文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

みちのく祈りと形 縄文と岡本太郎…日経新聞10月9日16面より

2011年10月09日 18時38分05秒 | 日記
文中黒字化は芥川。

みちのくの祈りの美を一気にさかのぼってみる。行きつく先は、やはり縄文の精神世界だった。過去からの呼び声は現代人の心をふるわせずにはおかない。

合掌土偶 

なにをしているのだろう。青森県八戸市で7月に開館した是川縄文館を訪ね、特別室の国宝土偶に見入ったときのことだ。不思議なポーズに目をうばわれる。手を組む人は女。けれど顔は性差を超え、人間ばなれしている。
名にあるとおり、合掌して祈っているのか。あるいは、なにか特別な行いをしているのか。

「はっきりしたことは、わかりません。ポーズからみて出産シーンだという見方があります。日用品ではなく、宗教の道具ではあったでしょうから、やはり祈りの形と考えられます」

小林和彦館長の説明で、霧はいくらか晴れてきた。合掌しているようでも、それはお寺で今する形と同じわけではない。ただ出土状況からすると、祈りの儀式に用いたはず。

竪穴住居の出入り口から反対側の壁ぎわにあり、小さな火をたいた跡もあった。祭壇のような場所に置かれていたようだ。わずかに赤色塗料が残るから、もとは全身真っ赤だっただろう。「宗教にかかわる家だったかもしれません」

この格好でお産をする例があることから、合掌土偶が子孫繁栄を願う偶像だとみる研究者は多い。そもそも土偶という縄文時代の遺物は、そのほとんどが女だ。乳一房を強調した作例も目につくから、生命を宿す神秘が女神の像を生んだという考え方は有力。

くわえて土偶は壊されるものだった。精霊が宿る依り代となり、痛みをやわらげる身代わりにしたり、命の再生を祈って「あの世」へおくったりするため割られたという説もある。

「東北のビーナス(立像土偶)」東北を代表する土偶のひとつ

このページのもうひとつの土偶は 「東北のビーナス」の愛称をもつ。合掌土偶よりも時代は古い。顔はなく、
くぼみに革などでできた仮面をつけたかもしれない。大胆なデフォルメは現代アートを思わせるが、これも謎が謎を呼ぶ祈りの造形である。

不思議な精神世界を映す美は海外でも評価が高い。2年前の秋、ロンドンの大英博物館で開かれた「THE POWER OF DOGU」展には、7万人近くがつめかけた。

企画にかかわった文化庁文化財部の原田昌幸・主任文化財調査官は「現代アートとしても通用する力強さが再発見された」とふりかえる。土偶は見つめる人に、生き方を見直させるパワーがある。

たとえば、縄文人にゴミとか廃棄物とかいう考え方はない。「モノは捨てるのではなく、別の世界へおくるのです。貝塚はよみがえりを祈る神聖な場。その世界観は古代信仰、ひいては古神道にも通じます」(原田氏)

針や箸のような大切な道具、あるいは鯨や熊といった貴重な獲物を供養し、塚をたてる心は日本人の精神世界の古層に残る。縄文の残り火を直感的にそうとらえて、大きな見当違いにはなるまい。
科学への過信がおそろしい災いを生む現代である。

生き物のみならずモノにまで命をみて、よみがえりを祈る縄文の世界観をただ劣っていると断じることができるかどうか。

さて原田氏によると、数千年にわたって土偶がつくられた地域は意外に限られていた。東高西低であり、縄文時代の中期も末になると、中部地方や関東地方でも姿を消す。生き残ったのは東北地方だけだった。

小林和彦氏の指摘もある。「西日本では縄文がストンとなくなるが、北東北では縄文と弥生の境目を線引きするのが難しい。次の時代を象徴する前方後円墳も岩手県南部までしか達しない。異なる北の文化圏が根強くあったのでしょう」

このシリーズでとりあげた青森の棟方志功、岩手の萬鉄五郎はともに「縄文的」と評されることがしばしばたった。わび、さびといった都の美意識からかけはなれた北方の美意識が体感されるからだろう。美術評論家の匠秀夫はこう書いたものだ。

「縄文土器の美感であった“荒々しく”も“力強い”ものへの美意識は地下水のように底流することになった。現代人とはいえ、棟方志功はこの原始の美意識を強くキャッチできるアンテナをもって生れてきたーー」(「棟方志功讃」)

原始と現代を行き来しようと、美のアンテナを縦横にはたらかせた美術家が関東にもいた。岡本太郎である。

 

「Googleの脳みそ」三宅 伸吾著…日経新聞10月9日20面より

2011年10月09日 18時37分16秒 | 日記
日本の閉塞状況を法的に指摘  文中黒字化は芥川。
タイトルだけ見ると、米検索大手グーグルの思考回路を説明した本のようだが、実は日本の閉塞状況を法的な側面から指摘した本である。グーグルを引き合いに出したのは、既存概念にとらわれない自由な発想こそが社会の活力を生むということを、同社を例に訴えたかったからだ。

グーグルは創業13年の新しい会社だが、今や仕事や生活に不可欠なツールとなっている。しかし同社の事業が初めからすべて歓迎されたわけではない。映像共有サイトの「ユーチューブ」やデジタル写真地図サービスの「ストリートビュー」などは、著作権やプライバシー保護の観点から相当、非難を浴びた。

それでもサービスとして定着したのは、社会的な需要があり、不当な画像は削除するなど同社が改善にも努めたからである。日本でも「ウィニー」という情報共有ソフトが作られたが、最初から悪者扱いをしたために、新しい情報サービスが日本には生まれなかったと著者は指摘する。

そう考えると、著作権法や個人情報保護法など日本にはデジタル時代にそぐわない法規制が非常に多い。法令を守ることは重要だが、行き過ぎや誤った法の解釈は経済成長をそぐ要因となりかねない。

本書は前例や既存概念にとらわれて思考停止に陥っている日本人に対し、自分の頭で考えることの大切さを訴える本である。


宇宙開発熱中国が突出 財政難の日米欧を横目に…日経新聞10月9日9面より

2011年10月09日 18時36分14秒 | 日記
…前略。
今回、打ち上げに使った中国の主力ロケット「長征」は米ロなどと比べても遜色のない性能を誇るが、宇宙ステーションの建設と運用には別の技術も必要になる。

位置を正確に合わせて無人でドッキングする技術や、水や空気を浄化・再利用する技術などだ。飛行士の健康管理法や安全対策も不可欠となる。

目標通り20年に完成できれば、ISSに代わり中国が唯一の宇宙ステーション保有国になる可能性もある。沢岡昭・大同大学学長は「中国もそれを意識しているだろう」と指摘する。

「常に中国人が地球の周りを回っているのはインパクトがある。政治的な意味合いも大きい」
…後略。

危機が揺さぶる世界秩序 日本は傍観者にとどまるな…日経新聞10月9日8面より

2011年10月09日 17時45分05秒 | 日記
論説副委員長 実 哲也    文中黒字化は芥川。

「ギリシヤの債務を5割以上は削減しないとどうにもならない」。行天豊雄国際通貨研究所理事長が9月下旬に米国で会った金融関係者、政策当局者の声はほぼ一致していたという。

だが、ギリシヤ危機への欧州の対応はまだそれとはほど遠い。ギリシヤの債務不履行や金融機関の破綻をきっかけとした第2のりーマン・ショックの不安がつきまとう状況が続く。

石油ショックやアジア通貨危機など、世界は戦後何度も経済危機を経験した。それらと大きく異なるのは、危機収拾へ指導力を発揮できる国が見あたらないことだ。本来役割を果たすべき米国も、国内の政治対立や高失業への対応で精いっぱいだ。

「指導的な国の不在が193O年代の世界恐慌につながった」。経済学者のキンドルバーガーの分析は有名だが、同じ状況が起きつつあるのではとの不安が、市場や企業を萎縮させ、一段の経済停滞を招いている。


欧米経済が長期的に停滞すれば、その影響は世界経済だけにとどまらない。政治や経済システムなど世界秩序にも地殻変動をもたらす可能性がある。

米歴史学者のH・ジェームズ・プリンストン大教授は「世界的な経済不安は人々の価値観を大きく揺さぶる」と指摘する。

グローバル化の下で自由な経済活動と繁栄を謳歌(おうか)していた企業や人々が、30年代には一転して国による保護を求めだした。経済ブロックの形成、統制経済がはやりとなる。自由経済体制が絶対崩れないという保証はないと言う。

ウォール街を包囲する若者の所得格差抗議デモや、市場に矛先を向けるギリシヤなど欧州の大規模デモを見れば、不安と不満の鬱積の中で何かが動き出しているようにも感じる。南欧を中心に経済危機から政権崩壊を伴う政治危機への第2幕が始まる可能性もなくはない。

財政・金融政策が行き詰まれば、先進国でも保護主義的な動きが広がりかねない。米上院は人民元の大幅切り上げがなければ中国製品へ高関税を課す法案を可決する勢いだ。気になるのは自由貿易を擁護してきた人でも支持者が出始めたことだ。P・クルーグマン・プリンストン大教授は最近の寄稿で「雇用増が急務の状況を考えれば、ドル安こそ米国の国益にかなう」と法案成立を求めた。

欧米が元気をなくす中で強さを増しているように映るのが高成長を続ける中国だ。欧米のように民主主義のコストを気にせずに、インフラ整備から戦略産業育成まで国主導で素早く動く姿は途上国にとって魅力的なモデルに見えてもおかしくない。

ピュー・リサーチセンターが 「世界の指導的な経済大国はどこか」と聞いた今年の米世論調査によると、中国と答えた人が47%に達し、3年前より17ポイント増えた。米国という回答は31%にとどまった。

ピーターソン国際経済研究所のA・サブラマニアン主任研究員は「人民元は10年以内にドルに代わって基軸通貨になりうる」と予測する。

危機が世界にどんな構造変化をもたらすかはまだ見えない。従来の常識にとらわれるべきでないが、はやりの見方に安易に飛びつくのも危険。何が本物の変化か見極める眼力が必要だ。

ベストセラー『自由市場の終焉(しゅうえん)』で中国など国家資本主義の台頭を描いたI・ブレマー氏も、進取の精神や効率性を欠く中国型の仕組みは長期的には優位性がないと見る。

岩田一政日本経済研究センター理事長は「米国が世界のリーダーの座から降りると見るのは早計。ドルの地位低下の速度も非常に緩やかだろう」と言う。

世界秩序が揺らぐ時代にあって、日本はただの傍観者ではいられない。日本はどんな世界を望むのか、そのためにどんな行動を取るのかが問われる。

加藤隆俊国際金融情報センター理事長は「危機拡大を防ぐ方策について欧米にもっとものを言っていい」と言う。先進国の中で危機の渦中にいないのは日本ぐらい。まずは危機収束に積極的に貢献する必要がある。

開放的な経済体制の維持は日本にとって死活的に重要。多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)の打開へ全力をあげるなど、自由貿易擁護の先頭に立つべきだ。中国の成長は日本にプラスだが、資源確保から知的財産権まで国主導で自国産業保護に突っ走る動きは見過ごせない。

通商ルールにのっとった対応を促すことが肝要だ。統制が幅をきかせ、民主政治が魅力を失う中で、戦争に向かっていった30年代。暗い時代の再来を避けるためにも、民主主義国家としてつらくても必要な政策を前進させる底力を世界に見せていく役割も求められる。

日経新聞10月9日7面より

2011年10月09日 17時33分04秒 | 日記
液晶部材の競争激化どう対応? 事業モデル変え特許取得
日東電工社長 柳楽幸雄氏

文中黒字化は芥川。

日本の液晶産業が苦境に立たされている。世界的な競争激化や供給過剰に加え、歴史的な円高も逆風だ。高い競争力を保ってきた部材メーカも影響は避けられない。液晶の映像表示に不可欠な偏光フィルムで世界シェア首位に立つ日東電工の柳楽幸雄社長に、打開策などを聞いた。

―-日本の液晶関連企業の収益が悪化している。
「国内の液晶パネル工場は1ドル=110円を超えるような時期に計画がつくられた。90円ぐらいまでは耐えられたが70円台は異常。日本でつくるのは非常に厳しい。液晶テレビの値下がりの影響も大きい」

--部材メーカーを取り巻く環境も厳しい。
「これまでは技術開発で製品の付加価値を高めることができた。偏光フィルムも耐久性の向上や視野角を広げることで技術の向上を進めてきた。ただやはり天井はある。今の液晶テレビの映像は十分きれいで、例えばこれ以上偏光フィルムの技術でコントラストを高めても(対価として)お金をいただくのは難しい」 

--韓国勢の追い上げも目立つ。
「大変な脅威だ。ただそれは韓国勢に限った話ではない。インターネットの普及などで情報収集の速度が上がり、分析やシミュレーションの技術も飛躍的に進歩している。技術開発をしても追いつかれる期間が短くなり、ノウハウで差をつけるのが難しくなった」

―-打開策は。
「ずばり事業モデルを変えることだ。例えば当社では偏光フィルムの供給方法を変えた。フィルムを切断
して供給するのではなく、ロール状のまま顧客の工場に持ち込み、ライン上を流れてくる液晶パネルに合わせて切断して貼る。

検査効率が高まり、梱包や輸送の手間、フィルムの廃棄ロスも削減できた。日韓台の主要顧客に採用されている」 

--ライバル企業にまねをされないか。
「必要な特許は押さえた。知的財産戦略は経営レベルで非常に重要になってきている。以前は(特許の)件数などにこだわっていたが、それよりも競合他社に『困った』と思わせる特許にしないと価値がない」 

--スマートフォン(高機能携帯電話)やタブレット端末の普及は追い風だ。
「スマートフォン、タブレット端末にそれぞれ10種類以上のフィルムやテープ材料を供給しているが、その代表がタッチパネルに使う透明導電性フィルムだ。25年前に製品化し収益に貢献するまで時間がかかったが、いまは成長商品。当社は1万3500点の製品を抱えるが、常にこういう“出会い”を待っている」

聞き手から一言

韓国勢追い上げ 新興国開拓必須 2012年3月期の連結売上高は6500億円(前期比2%増)、営業利益は800億円(同6%減)を見込む。利益率は12%と製造業平均を上回る。

「グローバルニッチトップ」戦略を掲げ、製造法など容易にまねのできない特殊なフィルムや工業用テープで高いシェアを維持してきた。

しかし、主力の偏光フィルムでも韓国LG化学が追い上げる。新興国市場の開拓を狙い「日本標準でなくその国にあった製品を供給する」(柳楽社長)という成長戦略の成否も、今後の注目点だ。(生川暁)

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いまだ日本が技術のリーダー
エア・リキード・アジアーパシフィック ドロワイエールCEO

文中黒字化は芥川。

▽…日本は先端技術の研究拠点として強化していく」。工業ガス大手、仏エア・リキードのアジア太平洋地域統括子会社で会長兼最高経営責任者(CEO)を務めるジヤンーマルク・ドロワイエール氏はこう強調する。

液晶パネルなどで世界シェア首位を韓国企業に奪われても「技術のリーダーは日本。他国は基礎技術まではまねできていない」と断言する。

▽…同グループの国別売上高で「中国は数年内に日本を抜く」とも読むが、市場攻略の手はゆるめない。

有望視するのが新産業として期待される燃料電池車。水素供給の技術や体制確立が普及のカギで、「日本の自動車メーカーと協力したい」と意欲を見せていた。

三菱商事など優先交渉権 カタール淡水化プラント…日経新聞10月9日7面より

2011年10月09日 17時14分21秒 | 日記
総工費600億円

中東カタールが計画している同国最大級の海水淡水化プラント建設で、三菱商事などの企業グループが2012年前半の正式受注に向けた優先交渉権を獲得したことが明らかになった。

総工費は約600億円で、中核設備は日立造船が建設する。正式契約に向けて日本政府もカタール当局への働きかけを強める方針で、官民を挙げて海外攻略を狙っている水インフラ受注に弾みをつけたい考えだ。

優先交渉権は9月下旬に締め切られた入札で得た。建設するプラントはカタール政府系発電水道会社(QEWC)の「ラス・アブ・フォンタス2」計画向け。首都ドーハ南方で既存の造水・発電施設に併設。

発電所で生じる熱を利用し海水を蒸発させて淡水にする。1日あたり造水能力は約7千万ガロン(約32万立方メートル)で、15年完成を目指す。

三菱商事が現地当局などとの交渉窓口となり、日立造船が淡水化設備の設計や機器調達、施工を担当。東洋エンジニアリングのタイ関連会社トーヨー・タイも参画する。

ペルシャ湾岸の産油国で主流の蒸発式プラントは、韓国勢などとの価格競争が激化。日本勢による本格的な建設受注は過去5年以上ほとんどない。

経済成長が続くカタールでは工業・生活用水の安定供給が急務。湾岸諸国で約40基の建設実績を持つ日立造船を軸に、技術面で信頼性の高い日系連合へ発注することを内定したもようだ。

今後は正式契約に向け関連企業が担当する業務範囲など詰めの交渉に入ると見られる。経済産業省など日本政府も韓国勢の強力な売り込みに流されないよう、政府間の意思疎通を強める方針だ。

カタールは世界最大の液化天然ガス(LNG)輸出国で、日本の発電用ガスの調達でも重要性が高まっている。日本は社会インフラ分野の協力をテコに関係強化を加速させたい考えで、両国はこのほど都内で開いた閣僚級合同経済委員会の共同声明で、淡水化プロジェクトに日本が積極参加していくことを明記。カタール側も日本企業が先端技術を生かして参画することに期待を表明した。

世界の水ビジネスの市場規模は25年に87兆円と07年の2・4倍に拡大する見込み。水資源が乏しく経済成長が進む中東にあって、最近は排水処理分野で干代田化工建設がサウジアラビアの工業団地向け事業化調査を受注したほか、日本政府も9月にサウジ水電力省と上下水分野の協力で包括的な覚書を交わしたばかり。

今回の造水分野での協力進展で水インフラの商機開拓が進みそうだ。

日経新聞10月9日5面より

2011年10月09日 16時52分32秒 | 日記
米デモ長期化 不満様々 経済格差・高い失業率・福祉予算削減…
ブログでの呼び掛け発端 20代中心、暴力は控える
政治利用の構図見え隠れ

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中国・劉氏の即時釈放求める  文中黒字化は芥川。

【香港=川瀬憲司】
世界の人権団体は、昨年のノーベル平和賞受賞者で獄中にある中国の民主活動家、劉暁波氏の即時釈放を中国政府に求めている。

受賞決定から1年となる8日を前に、アムネスティ・インターナショナルや維権網などがそれぞれ声明を発表。劉暁波氏の妻、劉霞氏の自宅軟禁の即時解除とともに、民主活動家らの「秘密拘束」の合法化につながる中国の刑事訴訟法改正案への反対も表明した。

ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)も昨年の平和賞受賞を支持した各国政府首脳に対し「彼(劉暁波氏)の釈放と、同様な迫害をやめさせるよう圧力をかけるべきだ」とし、中国政府への働きかけを呼び掛けた。

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地下駐車場崩落9人死亡 ■中国 

中国遼寧有人連市で8日、建設中の地下駐車場で天井が崩落し、作業員9人が死亡、4人が負傷した。新華社が伝えた。

また、安撒哲池州市では6日、建設中のビルの18階からエレベーターが落下し、作業□4人が死亡、1人が重傷を負った。(北京=共同)

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ジョブズ氏「追悼ロゴ」評判に  香港の大学生がデザイン

香港の現役人学心がデザインした米アップルのロゴマーク=写真はロイター=が世界中で話題を呼んでいる。

同社のロゴはリンゴの右上にかじった跡のようなくぼみがあるが、そこに5日亡くなったスティーブ・ジョブズ氏の横顔のシルエットをはめ込んだ。「迫悼ロゴ」として評判になりそれを使ったコピー商品も出回っている。

デザインしたのは香港理工人学でビジュアルデザインを専攻する麦朗(ジョナサン・マック、19)さん。ジョブズ氏がアップルの最高経営責任者(CEO)を退いたことに触発され、8月26日に自らのネット上に掲載していた。

米メディアによるとジョブス氏の葬儀は7日に営まれたもよう。全世界で追悼ムードが高まっており、改めて麦さんのロゴが関心を集めている。(香港=川瀬憲司)

けいざい解説 米9兆ドル喪失の重み…日経新聞10月9日3面より

2011年10月09日 16時50分59秒 | 日記
編集委員 太田 康夫

…前略。

住宅の値下がりで、融資の返済予定額が住宅価値を上回る人も多い。銀行に投入された公的資金は不良債権などの処理に充てられ、雇用の創出にはあまり役立たなかった。

…中略。

住宅と合わせると、バブル崩壊で失われた不動産資産の合計額は5年で9兆4000億ドル、邦貨換算で720兆円にのぼる。

日本の地価はほぼ20年下げ続けている。土地資産額はピークの半分を割り、20年で失われた土地資産額は約1300兆円で、それが日本の長期停滞の一因とみられる。5年で720兆円失った米国でも、日本と似たようなことが起きるのではないかとの「日本化」への懸念が強まっている。

…中略。

米国は人口が増えており、少子高齢化で住宅需要が減る日本とは事情が異なる。ただ巨大な富が失われたのは事実で、その悪影響を抑えるため粘り強く金融緩和を続ける必要がある。
米国版「失われた10年」になることを避けるためにも。

日経新聞10月9日3面より

2011年10月09日 16時45分08秒 | 日記
欧州支援が焦点に 14日からG20財務相会議
基金債 日本、追加購入表明へ 赤字削減取り組み点検
欧州問題

…前略。 日米などは欧州に南欧支援の着実な履行を求めると同時に、欧州の取り組みを支援する姿勢を示す。
日本政府は金融安定に協力する立場から、EFSFが資金調達のために発行する債券の追加購入を表明する。一方、中国やインド、ブラジルなど新興国は国際通貨基金(IMF)を通じた欧州支援を探る構えだ。

新資本規制は 予定通り導入

●金融機関
…前略。 市場では、欧州金融不安で新規制導入が延期されるとの見方もくすぶっていたが、FSB関係者は「延期自体が市場の不安を助長しかねない」と判断したもようだ。

また原油や穀物など商品市場の安定に向け、証券監督者国際機構(IOSCO)がまとめた規制強化策もG20会議で了承される見通し。

ここ数年は投資マネーの流入で商品価格が乱高下し、実体経済にも影響を与えていた。規制強化策には大口投資家への買い増し制限、情報開示や監視体制の強化が盛り込まれる。

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模倣品防止 アジアで提案 条約参加呼びかけ 中国・ASEANに

政府は偽ブランド品の規制強化を目指す「模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)」の参加国を広げる取り組みを強める方針だ。政府間協議で中国や東南アジア諸国連合(ASEAN)に参加を呼びかけるほか、税関業務に関する相互連携やノウハウ提供も提案する。

2012年に発効する見通しの同条約の実効性を高めるには、アジア諸国の取り込みが不可欠と判断した。
ACTAは日米両国が中心となって締結交渉を進めてきた条約。今月1日に日本、米国、韓国、オーストラリアなど8力国が署名。2012年中にも発効する見通しだ。

偽ブランド品などの流入を税関で食い止めるため輸入国のみだった差し止め義務を輸出国にまで拡大。DVDの違法複製、海賊版ソフトの利用規制も強化する。ただ、模造品の製造が多いとされる中国はACTAに加わっていない。

政府はまず今月24、25日に神戸市で開く日中実務者協議「日中知的財産権ワーキングーグループ」でACTAへの参加を初めて提案する。知財保護に関する提案には中国側の警戒感が強いため、日本政府はこれまで政府間
協議でACTAを持ち出すことは控えてきた。

アジア太平洋経済協力会議(APEC)ではインドネシアやマレーシアなどASEAN各国に提案する。実務者級の会談だけでなく首脳級の個別会談で提案することでも調整している。

偽ブランド品に関する情報共有や税関で模倣品を見極めるための研修を日本に受け入れることなど、知財保護に向けた協力も合わせて提案する。

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京都議定書、EU延長支持  日本、反対姿勢崩さず 交渉停滞も

…前略。(COP17)を11月下旬にひかえ、日本とEU、途上国の歩み寄りがみられなければ、国際交渉そのものが停滞する可能性がある。

EUは京都議定書の延長の条件として、現在は温暖化ガスの削減を義務付けられていない米国や中国の「新議定書」への参加をあげた。

これに対して日本政府は「新議定書の策定が確約できるなら、今すぐにでも各国が合意すべきだ」との主張を続ける方針だ。

これまでの国際交渉に日本政府関係者が不信感を募らせていたのも確実に新議定書ができる保証がなかったためだ。EU提案には、新議定書の策定に向けた行程表をCOP17の場で議論する方針も盛り込まれている。

これについても日本政府は新議定書の策定を確約するような合意を求める構え。これが定まらなければ京都議定書の延長や、EU提案にある新議定書までの経過措置も受け入れない考えだ。

議員海外視察ラッシュ チェルノブイリやスリーマイルへ…日経新聞10月9日2面より

2011年10月09日 15時52分34秒 | 日記
国会議員の海外視察が相次いでいる。9月末で先の臨時国会が閉会し2011年度第3次補正予算案を審議する次の臨時国会まで余裕ができたためで、今年はチェルノブイリやスリーマイル島など原子力関連の視察が目立つ。

衆院予算委員会は1日から財政危機に陥っているギリシヤなどを訪問。衆院議院運営委員会が13日までウクライナのチェルノブイリなどを視察するほか、参院東日本大震災復興特別委員会は10日から15口まで米国のスリーマイル島に行く。当時の原発事故の状況や対策を調査する予定だ。

ほかにも衆院国土交通委員会がニュージーランドやオーストラリア、インドネシアを回るなど、ちょっとした視察ラッシュの様相。東日本大震災の被災地の復旧・復興の遅れも指摘されているだけに、視察の成果が問われそうだ。

人権安全保障を提案する…日経新聞10月9日2面より

2011年10月09日 15時20分30秒 | 日記
「共産主義か、それとも死か(red or dead)」という英語表現が冷戦時代にあった。韻を踏むためとはいえ、共産主義を「アカ」と呼ぶ激しさが当時の緊張をうかがわせる。

9月下旬に東京で開いた東京ウラジオストク・フォーラムは、冷戦が遠い過去になったと改めて感じさせた。安全保障セッションでロシア側か報告したのが中国、北朝鮮によるオホーツク海、日本海の汚染だったからである。

環境安全保障と呼ばれ。「人間の安全保障(ヒューマンセキュリティー)」の一部だ。もっぱらソ連など東側の軍事力が脅威だった冷戦時と違い、テロや疾病、環境破壊など多様化した脅威への対応を考える。それが人間の安全保障だ。

人間の安全保障学会の結成大会が9月中旬、同志社大学で開かれた。人間の安全保障を掲げた学会は、世界で初めてであり、人権(ヒユーマンライツ)より包括的な「人間の尊厳(ヒユーマンディグニティー)」をめぐる学際的議論がかわされた。

基調講演した高須幸雄前国連大使は、人間の安全保障の重要性を指摘するとともに、国家安全保障(ナショナルセキュリティー)の軽視を戒めた。新しい概念である人間の安全保障に目を向けるあまり、伝統的な安全保障を軽視する傾向があるからだろう。

人間の安全保障には、確かに安全保障の概念を拡散させる危険がある。それを避けるには人間の安全保障の中核に人権安全保障(ヒューマンライツセキュリティー)を据える必要があるように思える。

人間の安全保障が目指すのは、地球上の一人ひとりに、日本国憲法25条にあるような、健康で文化的な最低限度の生活が保障される世界だろう。それには遠い現実がある。

国際人権団体、ヒューマンライツウォッチなどが9月初旬に明治大学で開いた北朝鮮に関する国際会議で政治犯収容所の惨状を聞いた。例えばこんな話だ。

政治犯たちはトウモロコシの種をまくよう命じられる。腹を減らした彼らが種を食べないようにするために当局は、人のふんに混ぜた種を配る。それでも何人かは水で洗って食べてしまい、大腸炎にかかり、血を吐いて死ぬ。

収容所の医師は獣医と聞いた。例え話ではなく、実際に政治犯は人間扱いされない。だから獣医が診察するらしい。21世紀のいま、人間を動物扱いする国が日本のすぐ近くにある。

核兵器をも弄ぶ、あの体制が倒れぬ限り、惨状を終わらせられない、とだれもが直感する。中国があの体制を擁護する政策を転換しない限り、あの体制は倒れないことも多くの人が知っている。

人道的介入であっても、中国の同意なしに、あの国に軍事行動は起こせない。軍事行動は犠牲者を伴う。人権のために人命を犠牲にするのは、本末転倒にも映る。ではどうするか。まだ明確な答えがない。

北朝鮮だけではない。政府がミャンマーと呼び、それに反対する人がビルマと呼ぶ、東南アジアの国もそうだ。中央アジアやアフリカの諸国でも多くの人々が想像を超える苦しみのなかにいる。

最小コストで彼らを人権抑圧から解放するにはどうすればいいか。それを政策にし、中国のような国も受け入れざるを得ない状況をつくる。これが人権安全保障の目標となる。

人権安全保障は、人間の安全保障ほどは美しく響かない。ゆえなく殺される人々の命を救うための戦術的な試みだからである。(特別編集委員 伊奈久喜)

三菱UFJモルガンの人員削減 希望退職に千人応募…朝日新聞10月9日6面より

2011年10月09日 14時44分09秒 | 日記
文中黒字化は芥川。

証券大手の三菱UFJモルガン・スタンレー証券が今月3日から実施した希望退職の募集に対し、全社員の15%前後にあたる千人程度の応募があったことがわかった。

想定以上に多かったため、募集を3日間で打ち切った。
世界的な株安の影響が国内の証券大手の経営に波及してきた。同社関係者によると、退職金に上乗せされる割増金が多いことが応募者が殺到した理由だという。

ただ、応募者全員が辞めると業務に支障がでるため、絞り込む方針。定年退職も含め、全体の社員数(6月末で約6600人)を来年3月までに1割超減らす予定だ。

他の国内の証券大手も社員の削減に動き出している。手数料収入などが落ち込んでおり、コスト削減が急務のためだ。みずほ証券は3日、約300人の希望退職を募ると発表。

定年退職なども含め来年3月までに全体の約1割にあたる約700人を減らす。最大手の野村ホールディングスは欧州を中心に海外で約380人の人員削減をする。(山本知弘)

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超高級車不況知らず? 海外メーカーの新型発表日本で相次ぐ…朝日新聞10月9日6面より
文中黒字化は芥川。

数千万円する超高級車が堅調な売れ行きを続けている。海外メーカー各社は最近、日本で新型車を相次いで発表した。

伊ランボルギーニは、スポーツカー「アヴェンタドール」を発売した。かつての名車「ガウンタック」の流れをくむ同社で最高性能の車で、上に開くドアが特徴。軽量の炭素繊維の車体と700馬力のエンジンで、最高速度は時速350キロ、価格は税込み4100万2500円。

英ロールスロイスは高級セダン「ゴースト」の後部座席を広げた仕様を発売した。前輪と後輪の間隔を17センチ広げ、ゆったり座れる。価格は税込み3495万円。

日本自動車輸入組合によると1~9月のランボルギーニの販売台数は69台で前年同期比44%増、ロールスロイスは63台で同21%増。


日本車 反攻なるか…日経新聞10月9日1面より

2011年10月09日 12時33分47秒 | 日記
「小さく安く」軽、世界へ 大型化の落とし穴

文中黒字化は芥川。

日本の自動車産業が正念場を迎えている。震災後の大減産からは抜け出したが、縮む内需と円高が競争力を奪う。基幹産業として「国内生産死守」の旗は降ろせない。日本を守り世界で戦うための解を求め、自動車各社が反転攻勢に動く。

昨年初め、ダイハツ工業の福塚政広上級執行役員はトップの至上命令に耳を疑った。「コストを3割下げながらリッター30キロメートルを実現せよ」という常識外れの内容。しかも「2年は待てない」。

ダイハツの変身 

それから1年半余り。9月に発売した軽乗用車 「ミライース」の衝撃が広がる。ガソリン車最高の燃費性能を達成し、最低価格は80万円を切った。競合するホンダの伊東孝紳社長は「違う会社になったようだ」とダイハツの変化に驚く。

「ミニトヨタにはならない」。福塚上級執行役員は親会社のトヨタ自動車を教科書としてきたクルマ造りを転換した。ダイハツの研究開発費は年約400億円。トヨタの1割にも満たない。各部門選抜の社員で構成したチームに強い権限を与え、「部門益」の調整に費やしていた時間と労力を極限まで削った。

当たり前だったトヨタグループからの部品購入も見直した。14社の部品メーカーと新規に取引を始め、中小企業が集積する東大阪市には取引拡大のための窓口を置いた。「トヨタ並みの上級仕様品の調達から脱却する」と同社首脳はいう。

7月末、トヨタで生産技術を担当する牟田弘文専務役員がダイハツ本社を訪れた。「トヨタにできないことをなぜできたのか」。トヨタ出身の白水宏典相談役の言葉にじっと耳を傾けた。

「改革の中身を聞いてきてほしい」と牟田専務役員を促したのは豊田章男社長とされる。巨大化・高コスト化したトヨタを変えるヒントを子会社に求めた。

1980年代、低燃費の小型車を引っさげ欧米生産に乗り出した日本勢の効率経営に世界が目を見張った。だが企業規模が拡大し人件費が高くなると、米国勢の後を追うように利幅の厚い大型車の比率が高まった。

改良のたびに大きく、高くなる日本車。ダイハツの白水相談役は「努力せずに収益を上げる手法だった」と切って捨てる。トヨタ1社で年2兆円超の営業利益をあげるほどの大型車シフトは2008年の金融危機で限界にぶつかった。主戦場となった新興国で求められるのは示さく、安く」。実はここにこそ日本車反攻のカギがある。

独VWも執着

09年末のスズキとの提携合意に合わせ、日本で軽に試乗した独フォルクスワーゲン(VW)のマルティン・ヴィンターコーン社長は「こんな小さなクルマを造れるとは。我々もぜひ開発したい」と感嘆した。「大型化より小型化の方がはるかに難しい」が新車開発の常識。9月にスズキが提携解消を申し入れても、同社長は「スズキとはまだ将来がある」と話す。

7月にインドネシアで開かれた自動車ショー。スズキは軽「アルト」の塗装を変えただけのコンセプト車を目玉として展示した。新興国向け戦略車に応用できる技術が軽に詰まっているという自信からだ。

他社から調達した軽を販売してきた日産自動車は三菱自動車と軽の共同開発に乗り出す。開発したプラットホーム(車台)を世界市場開拓に生かす狙いだ。

国内新車販売の3分の1を占める軽。日本でしか通用しない「ガラパゴス規格」とも皮肉られたが、軽で培われたクルマ造りの力に世界が注目する。

日本の乗用車メーカーが共通して持つ技術資産であり、円高下で海外に挑む武器になり得る。ただ、その潜在力を解き放つには金融危機までの成功モデルを否定し、コスト構造を抜本変革する覚悟を迫られる。

レアアース急落 セリウム半値 企業、使用量を削減…日経新聞10月9日1面より

2011年10月09日 12時31分01秒 | 日記
ハイテク製品に不可欠なレアアース(希土類)の価格が急落している。液晶パネルの研磨材に使うセリウムの輸入価格は7月に付けた最高値から約5割下落した。光学ガラスに使うランタンも同約3割安い。

生産シェアで9割を占める中国の生産・輸出規制を背景に軒並み高騰していたが、日本企業を含む需要家が高値を嫌って使用量を大幅に削減。需給の逼迫感が薄らいできた。

レアアースはオーストラリアや北米など中国以外の鉱山開発が進んでおり「セリウムなどが再び最高値を更新する可能性は低い」(専門商社)という。産地が中国南部に限られるジスプロシウムなど一部品目を除いてレアアースは高値修正に向かうとの指摘が出てきた。

中国産セリウムの輸入価格は9月下旬時点で1キロ80ドル前後と7月の最高値のほぼ半値になった。高騰の反動による取引減少で生産者在庫が膨らみ急落につなかった。一部で「東南アジアの輸出業者が1キロ60ドル前後で在庫を放出した」(専門商社)との声もある。

セリウムを研磨材に使うガラス各社は使用済みセリウム研磨材を回収・再利用したり、酸化鉄など代替素材に置き換えたりしてセリウムの使用量を削減してきた。 

ランタンの輸入価格も現在、1キロ110ドル前後と最高値の7月に比べ約40ドル(約3割)下落。光学ガラスメーカーは調達量を減らすと同時に生産効率を高めるなど使用量の削減策を進めている。

それでは、今日の日経1面をどうぞ。最速スパコン「京」輸出へ 資源開発・医療に活用

2011年10月09日 11時30分28秒 | 日記
まずサウジ、豪州も 官民で売り込み   文中黒字化は芥川。

政府は新興・資源国を対象に、計算能力で世界首位のスーパーコンピューター「京(けい)」の輸出に乗り出す。まずサウジアラビアやブラジルなど5力国・地域と交渉を進め、向こう5年間で2000億円の受注獲得を目指す。

高度なシミュレーション技術が必要な資源開発や最先端医療の分野でスパコンの活用を提案。新興・資源国との関係を強め、日本企業の進出やエネルギーの安定確保を狙う。(京は3面「きょうのことば」参照)

経済産業省はまずサウジ、ブラジル、オーストラリア、シンガポール、台湾の5力国・地域を対象に京の売り込みを進める。

スパコンの演算能力を必要とする最先端技術の導入を目指しているうえ、資金力もあると判断した。
枝野幸男経産相の10日のサウジ訪問の機会をとらえ、王立大学での研究などに活用するようサウジに提案する。

スパコンの演算能力を活用できるのは資源開発やバイオ・医療といった分野。例えば深海底での資源の試掘は通常なら巨額の費用がかかるが、人工的に作った揺れの波長をスパコンで分析すれば効率的に資源を探査できる。

新車開発での衝突実験や新薬開発でも、シミュレーションが欠かせない。スパコンを使えば開発の時間を短縮でき、コストを抑えられる。

新興・資源国への京の輸出では、まず政府間で産業・技術の協力協定を締結。京の開発にあたった富士通などの日本企業が現地企業や研究機関と共同でスパコンの活用を検討する。日本からの専門調査団も派遣する。

新興・資源国にはその用途に応じて、富士通が京の技術を使った輸出用スパコンを開発。価格を抑え、技術流出などにも備える。

機器本体に加え、資源開発などのシミュレーションソフトや運営・保守といったシステムも一体で販売する。製品を単品で売却するのではなくシステムとして輸出し、中長期的な収益の確保を目指す。

京をベースにしたスパコンの輸出実績はまだない。政府は2012年度中に第1号の受注を獲得する計画。成長戦略と位置付けるインフラ輸出の一環として官民協力で売り込みを進める。

政府は調査費を補助するほか、受注後は国際協力銀行 (JBIC)の融資や貿易保険などを通じて金融面からも後押しする。新興・資源国にはスパコンを有償提供する見返りに、資源の安定供給や日本企業の海外展開への協力も求める考え。

もともと富士通やNECなど日本製スパコンの国際競争力は高く、1980~90年代には輸出も積極展開していた。

最近では軍事や資源開発を中心に米国製が主流になっているが、京の演算能力が世界首位となったことで日本製の次世代スパコンに対する各国・地域の関心が高まっている。


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被災企業への寄付免税 生産再開支援、月内にも
遊休機械の譲渡促す