ワインの「澱」は厄介者扱いされることがしばしば。
確かに口中にざらつきを感じたり、見た目にも濁りがあって透明度を失いますので、そう感じてもやむをえません。
しかし、考えてみると味噌汁は濁っていますし、濁り酒も美味しいという経験をしている方も多いわけです。
さて、私は特定のワインや生産者を特別視したり応援したりをすることをよしとしませんが・・・
以前にも書きましたが「友人」(と敢えて書かせていただきます)の井下さんが生み出すワインを3年前から使っています。
徳島阿波池田の「Na-Tan」(ナタン)というワイナリー。
(2020年ヴィンテージまでは徳島の葡萄を大阪まで運んで造っていました)
(2020年ヴィンテージまでは徳島の葡萄を大阪まで運んで造っていました)
その年の夏に収穫の葡萄で造られたワインを翌1月末から2月に出荷のデラウェアのオレンジワイン「Renata」
大量の澱を含んでいます。
出荷したての頃は初々しいフレッシュな味わい。
数か月経つとその澱は旨味へと変わり始め、10か月経った2020年のそれは大人へと変身しています。
そむりえ亭ではグラスワインとしてお出ししますので、最初の一杯と最後の一杯で違いが無いようにデキャンタして澱を取り除いた状態での提供です。
フランスやイタリアなどの銘酒と呼ばれるワインは少なくても数年以上経って「熟成」を感じますが、例えばフランス・ロワールのムスカデ「シュールリー」(澱の上)同様に数か月で変身するのです。
今年、井下さんの地元阿波池田にワイナリーを開所し、自社畑も含め各地からのワインを計17種ほど醸造されると聞いていますが、まずは2種届きました。
これらもまた「少し使って、また使って」と成長を見届けたいと思います。
樋口誠