○村はずれにある森の入り口
キロ「ここです……もうしばらく経つと始まるかな」
ライタ「わくわくしてきたあーっ!」
ボイスカ「………」
バルシア「……それにしても、綺麗な夕日ねえ……」
キロ「……あっ、そろそろです!」
キロのセリフが終わらない内に、あたりに突風が吹き上げた。
バルシア「わっ……なにこの風……」
キロ「西の山から吹き下ろす突風です。いつもこの時期、この時間に
なると吹くんです。そして険しい山から吹きつけられるこの突風
は、(以下略^^)」
キロ「……こんな事が起こるんです」
いつの間にかライタ達の周りにも、見物人が現れていた。
見物人1「綺麗だなあ……」
見物人2「ほんとに綺麗……」
見物人3「……うっとりしちゃう」
見物人4「そんな……君の方が綺麗さ」
ライタ「こんなとこで女口説くなあーっ!」
見物人4「こんな美しいシチュエーションでいいムードにならない方
がおかしい」
ライタ「はいはい……あなたは退場して下さい」
不平不満の叫びの中、見物人4、退場。
バルシア「それにしてもほんとに綺麗ね」
ボイスカ「なるほどな……これが『太陽の降る村』の正体とは……ラ
イタのやつはどう考えてるかな?」
ライタ「綺麗ですよ……とても綺麗だけど、おれの期待してたのとは
違うっ!」
キロ「ライタさん、何をお探しだったんですか?」
ライタ「それはまだ言えないっ! だけどこれは俺が求めていたもの
とは違うっ!」
キロ「そうですか。それは残念です」
バルシア「ライタ君、ライタ君が求めていたものとは違うかも知れな
いけれど、こんな綺麗なものはめったにお目にかかれないよ。
エンシェントドラゴンの私でさえ感動してるんだから。だか
ら、目に焼き付けておこうね」
ライタ「バルシアさん…… 分かりました。一生の想い出に、目に焼
き付けておこうと思います」
皆、『太陽の降る』さまに、しばし見入る。
しばらくして、
ライタ「あぁ……夕日が沈んでゆく……」
バルシア「風も止んできたみたいだし、そろそろお開きかな」
キロ「そうですね。家に帰りますか」
ボイスカ「おじいさんの様子、気になるの」
キロ「そうですね。そろそろ起きてる頃かも知れない」
○夜・キロの家
ライタ達が帰ると、家のランタンがついていた。
キロ「あっ、おじいちゃん、やっぱり起きてたんだ」
家の中に入ると、いいにおいがライタ達の鼻腔をくすぐった。
どうやら、夕食の支度が整っているようだった。
キロ「おじいちゃん?」
キロの祖父「やあキロ、お帰り」
キロ「何やってるのおじいちゃん! 食事なんて私が作るって!」
キロの祖父「いやぁ、目が覚めたら身体に力がみなぎっての。何かせ
ずにはおらなんだ」
キロ「それにしたって……」
バルシア「……あっ、ちゃんと人数分作ってありますね。私たちのこ
と、知っていたんですか?」
キロの祖父「話し声で、お客さんが三人来ていたのは知っていたよ」
ライタ「キロちゃん、有り難くごちそうになろうぜ」
キロ「……まあ……そうね……おじいちゃん、もう病気じゃないんだ
しね……そう目くじら立てることもないか…… でもおじいちゃ
ん、まだ治りたてなんだから、くれぐれも無理はしないでね」
キロの祖父「分かった。肝に銘じておくよ」
それぞれ食卓に着く。
ライタ「それじゃあ……いっただっきまーす!」
バルシア「……あら美味しい」
ボイスカ「おじいさん、いい腕ですな」
キロの祖父「な~に、昔取ったきねづかですじゃ」
キロ「おじいちゃん、昔はプロのコックだったこともあるのよ」
ライタ「錠前開けの腕もプロ級で、料理の腕もプロって……おじいさ
ん、昔はどんな人だったんだ?」
キロの祖父「昔の話はしだすと長くなりますじゃ」
おじいさんに向かって、キロの表情が急に真剣になる。
キロ「……おじいちゃん、相談があるの」
キロの祖父「ああ、いいよ。行っておいで」
キロ「えっ?」
キロの祖父「話は昨日の朝に聞いた。この方々の旅に同行するんじゃ
ろう? 守護霊からの御神託じゃあ仕方あるまい。わしの
ことは心配せずに、行っておいで」
キロ「おじいちゃん……」
キロは涙ぐんでいる。
キロ「でもおじいちゃん、本当に大丈夫? もう元気? 私がいなく
なっても……大丈夫かなあ?」
キロの祖父「大丈夫じゃよ。あの薬の効き目はお前が一番よく知って
おろう。薬のおかげで、今はピンピンじゃ」
キロ「そっか……分かった。もう心配しない。でも明日一日は一緒に
いさせて? 本当に治ったのか確かめたいの。皆さん、勝手を言
って申し訳ありません。出発が遅れてしまいますけど、大丈夫で
しょうか」
ボイスカ「わしは問題ないがの」
ライタ「俺も」
バルシア「私も大丈夫。それよりもっと……一週間くらい……おじい
さんの側にいてもいいのよ。それくらい待てるわよねえ、ラ
イタ君?」
ライタ「えっ、バルシアさんがそう言うなら」
キロ「そこまで甘えるわけにはいきません。でも……ちょっと甘えて、
三日間に延ばしてもいいですか? やっぱりちょっと名残惜しい
んで」
バルシア「いいわよ。ねっ?」
ライタ「あっ、ああ」
ボイスカ「わしも異存はない」
キロ「……皆さんすいません。ご厚意に甘えてしまいます。……せめ
て食事だけでも、楽しんでください。元プロとその孫が皆さんを
おもてなしします」
ボイスカ「それでは楽しませて頂こうかな」
バルシア「わぁー、楽しみ」
そしてその夜は更けていき、
あっという間に時は流れ、
それから四日目の朝になった。
○キロの家・前
キロ「じゃあおじいちゃん元気でね。歳なんだから無理しないでね。
それから……」
キロの祖父「いいから。わしのことは心配せんで、行っておいで。そ
して自分の役目を終えたら、帰っておいで。それまで待っ
ているから」
キロ「おじいちゃん!」
キロは祖父に抱きついた。
バルシア「……キロちゃん、しつこいようだけど、無理しなくていい
んだよ? このままおじいさんと幸せに暮らした方が、キロ
ちゃんにとってはいいのかも知れないよ?」
キロ「……いえ、大丈夫です。心配には及びません。決めたことです
から。最初っから迷いはありません」
ボイスカ「そうか……ならそろそろ出発するぞ」
キロ「はいっ」
四人になったパーティーは、再び旅に出発した。
○ファーネスの村の外れ
バルシア「これで村とも長い間お別れだね。思い残すことはない?」
キロ「はい。三日の間に友達にも旅立つことを伝えたし、思い残すこ
とはありません」
ライタ「じゃあこれから東へ向かおうーっ!」
○ファーネスの村~東への街道
キロ「そう言えばこの旅って、何か目的があってしてるんですか?
ライタさんの秘密の理由を除いて」
ライタ「俺の幼なじみ……ルルゥって女の子を捜してるんだ。四年前
にアイグラントの奴らに連れさらわれたんだ」
キロ「へ~っ。ルルゥさん、早く見付かるといいですね」
ライタ「キロちゃん嬉しいことを言ってくれるね~っ! 男嫌いって
言ってたけど、だいぶ俺にも慣れてきてくれたね」
と言って、キロの肩にポンと手を置くライタ。
キロ「キャ~~~ッ!」
キロはライタの手を捕まえてそのまま前方に投げ飛ばした。
ライタ「うわっ!」
キロ「あ……」
バルシア「ライタ君、ちょっと大丈夫?」
ボイスカ「怪我はないか? ライタ」
ライタ「なんとか大丈夫だけど……いきなり投げ飛ばすことないでし
ょ、キロちゃん」
キロ「……ごめんなさい。まだ男の人に触られると、身体が拒否反応
を起こしちゃうみたいです……」
ライタ「……そうか。前途多難だなぁーっ!」
これで、『SUKYSH CLOUD~太陽の降る村~』は、完結になります。
最終回ですが、少しだけ、太陽が降る仕組みについての部分だけ、カットしてあります。
ごめんなさいです。ご了承ください。
でも、勘のいい人は、見当ついてるかな?
ではではこれから、この脚本を元に、舞台用の戯曲を書き起こし始めますよう~~
応援よろしくです!!
ではでは~
P.S. ちなみにこれから、母の3回忌法要と、お墓が完成したので、その納骨式に行ってきます。では~
キロ「ここです……もうしばらく経つと始まるかな」
ライタ「わくわくしてきたあーっ!」
ボイスカ「………」
バルシア「……それにしても、綺麗な夕日ねえ……」
キロ「……あっ、そろそろです!」
キロのセリフが終わらない内に、あたりに突風が吹き上げた。
バルシア「わっ……なにこの風……」
キロ「西の山から吹き下ろす突風です。いつもこの時期、この時間に
なると吹くんです。そして険しい山から吹きつけられるこの突風
は、(以下略^^)」
キロ「……こんな事が起こるんです」
いつの間にかライタ達の周りにも、見物人が現れていた。
見物人1「綺麗だなあ……」
見物人2「ほんとに綺麗……」
見物人3「……うっとりしちゃう」
見物人4「そんな……君の方が綺麗さ」
ライタ「こんなとこで女口説くなあーっ!」
見物人4「こんな美しいシチュエーションでいいムードにならない方
がおかしい」
ライタ「はいはい……あなたは退場して下さい」
不平不満の叫びの中、見物人4、退場。
バルシア「それにしてもほんとに綺麗ね」
ボイスカ「なるほどな……これが『太陽の降る村』の正体とは……ラ
イタのやつはどう考えてるかな?」
ライタ「綺麗ですよ……とても綺麗だけど、おれの期待してたのとは
違うっ!」
キロ「ライタさん、何をお探しだったんですか?」
ライタ「それはまだ言えないっ! だけどこれは俺が求めていたもの
とは違うっ!」
キロ「そうですか。それは残念です」
バルシア「ライタ君、ライタ君が求めていたものとは違うかも知れな
いけれど、こんな綺麗なものはめったにお目にかかれないよ。
エンシェントドラゴンの私でさえ感動してるんだから。だか
ら、目に焼き付けておこうね」
ライタ「バルシアさん…… 分かりました。一生の想い出に、目に焼
き付けておこうと思います」
皆、『太陽の降る』さまに、しばし見入る。
しばらくして、
ライタ「あぁ……夕日が沈んでゆく……」
バルシア「風も止んできたみたいだし、そろそろお開きかな」
キロ「そうですね。家に帰りますか」
ボイスカ「おじいさんの様子、気になるの」
キロ「そうですね。そろそろ起きてる頃かも知れない」
○夜・キロの家
ライタ達が帰ると、家のランタンがついていた。
キロ「あっ、おじいちゃん、やっぱり起きてたんだ」
家の中に入ると、いいにおいがライタ達の鼻腔をくすぐった。
どうやら、夕食の支度が整っているようだった。
キロ「おじいちゃん?」
キロの祖父「やあキロ、お帰り」
キロ「何やってるのおじいちゃん! 食事なんて私が作るって!」
キロの祖父「いやぁ、目が覚めたら身体に力がみなぎっての。何かせ
ずにはおらなんだ」
キロ「それにしたって……」
バルシア「……あっ、ちゃんと人数分作ってありますね。私たちのこ
と、知っていたんですか?」
キロの祖父「話し声で、お客さんが三人来ていたのは知っていたよ」
ライタ「キロちゃん、有り難くごちそうになろうぜ」
キロ「……まあ……そうね……おじいちゃん、もう病気じゃないんだ
しね……そう目くじら立てることもないか…… でもおじいちゃ
ん、まだ治りたてなんだから、くれぐれも無理はしないでね」
キロの祖父「分かった。肝に銘じておくよ」
それぞれ食卓に着く。
ライタ「それじゃあ……いっただっきまーす!」
バルシア「……あら美味しい」
ボイスカ「おじいさん、いい腕ですな」
キロの祖父「な~に、昔取ったきねづかですじゃ」
キロ「おじいちゃん、昔はプロのコックだったこともあるのよ」
ライタ「錠前開けの腕もプロ級で、料理の腕もプロって……おじいさ
ん、昔はどんな人だったんだ?」
キロの祖父「昔の話はしだすと長くなりますじゃ」
おじいさんに向かって、キロの表情が急に真剣になる。
キロ「……おじいちゃん、相談があるの」
キロの祖父「ああ、いいよ。行っておいで」
キロ「えっ?」
キロの祖父「話は昨日の朝に聞いた。この方々の旅に同行するんじゃ
ろう? 守護霊からの御神託じゃあ仕方あるまい。わしの
ことは心配せずに、行っておいで」
キロ「おじいちゃん……」
キロは涙ぐんでいる。
キロ「でもおじいちゃん、本当に大丈夫? もう元気? 私がいなく
なっても……大丈夫かなあ?」
キロの祖父「大丈夫じゃよ。あの薬の効き目はお前が一番よく知って
おろう。薬のおかげで、今はピンピンじゃ」
キロ「そっか……分かった。もう心配しない。でも明日一日は一緒に
いさせて? 本当に治ったのか確かめたいの。皆さん、勝手を言
って申し訳ありません。出発が遅れてしまいますけど、大丈夫で
しょうか」
ボイスカ「わしは問題ないがの」
ライタ「俺も」
バルシア「私も大丈夫。それよりもっと……一週間くらい……おじい
さんの側にいてもいいのよ。それくらい待てるわよねえ、ラ
イタ君?」
ライタ「えっ、バルシアさんがそう言うなら」
キロ「そこまで甘えるわけにはいきません。でも……ちょっと甘えて、
三日間に延ばしてもいいですか? やっぱりちょっと名残惜しい
んで」
バルシア「いいわよ。ねっ?」
ライタ「あっ、ああ」
ボイスカ「わしも異存はない」
キロ「……皆さんすいません。ご厚意に甘えてしまいます。……せめ
て食事だけでも、楽しんでください。元プロとその孫が皆さんを
おもてなしします」
ボイスカ「それでは楽しませて頂こうかな」
バルシア「わぁー、楽しみ」
そしてその夜は更けていき、
あっという間に時は流れ、
それから四日目の朝になった。
○キロの家・前
キロ「じゃあおじいちゃん元気でね。歳なんだから無理しないでね。
それから……」
キロの祖父「いいから。わしのことは心配せんで、行っておいで。そ
して自分の役目を終えたら、帰っておいで。それまで待っ
ているから」
キロ「おじいちゃん!」
キロは祖父に抱きついた。
バルシア「……キロちゃん、しつこいようだけど、無理しなくていい
んだよ? このままおじいさんと幸せに暮らした方が、キロ
ちゃんにとってはいいのかも知れないよ?」
キロ「……いえ、大丈夫です。心配には及びません。決めたことです
から。最初っから迷いはありません」
ボイスカ「そうか……ならそろそろ出発するぞ」
キロ「はいっ」
四人になったパーティーは、再び旅に出発した。
○ファーネスの村の外れ
バルシア「これで村とも長い間お別れだね。思い残すことはない?」
キロ「はい。三日の間に友達にも旅立つことを伝えたし、思い残すこ
とはありません」
ライタ「じゃあこれから東へ向かおうーっ!」
○ファーネスの村~東への街道
キロ「そう言えばこの旅って、何か目的があってしてるんですか?
ライタさんの秘密の理由を除いて」
ライタ「俺の幼なじみ……ルルゥって女の子を捜してるんだ。四年前
にアイグラントの奴らに連れさらわれたんだ」
キロ「へ~っ。ルルゥさん、早く見付かるといいですね」
ライタ「キロちゃん嬉しいことを言ってくれるね~っ! 男嫌いって
言ってたけど、だいぶ俺にも慣れてきてくれたね」
と言って、キロの肩にポンと手を置くライタ。
キロ「キャ~~~ッ!」
キロはライタの手を捕まえてそのまま前方に投げ飛ばした。
ライタ「うわっ!」
キロ「あ……」
バルシア「ライタ君、ちょっと大丈夫?」
ボイスカ「怪我はないか? ライタ」
ライタ「なんとか大丈夫だけど……いきなり投げ飛ばすことないでし
ょ、キロちゃん」
キロ「……ごめんなさい。まだ男の人に触られると、身体が拒否反応
を起こしちゃうみたいです……」
ライタ「……そうか。前途多難だなぁーっ!」
これで、『SUKYSH CLOUD~太陽の降る村~』は、完結になります。
最終回ですが、少しだけ、太陽が降る仕組みについての部分だけ、カットしてあります。
ごめんなさいです。ご了承ください。
でも、勘のいい人は、見当ついてるかな?
ではではこれから、この脚本を元に、舞台用の戯曲を書き起こし始めますよう~~
応援よろしくです!!
ではでは~
P.S. ちなみにこれから、母の3回忌法要と、お墓が完成したので、その納骨式に行ってきます。では~