大枠では、非常に古典的なタイムトラベル・エフェクト物のテーマを踏襲してて、テイストは『バタフライ・エフェクト』、『オーロラの彼方へ』、『アバウト・タイム』、ドラマ『フリンジ』より2-17話"白いチューリップ"…といった諸作品。 あるいはまた「低予算で抑えた場面描写なのに、感じる題材が深い。余韻に浸れるわ~あ」って意味じゃ、本作同様に日本未公開だった『ザ・マン・フロム・アース』辺りにジ~ンと熱くなった人。
これからレビューする『ザ・ヒストリー・オブ・タイム・トラベル』は、こうした旧作に心惹かれた人なら好むであろう、低予算SFドラマの1本だ。
本作がひときわ画期的なのは、そのタイムエフェクト連鎖な展開の"観せかた"が、上述したような作品群の、どれにも似てないこと。
主要な主人公はリチャ―ド・ペイジという(架空な過去に実在した)物理学者と彼の家族なのだが、彼ら役の俳優は映画の中で直接一度も演技しない。体裁としちゃ🎬この映画、「彼らの人生を振り返る(後世において制作された)ドキュメンタリー番組」という形式を採ってるんである。
なので彼らは、この"番組"のなかでは「記録フィルムやアルバム写真の投影」という形でしか観客の眼に映らず、映画の主要キャストに相当する役者は、この架空番組のなかで証言したり解説する「その道の権威たる科学者役」や、故人らの生前を知る「知人たち役」に扮しているんである。
さらには、番組内の「再現ドラマの彼ら担当役」の俳優まで周到に別途用意してあって^^; イメージの補完的に(いかにも再現ドラマっぽく)演技させる…という念の入りよう。輪をかけて、過去のアメリカ社会の歴史背景(第二次大戦から冷戦にかけて起きた出来事)には、ふんだんに実際の報道記録映像を挿入してくるために 作品中の虚構と(わたしたち観客の棲むユニバースに視えている)現実との区別すらしづらくなっていくような工夫も凝らされてる。(低予算のくせに)こんなにも手の込んだ演出の映画は、ナチョ・ビガロンド監督の『ブラック・ハッカー』以来だ。
さて内容だが、細かいところを記すと『ブラック・ハッカー』みたく全部が解(ホツ)れたようなネタバレになってってしまうので、どの辺がどうオモシロいのか、ごく大ざっぱな筋書きと結末だけに留めて書く。
この、「とあるタイムトラベル研究家の生涯を考察するドキュメンタリー」は最初、主人公リチャ―ド・ペイジが研究に没頭する余り、妻の急な病死(ポリオ感染)に立ち会えなかった悲劇を描いてゆく。
あァ 哀しい定めだね、と思いつつ観てると(番組は彼の死までじゃ終わらず)妻との間に遺された一人息子のエドワード・ペイジも物理学研究を志した、って後日談まで続いてく。さらにオドロくべきはこのエドワード、な、何と❕❔早くも80年代にはタイムマシンの実用化に成功してしまう。
んなアホな
もう、そこからは番組=この映画自体も「架空時間軸のドキュメンタリーSFなんだよな」と、アタマを切り替え、割り切って観続けるしかない^^;ワケだ。
タイムトラベルを可能にした息子エドワードは喜び勇み、過去に飛んじゃあ自らの家族史を(密かに望み続けてた姿に)改変させる。死んだハズの母親が存命することになり、いないハズの弟が生まれてきたりするが、そういう過去への行為が番組内で解説される度、この番組の中でのナレーションや証人らのコメントもその瞬間から、母親が病死してない前提、以前から弟がいた前提に"全部すり替わって"しまう。
ここが従来の鑑賞常識とは違い、新しい。
もはや、番組の題材に過ぎなかったハズの物理学者父子が、後世に作られるこの「科学ドキュメンタリー番組」が明かしてゆく内容の方向をもコロっコロと中途からドタ変しまくっていきやがる。 ンな、無茶苦茶でしょにww もう、そこから先はタイムエフェクト・コースター状態。あげく、ソ連のガガーリンが人類初の月着陸を成し遂げてしまってたり、余りの過去の振れ幅に5分先の展開すら読めなくなってゆく…。
でだ。
そんなにも破天荒な科学ドキュメンタリー番組の結末は果たして、どう終わるのか。そいつだけ先にバラしてしまおう。それすら知りたくないって人は、当記事の閲覧をこの行限りで打ち切ってくれ。
↓注意 以下↓に 〈軽度の〉 ネタバレが記述されてます↓
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さて、実はこの「科学ドキュメンタリー」……番組が終わる時点では「結局は誰ひとり、一度として過去に、タイムマシンを作れなかった」…という衝撃の^^;結論で閉じられる。
おいおい、中盤までの解説じゃ80年代に「一度は完成して、実用化してたタイムマシン」だったでしょに。なぜその事実が、21世紀には消失しちまったんだ❔❔❔ とまァ、その強烈なドンでん返しオチに至るまでの、順を追っての展開が……これこそが実はいちいちオモシロいのだ。
ぶっちゃけ彼ら科学者父子は、なぜ二代に渡り苦労に苦労を重ねて創り出した究極テクノロジーを、あろうことか どこにも最初から無かったかのごとく「タイムマシン完成の痕跡を歴史上から消し去るためのタイムトラベル」に使わざるを得なかったのか❔❔
その理由(わけ)が、涙、涙、また涙。 涙なしには語れない。
この映画が神々しいのは本作が、最後の最後まで観終えて初めて「この結末に納得するための❕ ザ・人間ドキュメンタリー」であり「普通の幸せを願った家族の、知られざる愛のストーリー」だったんだなあ…❕ と微塵の濁りもなくクリアに!!!合点させられるからなんだ。
【了】
日本劇場未公開,本邦未公開,隠れた名作映画
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