演奏家の背景にある歴史浮かぶ
10人のピアニストを聴きくらべて、値ぶみをしようとする本ではない。20世紀を代表するピアニストたちが、歴史に翻弄されながされていく様子を、おいかけている。ピアニストをとおして、20世紀という時代をうかびあがらせる本である。
読了して、全体主義の重みを、考えさせられた。ナチズム、そしてスターリニズムが、演奏家たちの前に大きくのしかかる。その重圧ぶりを、思い知る。
ルービンシュタインは、いやみったらしいホロヴィツをうけいれることができた。しかし、ナチに加担したカラヤンは、生涯ゆるせなかったという。
演奏の歴史に横たわる政治が、せつない。
著者は、偉大なピアニストたちの自伝や回想、そして伝記を数多く読みこんだ。そして、それぞれの記録をたがいにつきあわせつつ、彼らの足どりをほりおこす。あこがれとあなどり、ついたりはなれたりといった逸話を、複眼的にあらわした。どちらか一方の記録にかたよることは、いましめて。
断片的なエピソードが多すぎるというむきも、あろうか。しかし、おかげでそれらを丸のみにする歴史じたいが、強く印象づけられた。
(井上章一)
10人のピアニストを聴きくらべて、値ぶみをしようとする本ではない。20世紀を代表するピアニストたちが、歴史に翻弄されながされていく様子を、おいかけている。ピアニストをとおして、20世紀という時代をうかびあがらせる本である。
読了して、全体主義の重みを、考えさせられた。ナチズム、そしてスターリニズムが、演奏家たちの前に大きくのしかかる。その重圧ぶりを、思い知る。
ルービンシュタインは、いやみったらしいホロヴィツをうけいれることができた。しかし、ナチに加担したカラヤンは、生涯ゆるせなかったという。
演奏の歴史に横たわる政治が、せつない。
著者は、偉大なピアニストたちの自伝や回想、そして伝記を数多く読みこんだ。そして、それぞれの記録をたがいにつきあわせつつ、彼らの足どりをほりおこす。あこがれとあなどり、ついたりはなれたりといった逸話を、複眼的にあらわした。どちらか一方の記録にかたよることは、いましめて。
断片的なエピソードが多すぎるというむきも、あろうか。しかし、おかげでそれらを丸のみにする歴史じたいが、強く印象づけられた。
(井上章一)