おっちーの鉛筆カミカミ

演劇モノづくり大好きおっちーのブログです
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GOING TO THE MOON

2006年09月01日 00時16分36秒 | 戯曲・つれづれ
 昨日の予告どおり、本日は超短編戯曲第2弾。「GOING TO THE MOON」です。



  『GOING TO THE MOON』


   そこには兄、弟一人ずつの兄弟がいる。
   そこはよく晴れた初夏の浜辺。
   兄弟の他には誰もいない。
   兄弟は最初座って話している。

兄 じゃあさ、船を作るんだよ、俺達で。
弟 うん!
兄 あの辺に生えてる木を切って、こうやって組み立てて、
弟 うん、
兄 組み立てるのはロープを使うんだ。それで水が漏れないように、樹液を塗って固める。
弟 すごい!
兄 甲板に、何十日も過ごせるように小屋を作るんだ。
弟 うんうん、
兄 それで、海の向こうを目指す。
弟 ・・・海の向こう?
兄 そうだ! あの向こう側には、きっと俺達の知らない世界がある。きっといろんなものがあるよ! そして、いろんな人達がいる。お前だって行ってみたいって思うだろう?
弟 僕たちの知らない・・・世界があるの?
兄 そうだよ!
弟 知らない人達がたくさんいるの?
兄 そう、会ってみたいだろう?
弟 ・・・僕は・・・行きたくないや。
兄 ・・・
弟 ・・・
兄 ・・・なんでだよ? 楽しいぜ、きっと?
弟 ・・・
語り 弟は黙ったまま。その話は終わり。けれど兄はしばらくして旅に出る。自分の夢を叶えるため。両親の夢を叶えるため。

   残された弟の姿。

語り そして半年後。兄は弟の前に帰ってきた。兄は船の材料のある場所を見つけた。兄は木材の組み方を学んだ。兄は食料の保存の仕方を学んだ。あとは実行に移すだけだった。兄には自信があった。長い夢は実現する。

   弟は戻った兄の正面に立つ。

弟 今までどこに行ってたのさ? 始めるって・・・何を始めるの? 兄さん!・・・よく聞いて。母さんが死んだんだ。それにいろんな事があった。・・・兄さんは今まで何してたの? とにかく中に入ってよ。父さんの具合も良くないんだ。兄さんに手伝って欲しい。

   弟は兄を促して奥へ行く。

語り それは十七年前。一艘のボートがこの島に流れ着いた。そのボートには、二人の男女が乗っていた。彼らはこの島で、いつか自分たちのいた場所へ帰ることを夢に、生き延びねばならなかった。

   兄弟の後ろ姿。

兄 ・・・母さんは?
語り 兄は、その過去を両親から聞いていた。
弟 いつか教えて欲しい、兄さんがなぜ家を出たのか。
語り 少年だった弟は、その事を知らされていなかった。
弟 ・・・・・・
兄 ・・・大変だったな。

   二人の姿が見えなくなる。

                      了