に沿って日常診療を行っている。

 ただ岡先生は、新型コロナは基本飛沫感染、といわれる。エアロゾル感染は空気感染とは違うともいわれる。

 医療センターの西村秀一先生らは、新型コロナはエアロゾル感染であり、要するに空気感染であるとしている。インフルエンザも他の呼吸器ウイルスも基本的にはエアロゾル感染と考えているようだ。

 西村先生らが主張するように、飛沫と飛沫核は含まれる唾液成分の量が連続的に変化しているだけで、はっきり区別できるわけではない。ダイアモンド・プリンセス号では循環式換気により個室にいても感染した。飛沫感染、飛沫核感染(空気感染)ではなく、すべてエアロゾル感染と表現するのが正しいと思う。

 通常の風邪もインフルエンザも、周囲に感染者がいない(わからない)状態で感染している。新型コロナも現在はそうなっている。無症状感染者がいることも含めて、それはエアロゾル感染したと考えるのが妥当だと思う。

 

Dr.岡の感染症プラチナレクチャー
お祭りVer.発熱診療
2023年9月23日

症例)22歳女性 39.0℃の発熱と倦怠感
(この時点では)診断できない
検査値:白血球6340・好中球93.5%・CRP6.61、コロナ・インフルエンザ抗原検査は陰性
(この時点では)診断できない

PCR診断のゴールドスタンダード
・咽頭よりも鼻咽頭の方がウイルス量が多い
・PCRは鼻咽頭スワブまたは喀痰(エアロゾル対策のもとで採取)
・スワブでの検体採取の方法
 …少し頭部を後方に反らして目を閉じてもらう

PCRについて
・PCRの精度-高い特異性
 理想的な環境では高い感度も持つが、臨床性能は条件により可変的
・偽陽性はまれ
・偽陰性率は5%未満から40%
・繰り返し陰性で、4回以上の検査で初めて陽性となることはまれ

 偽陰性
 ・暴露日 100%
 ・5日目 38%
 ・8日目 20%
 ・21日目 66%
 Ct値の臨床応用は不正確(異なる検査室で標準化されていないため)

PCRの解釈と運用
・PCRが陽性=COVID-19確定
・PCR陽性≠感染力がある
・陰性でも、可能性が高ければ疑いのまま!!

病院や医療施設での感染予防策
COVID-19は
・症状出現前から感染性がある
⇒病院に入る人全てのユニバーサルマスク(全員のマスク着用)実施を推奨
●実際に医療従事者の感染予防効果あり ユニバーサルマスクの導入後⇒医療従事者のCOVID-19陽性者が減った

いずれにしても大切なことは
決して ガードを下ろしてはいけない!ということだ

症例)22歳女性 39℃の発熱と倦怠感 続き
病歴で、コートジボアール共和国から帰国
末梢血塗抹でマラリア原虫2%
診断:熱帯熱マラリア
治療マラロン

感染症のSTSTAE
(Dr.徳田の臨床推論講座)
S:Sick contact 病人との接触
T:Tb contact 結核暴露
S:Sexual History 性行為
T:Travel History 渡航歴
A:Animal contact 動物との接触、生肉
E:Enviromental Exposure 環境暴露(山、川、温泉)

症例)54歳男性 39℃の発熱と頭痛、倦怠感
診断はデング熱
渡航地:インドネシア
暴露歴:蚊
潜伏期:3~5日

症例)41歳男性39℃の発熱と頭痛、倦怠感
診断はレプトスピラ症
渡航地:西表島
暴露歴:河川での遊泳
潜伏期:5~7日

エボラ出血熱
・症状:発熱、頭痛、倦怠感、嘔気、下痢
潜伏期:約7~10日間
流行地:中央・西アフリカ

症状は非特異的
マラリア、ウイルス出血熱(デングも)、腸チフスの症状での区別は難しい
外来での
発熱!発疹!下痢!咳!
必ず渡航歴の確認をしましょう→速やかに感染症専門医へコンサルト

一方で!
・院内発熱の診断は難しくない!
・ただし、原則を守ること

発熱、CRP上昇のみを根拠に
抗菌薬を開始しない、変更しない、追加しない

感染症診療は三角形で考える
感染臓器
微生物
抗菌薬
  CRPは臓器も微生物も教えてくれない!

感染症診療は2段構え
初期治療(経験的治療)標的治療
 De-escalation:敗血症、細菌性髄膜炎、重症肺炎
 Escalation:膀胱炎、副鼻腔炎

頚椎歯突起周囲石灰化、CRP12
→偽痛風
膝関節炎、CRP18
→偽痛風

院内発熱 非感染症
薬剤熱
偽痛風
深部静脈血栓症
無石胆嚢炎
内分泌疾患

薬剤熱 比較三原則
・比較的徐脈
・比較的元気
・比較的低CRP
発疹や好酸球増加があればラッキー

感染症?非感染症?
・CRPだけで判断できない!
・感染巣、微生物を丹念に探すこと
・感染症は原則、悪化か改善のみ!

院内FUOの原因
〇感染症は悪化か改善する
〇引き分け状態なら以下を鑑別する
・膿瘍
・C.difficile感染症
・薬剤熱
・深部静脈血栓症、肺塞栓症

院内発熱 感染症
だいたいこのどれか!
カテーテル血流感染
カテーテル尿路感染
院内肺炎人工呼吸器関連肺炎
手術部位感染
C.difficile感染症
ひとつずつ指先確認!

●カテーテル血流感染症
 局所感染所見は? 3%

カテーテル血流感染の診断基準
①末梢血液培養の少なくとも1セットが陽性
  +
発熱、悪寒戦慄、血圧低下などの所見があり
  +
カテーテル以外に感染のフォーカスがない
②なおかつ以下のうちいずれか陽性
a.カテーテルの定量・半定量培養で有意な菌量あり
b.CV血・末梢血の培養陽性化に有意な時間差あり
c.CV血・末梢血の定量培養で、コロニー数比が5:1より大きい

●カテーテル尿路感染症
無症候性細菌尿かどうか?
・高齢者では20%ほど
・原則、利用しない(例外:妊婦。泌尿器科手術前)
・カテーテル留置があると1日4%細菌尿
 
膿尿、細菌尿あり≠尿路感染症
カテーテル尿路感染症の診断
膿尿、細菌尿あり+除外診断
⇒血液培養を提出
尿培養から大腸菌、血液培養から黄色ブドウ球菌(こちらが本物)

●院内肺炎/VAP
院内肺炎、VAPの診断
・新規の胸部陰影
  +
・以下のうち2つ
 ✓発熱
 ✓WBC増加
 ✓膿性痰増加
この診断基準でおおよそ7割が実際に肺炎!
⇒血液培養を提出

●手術部位感染
深部か、浅部か?それが問題
深部は表面からではわからない

表層切開部:皮膚、皮下組織
深層切開部:筋膜、筋層
臓器体腔:腹腔内感染、新内外膜炎、縦隔洞炎、頭蓋内感染、骨髄炎、副鼻腔炎、乳腺炎、血管の感染など

●CDI
院内下痢
・非感染性7割→薬剤が多い
・感染性3割→ほどんどがCDI
下痢があれば、CDトキシン抗原検査を出す
便培養ではない

院内発熱で大切なこと
・基本に忠実に、型通りにやる
・全身を診察
・除外診断

発熱ワークアップ
 血液培養2セット尿培養胸部X線

症例)72歳男性
脳出血で入院
開頭血腫除去術実施
術後7日目に発熱、頻脈、血圧低下あり
手術部位は問題なし、喀痰増加なし、胸部聴診異常なし
人工呼吸管理下で経鼻経管栄養中
右前腕に末梢ライン留置あり、オムツ
感染症?非感染症?
・術後7日
・急激に悪化
おそらく感染症!

ひとつずつ指先確認
→末梢点滴部位に発赤・腫脹があった

見逃しやすいものを認識して探せ!
・副鼻腔炎
・感染性心内膜炎
・褥瘡、肛門周囲膿瘍
・急性前立腺炎、精巣上体炎
・化膿性椎体炎、化膿性関節炎
・胆管炎、肝膿瘍

感染症診療は三角形で考える
・感染臓器:CRBSI
・微生物:MRCNS、MRSA、GNR、カンジダ
・抗菌薬

血液培養からE.faecalis
尿培養陰性
胸部X線異常なし

カテーテル血流感染症治療
初期治療(経験的治療)
バンコマイシン+セフェピム
  ↓
標的治療
腸球菌E.faecalisに対してアンピシリン
 
Take Home Message
病歴、身体所見をしっかりとる
端折るな日々血液培養
とことん考えろ 
  迷ったら前へ

 

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