すずりんの日記

動物好き&読書好き集まれ~!

小説「ケンちゃんとの思い出」④終

2005年03月24日 | 小説・短編、他
 次の日僕は、ケンちゃんが一足先に出て行くっていうお母さんの声で、玄関に出て行った。
 
 悲しいくらいに晴れ渡った空だった。
 
 ケンちゃんは、ケンちゃんのお父さんに車で送ってもらうようだった。僕は、車に乗り込んだケンちゃんを見て、思わず叫んだんだ。

「ケンちゃん!どうして行っちゃうの!僕はケンちゃんのことをずっと好きだったのに!ねぇ!!ケンちゃん!!なんとか言ってよ!!」
ケンちゃんは、こっちを向かなかった。涙がぽろぽろと、僕の頬を流れて落ちた。
「ねぇ!ねぇってばぁ!!」

車は、なんのためらいも無く、僕のケンちゃんを、どこかに連れて行った。

 誰かが、僕の頭を撫でていた。ケンちゃんのお母さんだった。
「ごめんね。・・・でも、しょうがないのよ。引越し先のマンションでは、ペットは飼っちゃいけないのよ。」

僕のお母さんが、僕の涙を拭きながら言った。
「捨てるのもかわいそうだし、やっぱり保健所でちゃんと処分してもらうしかありませんものね。」
「どんなにかわいくっても、所詮は、犬だったんですよ。」


 僕は、――― その時聞いた悪魔の囁きを、今も忘れることはできない。
 そして、ケンちゃん、君は、今も僕の誇りだよ・・・。


(おわり)

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