ウラジオストク 貨物摂扱能力7割増
バルト海の拠点 ターミナル数3倍に
【モスクワ=石川陽平】ロシアの東西の貿易港が輸送能力の増強を急いでいる。北西部のバルト海に面したウスチ・ルガ貿易港は2018年までに輸送船が接岸できるターミナル数を6から19に増やし、貨物処理能力で国内最大の港になることを目指す。
極東のウラジオストク貿易港はターミナルの近代化を進め、20年までに貨物取り扱い能力を約7割増やす。資源エネルギーやコンテナの輸送能力を強化し、貿易拡大につなげる考えだ。
ロシア第2の都市サンクトペテルブルグから南西へ約170キロメートル離れたウスチ・ルガ貿易港では11年末に石油製品の積み替えターミナルが稼働し、ガソリンなどを新たに年3000万トン輸出できるようになる。
さらに13年までに年3800万トンの原油を、15年までに600万トンのガスコンデンセートを輸出できるターミナルを完成させる。
同港を建設、運営する「ウスチ・ルガ社」には地元レニングラード州が約20%を出資、残りを国営ロシア鉄道や民間の建設会社などが出資する。
今年1月までの総投資額は900億ルーブル(約2500億円)で、5000ヘクタールの敷地に石炭輸出など6つのターミナルを整備。18年の完成までにさらに655億ルーブルを投じる。
10年には多目的ターミナル「南2」も本格稼働し、トヨタ自動車がロシアに完成車を輸出するための主要港とした。10年の貨物取扱量は1180万トンで、18年には取り扱い能力を年1億8000万トンに大幅に引き上げる目標だ。ウスチールガ社のゴロビズニン副社長は「いまは国内第4位の貿易港だが、10年後は取扱量で最大になる」と述べた。
極東の三大貿易港の一つであるウラジオストク貿易港では、貨物取扱量の4割以上を占めるコンテナの輸送強化ヘターミナルの改修を急ぐ。第14と第15の両ターミナルでは20億ルーブルを投じ、大型クレーンを導入するなど年内に再整備を完了。両ターミナルだけで標準の20日コンテナの取り扱い能力を従来の5倍の年25万個に引き上げる。
同港では第17まであるターミナルのうち、第14と第15も含めて8ターミナルをコンテナ用に改造する予定。さらに第7ターミナルは穀物専用に造り替える。20年までにすべての再整備を終え、10年に700万トンだった貨物取扱量を20年に1200万トンに増やす計画だ。
ロシアの10年の貿易総額は世界景気の回復を背景に前年より約31%増え、8489億ドル(約65兆円)となった。貿易総額の約7割は石油ガスなど鉱物資源が占めた。
同国では港湾インフラの整備が遅れ、バルト諸国の港に貿易の一部を依存してきた。ウスチ・ルガ貿易港の原油と石油製品の輸出ターミナルがフル稼働すれば、ロシアの原油輸出能力が約15%、石油製品では約22%増えることになり、資源に依存する経済の成長に寄与する。
東西の港の増強は地球温暖化を背景とした北極海の輸送ルートの開通もにらんでいるとみられる。一方、ウラジオストク貿易港の経営幹部は8月初め、日本経済新聞など一部記者団に、今回の近代化計画を「12年9月に同市で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の一環だ」と指摘。
シベリア鉄道の終点である特徴を生かして日韓などアジア諸国との貿易を拡大。アジア太平洋地域との経済統合の促進に貢献する考えを示した。