すずりんの日記

動物好き&読書好き集まれ~!

小説「ケンちゃんとの思い出」③

2005年03月23日 | 小説・短編、他
 そんなある日、僕は、ケンちゃん家が引越しするって話を聞いたんだ。僕、すごくショックだった。だって、僕は今までケンちゃんを目標にしてきたんだ。ケンちゃんを、自分が産まれた時から見てきたし、これからも、当然そうしようと思ってたんだ。それなのに・・・。
 僕はケンちゃんに会って直接事情を聞こうと思ったんだ。でも、お母さんは、こう言った。
「あんまりケンちゃんを困らせちゃあいけませんよ。」
ってね。お母さんはわかってたんだ。僕がケンちゃんを慕っていることを。そして、僕がケンちゃんに、引越ししないで!なんて無茶なことを言えば、ケンちゃんは必ず僕を子供扱いするだろうってことをね。僕は、お母さんのその言葉で、しっかりと先手を取られたって訳なんだ。
 でも、僕は、どうしても納得がいかなかった。だからなのか、ケンちゃんを避けるようになった。
 引っ越しの前の日、ケンちゃんたちは、お別れの挨拶に、うちに来たんだ。でも、その時も僕は、ケンちゃんに会わずに、部屋にずっと閉じこもってた。ケンちゃんなんか、大っ嫌いだ!僕は、ベッドの上でずっと泣いていた。
 しばらくしてお母さんが来て、
「ケンちゃんが、帰ったわよ。」
って、言った。
「ケンちゃんたちね、今までありがとうございました、って言ってたわよ。・・・あのね、あなたには言ってなかったけど、ケンちゃんね、別居するんですって。」

え?なに?ケンちゃんは、・・・じゃあ、1人でどこに行くっていうの?

「ケンちゃんのお父さん、お母さんの住所は聞いておいたわ。あとで下に降りてらっしゃい。おやつも用意しておくから。」

「ケンちゃんは?!」
僕は、顔を上げて、思わず叫んだんだ。

「ケンちゃんの住所はね、あなたには知らせないでください、って・・・。」

ケンちゃんは・・・、また、僕を裏切ったんだ・・・。


(つづく)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする