11月13日、30日に記載した30歳代前半の女性のその後。(その後といっても当院には来ていない。)
11月12日(火)に地域の基幹病院から当院回復期リハビリ病棟に転院してきた。COVID-19に罹患して先方の病院に入院したが、ARDS(Acute Respiratory Distress Sydrome:急性呼吸窮迫症候群)となり大学病院に搬送された。
先天性の脳外科疾患で手術歴がある。また睡眠時無呼吸症候群でもともと大学病院の呼吸器内科外来に通院していた。夜間はCPAPを装着していて、肺胞低換気症候群で高二酸化炭素血症もある。
ECMOを使用して救命されたが、治療経過で廃用症候群となり、寝たきり状態となった。リハビリ目的で基幹病院に戻ったが、すぐに当院にリハビリ転院の依頼が来た。
当院に転院して来ると、確かに寝たきり状態で、両上下肢は少し挙上できるが、実用にはならない(食事も介助)。週末の11月16日(土)から発熱があり、抗菌薬内服を開始した(末梢血管がほとんで見えない。わずかに手背だけ少しある。)
11月18日(月)に胸部X線(ポータブル)を見ると、肺炎を来していた。そのまま内服(キノロン)でいけるかと思ったが、20日(水)に再度発熱があり、酸素吸入2L/分を要した。なんとか点滴をして抗菌薬点滴静注を行った。
解熱したが、21日(木)夜間から酸素飽和度低下があり、酸素吸入4L/分を要した。22日に基幹病院に連絡して、最初は週明けといわれたが、お願いしてその日に転院搬送としてもらった。
基幹病院到着後に急に酸素飽和度が低下して、無気肺を併発していたそうだ。リハビリ病棟の看護師長さんが基幹病院にいる知り合いの看護師さんに訊くと、到着後に気管挿管・人工呼吸器管理になったという。
先週、当院に転院依頼が来たが、内容をみると、まだ酸素吸入(2L/分)と抗菌薬投与が続いていた。人工呼吸は脱したが、結局気管切開はしていなかった。自力での喀痰排出が困難で、吸引でも十分には排痰できない。
前回は1週間で肺炎が悪化して転送となったが、その時よりも病状はよくない。現状では転院後数日で悪化が危惧される。時間外に緊急で当院で気管挿管を要する可能性があるが、当院だと当直医によってはできない。年齢的に、適切な対応ができなければ医療訴訟になるだろう。
気管切開していれば、自力排出・喀痰吸引もできるし、すぐに人工呼吸器を装着できる。(耳鼻咽喉科医も複数おられるので実施は容易だと思う。)
基幹病院からの転院依頼は、基本的に断らないことになっている。個人の判断ではできないので、基幹病院との協力体制について尽力されている先生(実質的に内科系のリーダー)に相談した。結論としては、この状態では受けられない、ということになった。
(紹介状には、「転院後は当院は終診とします」とあった。急変時は大学病院へ直接搬送するようにということだろう。)