soramove

読書と旅行と柴犬のブログ
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ヤプログから引っ越してきました。

「漁師と歌姫」自分自身を発見する旅に出る

2009-05-25 00:09:03 | 読書の時間
「漁師と歌姫」★★★☆
又吉栄喜著、潮出出版、333ページ、2100円




「昭和36年の沖縄の小さな漁村、
TVは長老の家にしかなく、
およそ現代の生活とは遠い暮らしの中、
青年はゆっくりと大人になっていく」



舟で沖へ出て鮫とひとりで格闘することで
自分を表現したい主人公と
彼を慕う弟分との永遠に続きそうな
のどかな日々、
それでも確実に少しずつ彼の生活は
変わっていく。

ここに主人公が恋する和子という
女性が登場し、
彼の生活は色づきそして
これまで考えもしなかった自分の将来などを
身近に考えるようになる。

小さな村の共同体、
「世話役」に選ばれた和子は
様々な場面で「詩」を詠み
それはシャーマン的な雰囲気を漂わす。


舞台が50年近く前ということもあり、
文明から遠く、濃密な人間関係、
そして目の前に広がる大きな海原と
背景には山を抱え
その全てのイメージが
あと少しでパーフェクトな物語になったと思うが
荒々しい魂と神聖なものの
対比がもうひとつというか、
和子という世話役にそれ程、
普通ではない「力」を感じられなかったのが
どうも読後感を悪くさせている。

それぞれの選択が「その場所」から
離れてしまうのも、なんとも残念な気がする。

何もかもが「有る」場所を
本の舞台に選んだのにな。

それでもラストまで「どうなるんだろう」と読ませる
展開は巧妙で、まさにラストまで
余韻を楽しみつつ一気読み。

次も気になる作家さんを見つけた。
それが嬉しいことだ。

★100点満点で70点


soramove
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芥川賞「豚の報い」は以前読んだと思うがもうすっかり忘れてしまった。


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