世界の航空業界で、格安航空会社(LCC)の株式時価総額が大手航空を上回る事例が相次いでいる。欧州ではライアンエアー(アイルランド)が時価総額でルフトハンザ(独)を逆転し、アジアではエアアジア(マレーシア)とマレーシア航空(同)の差が2倍近くに達した。割安な運賃で新たな需要を開拓。成長性が評価されている。
アジア最大のLCCエアアジアの株式時価総額は現在約2020億円。1年間で約3割拡大し、マレーシア航空(約1070億円)、タイ航空(約1110億円)を今年夏までに抜いた。
欧州でもライアンエアーの時価総額は約4940億円で、景気悪化への懸念で株価が下落したルフトハンザを9月に上回った。3年前に逆転したエールフランスーKLM(仏蘭)の約3倍に達している。
LCCの事業規模は大手航空に及ばない。2011年4~6月期の売上高はマレーシア航空が822億円なのに対し、エアアジアは258億円。ライアンエアーも1189億円とルフトハンザ(7852億円)を下回る。
ただし収益性という点では、4~6月期にマレーシア航空やタイ航空が営業赤字だったのに対し、エアアジアは50億円強の営業黒字を確保した。
大手航空かりーマン・ショック後の需要低迷に直面するなか、「低運賃を武器に需要を掘り起こしていることが評価されている」三菱UFJモルガン・スタンレー証券の姫野良太シニアアナリスト)。大手に比べ人件費などの固定費負担が小さく、需要減退時でも業績の落ち込みが小さいのも強みだ。
米国では既に格安航空のサウスウエスト(約5270億円)の時価総額が、デルタ(約5110億円)やユナイテッド・コンチネンタル(約5160億円)にほぼ並ぶ状況が定着している。
日本では全日本空輸、日本航空がLCC事業を来年開始する。「業績への影響は未知数で、母体企業の株式の買い材料にならない」(国内投資顧問)との見方が多い。
とはいえ、デフレが長期化する日本で将来、LCCが定着すれば航空業界の収益構造や業界地図が塗り替わる可能性もある。