SCINE.3 "HISTORY DIARY"
耕平、由里、及川真二の三人が、それぞれに、入場してくる。
真二は、例の本を持っている。
四人は移動し、その間にまもりは、真二から本を受け取る。
・・・四人はいま、舞台を囲むように立っている。
結果、舞台の中央には、何もない不自然な空間が出来上がる。
そこには、膨大な量の "event" が、時間と共に積み重なっているのである。
そして、そこから、この芝居は始まる。
まもりを除いた三人が動き始める。
(まもりは舞台奥・一番端のところに立ったままで動かない)
伸びをしたり、歩きながら本を読んだり、それぞれ勝手な行動をとっている。
しかし、その動きの「リズム」は、皆、等しい。
そしてまた、彼らの移動する範囲は、舞台の中央部を決して侵さない。
その中で、由里は一冊の本に目を通していた。
そして、ある一節に目をとめる。
舞台奥に立っていたまもりが実際に本を開き、その内容を伝える。
まもり「1963年、11月22日、アメリカ合衆国大統領、ジョン・F・ケネディーが暗殺される」
由里 「・・・私の生まれる14年前の出来事だ。画面には、飛び散った夫の頭部をかき集めようとする夫人の映像が、繰り返し流れている。・・・当時12歳の私は、気分が悪くなってテレビの前を立った」
台詞を終えると、由里は本を閉じる。
するとその後ろの方にいた耕平が、本の頁を開く動作をする。
まもり「文永11年10月、元・高麗の軍勢を乗せた大船団が博多湾に上陸。ときの鎌倉幕府・朝廷軍はこれに対抗するが、見慣れない戦法をとる元軍に大苦戦を強いられる」
耕平 「・・しかし、二度に渡る襲来のたびに暴風雨が元軍を襲い、大軍は船と共に海に沈んだ。・・・つまり、もしその暴風雨が一度でも来なければ、日本はいま中国になっているワケだ。・・・日本史ってもしかしたら結構面白いのかも知れない・・・そのときは、ちょこっとだけそう思った」
耕平は本を閉じ、今度は真二が頁を開ける。
まもり「1939年9月、ヒトラー率いるドイツ軍は、ポーランドへ突如侵入を開始。これを受け、イギリス・フランスはドイツに対する宣戦を布告。ここに第二次世界大戦が勃発する」
真二 「・・・板書された文字をノートに写しながら、中学生の僕はひとり密かに興奮を覚えていた。全世界を相手に喧嘩をふっかけた人間が、現実に存在した。・・・その事実は僕の中のロマンチズムを刺激し、僕を虚無的な現実から、甘美な世界へといざなった」
真二は本を閉じる。
まもりを除いた三人は、元のように舞台の周りの方で適当な行動をとりながら歩き回る。
まもり「・・1998年、8月。」
まもりの台詞と同時に、舞台の全面は「現在」に戻る。
(=舞台の中央部も演技エリアに戻る)
耕平 「・・・このままじゃ、ほんとに洒落になんねー・・・お前もうあと一ヶ月で、取り返しのつかないことになるんだぞ!」
耕平、退場。
由里 「・・・あたしね、あなたのそういうとこがキライなの・・・(押し詰めたような声のイメージで)大ッ嫌い・・・!」
続いて由里、退場。
まもり「・・・1998年、8月。・・・太平洋・南極の二地点に、大質量隕石が落下。それに前後して、異常気象・天変地異が世界各地で発生。・・・半年後・・・地球上の人口は、約三分の一に激減する・・・」
真二 「・・・・・そうだよ、・・これが、最善の選択だったんだ」
真二とまもり、退場。
耕平、由里、及川真二の三人が、それぞれに、入場してくる。
真二は、例の本を持っている。
四人は移動し、その間にまもりは、真二から本を受け取る。
・・・四人はいま、舞台を囲むように立っている。
結果、舞台の中央には、何もない不自然な空間が出来上がる。
そこには、膨大な量の "event" が、時間と共に積み重なっているのである。
そして、そこから、この芝居は始まる。
まもりを除いた三人が動き始める。
(まもりは舞台奥・一番端のところに立ったままで動かない)
伸びをしたり、歩きながら本を読んだり、それぞれ勝手な行動をとっている。
しかし、その動きの「リズム」は、皆、等しい。
そしてまた、彼らの移動する範囲は、舞台の中央部を決して侵さない。
その中で、由里は一冊の本に目を通していた。
そして、ある一節に目をとめる。
舞台奥に立っていたまもりが実際に本を開き、その内容を伝える。
まもり「1963年、11月22日、アメリカ合衆国大統領、ジョン・F・ケネディーが暗殺される」
由里 「・・・私の生まれる14年前の出来事だ。画面には、飛び散った夫の頭部をかき集めようとする夫人の映像が、繰り返し流れている。・・・当時12歳の私は、気分が悪くなってテレビの前を立った」
台詞を終えると、由里は本を閉じる。
するとその後ろの方にいた耕平が、本の頁を開く動作をする。
まもり「文永11年10月、元・高麗の軍勢を乗せた大船団が博多湾に上陸。ときの鎌倉幕府・朝廷軍はこれに対抗するが、見慣れない戦法をとる元軍に大苦戦を強いられる」
耕平 「・・しかし、二度に渡る襲来のたびに暴風雨が元軍を襲い、大軍は船と共に海に沈んだ。・・・つまり、もしその暴風雨が一度でも来なければ、日本はいま中国になっているワケだ。・・・日本史ってもしかしたら結構面白いのかも知れない・・・そのときは、ちょこっとだけそう思った」
耕平は本を閉じ、今度は真二が頁を開ける。
まもり「1939年9月、ヒトラー率いるドイツ軍は、ポーランドへ突如侵入を開始。これを受け、イギリス・フランスはドイツに対する宣戦を布告。ここに第二次世界大戦が勃発する」
真二 「・・・板書された文字をノートに写しながら、中学生の僕はひとり密かに興奮を覚えていた。全世界を相手に喧嘩をふっかけた人間が、現実に存在した。・・・その事実は僕の中のロマンチズムを刺激し、僕を虚無的な現実から、甘美な世界へといざなった」
真二は本を閉じる。
まもりを除いた三人は、元のように舞台の周りの方で適当な行動をとりながら歩き回る。
まもり「・・1998年、8月。」
まもりの台詞と同時に、舞台の全面は「現在」に戻る。
(=舞台の中央部も演技エリアに戻る)
耕平 「・・・このままじゃ、ほんとに洒落になんねー・・・お前もうあと一ヶ月で、取り返しのつかないことになるんだぞ!」
耕平、退場。
由里 「・・・あたしね、あなたのそういうとこがキライなの・・・(押し詰めたような声のイメージで)大ッ嫌い・・・!」
続いて由里、退場。
まもり「・・・1998年、8月。・・・太平洋・南極の二地点に、大質量隕石が落下。それに前後して、異常気象・天変地異が世界各地で発生。・・・半年後・・・地球上の人口は、約三分の一に激減する・・・」
真二 「・・・・・そうだよ、・・これが、最善の選択だったんだ」
真二とまもり、退場。