9月28日(木)はICD講習会に参加した。地元での開催なので参加証をもらうのには都合がいい。ICD講習会は医療関係の学会に合わせて開催されて、参加自体は無料だが、遠方の学会場まで出かけることになると負担が大きい。
講習会は90分と短く、これまであまり役立ったという印象はない。参加証をもらうためと割り切って参加していた。今回も期待してなかったが、これまでで一番役立つ内容的にも面白い講習会だった。
最初の講演は「結核菌の分子疫学解析」だった。結核菌のゲノム解析(約440万塩基対)を行い、ゲノムの変異蓄積状況を制裁することで、誰から誰に伝播したかを推定できる。
たとえば、病院内で2名の結核患者が出ると、1名から他の1名にうつったと判断されるが、実際はまったく別の患者からその2名がうつったということがわかったりする。
COVID-19のように潜伏期が短いと、伝播の状況(患者発生の時期・場所・感染経路)が通常の疫学調査で推定できる。結核菌のように潜伏期間が長いと伝播の状況を、疫学調査だけでは推定するのが難しい。そこで、ゲノム解析が必要となるということだった。
2つ目の講演は、リケッチア症とCOVID-19の講演だった。演者は研究したリケッチアの話をしたかったらしいが、学会からの要望はCOVID-19だった。
日本に多いリケッチア感染症として、つつが虫病と日本紅斑熱ではどちらが多いかを、抗体保有率で調査したそうだ。すると、つつが虫病や日本紅斑熱よりも、(同時に検査していた)発疹熱の抗体保有率の方が多かったそうだ。発疹熱は日本では見逃されているのではないかという。
つつが虫病は、Orientia tusutusugamushiを保有するダニ(つつが虫)が人を刺咬して感染する。日本紅斑熱はRickettsia japonicaを保有するマダニに刺咬されて感染する。発疹熱はRichettsia typhiを保有するノミに吸血されて感染する。
かなり以前にフィリピンから帰国した20代女性が発熱・発疹で当院に入院した。血液検体を国立感染症研究所に送って、発疹熱と診断された。ミノサイクリンで軽快退院した。
COVID-19について、長崎港に入港したコスタ・アトランチカ号の集団感染にかかわったそうだ。ダイアモンド・プリンセス号の経験から下船して隔離しようとしたが、受け入れ先がなく、船内で経過をみるしかなかった。
スマホを使った「健康管理アプリ」で症状を入力してもらって管理したのが好かったそうだ。1名しか感染しなかったので、大成功だが、ニュース性に乏しくほとんど報道されなかったという。(聞いたことがなかった)
このアプリは病院職員の健康管理(COVID-19罹患の管理)にも使えて、有用ということだ。発熱だけでは拾い上げができず、他の症状(呼吸器症状・全身症状)を入れないと診断できない。
COVID-19は主にエアロゾル感染なので、やはりユニバーサルマスクの使用、適切なN95マスクの使用、換気が大切ということを具体的な事例を上げて解説してもらった。病院内の離れた病室でCOVID-19が発症したが、換気的に風下に当たる病室だった、というのが興味深かった。
お互いサージカルマスクを着けただけでは、十分な感染予防にならないので、換気が重要だという。看護師さんたちの申し送りは、お互いに近すぎるということだった。また問題になっている濃厚接触者が勤務する時だが、N95マスクを着けてもらうといいという。
これまで出たICD講習会で一番役立つ会だった。(参加証明で提出する用紙の感想のところにも記載した)