7月4日(木)に地域の基幹病院消化器内科から53歳男性がリハビリ目的で転院してきた。診療情報提供書の病名は「クワシオルコル」となっていた。
クワシオルコルkwashiorkorは蛋白質の欠乏によって発症する栄養障害だ。この言葉はアフリカなどの発展途上国の小児を連想させる。
5月29日に体動困難で先方の病院に救急搬入されていた。浮腫と大量の腹水貯留があり、低蛋白血症(低アルブミン血症)を認めた。
中学卒業後に実家の仕事の手伝いや、工場勤務・搬送の仕事などをしていた。5年前に母親が亡くなったのを契機に仕事を辞めて自宅(実家)に引きこもるようになった、と記載されている。姉と同居していたが、ほとんど顔を合わせない状態だった。
母親の死亡による精神的ショックというよりは、認知力の低下によってその時期に仕事が務まらなくなってきた可能性がある。
姉の用意した食事も食べていたようだが、主にはカップ麺を食べていた。搬入時は血清蛋白4.50g/dL(血清アルブミン2.14g/dL)だった。Hb7.5g/dLの貧血、血清カリウム2.8の低カリウムもあった。
利尿薬で浮腫・腹水が軽快して体重は18㎏減少した(水が抜けた分)。普通食を食べて、栄養状態も改善していた。亜鉛などの微量元素・葉酸欠乏もあり、内服薬で補充していた。
精神科医が介入して軽度知的障害とされたそうだ。頭部MRIで「両側海馬・前頭葉・頭頂葉の著明な萎縮」が指摘された。「若年性認知症(若年性アルツハイマー)」の可能性も示唆されたが、これまでの知的能力が判定できないため、診断にはいたっていない、とあった。
「自宅退院しても介護できる人がいないため、障害者施設への提案しております。施設入所までは長期の待機期間が想定され、そのまでの間、食事の調整・リハビリをお願いします。」。
といっても施設入所の手続きは何もしていないので、これからになる。地域包括ケア病棟に入院したが、入院期間は60日間以内で、それでは短すぎて難しい。一応姉と二人暮らしではあるので、いったん自宅退院して、一定期間後の再入院も可能性もあると家族には伝えた。
高齢者ではないので、施設入所のためにはそれなりの病名が必要になる。若年性アルツハイマー病と確定していいのだろうか。歩行はできるが、ふらつきが目立ち、見守りを要する。MRIでみると小脳の萎縮もあるようだ。
脳神経内科外来に来てもらっている非常勤の脳神経内科医と相談することにした。
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