曇り空の下。そこは大きな建物に隣接する空き地。
11人の人々がそこにいる。
そこはその人々にとって、2つと無い場所。
人と人を繋げてくれる、そこに居る理由をくれる、またと無い居場所。
いくつかの話し声の中、ひとりが大きな声を上げる。
みどり「ねえ、みんながこんなに集まる機会なんてそうそうないと思わない?」
慎平「え?…あぁ」
みどり「だよね。あたし、こういうのは残しておきたいの。…ねえ、みんなで集まって写真撮らない?」
将「あー」
麻衣子「なにそれ?」
麻衣子はみどりに食って掛かっている。いつもの風景。皆は慣れっこである。
みどり「なによ。文句ある?」
麻衣子「ありまくり」
みどり「…(怒)」
修「まあまあまあ! 麻衣ちゃん面白いじゃん、撮ってもらおうよ」
麻衣子「えー」
修「記念になるよ。ねえ」
みどり「そうそう。思い出にね」
皆神「みどりちゃんの提案、私はいいんじゃないかと思いますけどねえ」
麻衣子は興味なさそうにそっぽを向く。
恵美「うーん」
慎平「恵美どうする?」
恵美「いいんじゃない?」
みどり「おぉーさすが器が大きい」
麻衣子「…」
麻衣子は、じゃあ私は写真に入らないだけで、器が小さいことになるの? とでも言いたげな表情。
一方、矢崎と徹、上河と千夏はみどりたちとは少し離れた場所にいる。
徹「矢崎さん、集合写真ですって」
矢崎「ああ」
徹「我々どうしましょうか?」
矢崎「あまり興味ないな。放っておこう」
徹「そうですか」
上河と千夏は互いに少し距離をおきつつ、隣り合って座り込んでいる。
千夏「私撮ってもらいたいなー」
上河「お前幾つだ?」
千夏「写真撮ってもらうのに年齢なんて関係あるんですか」
上河「いくつなんだ?」
千夏「失れい…だと思いますけど仕方ないですね、教えますよ。23になりました」
上河「ふむ。まだ若いな」
千夏「上河さんに比べればずっと若いですね」
上河「…ギャフン!」
千夏は上河の意外にお茶目な言葉に衝撃を受け、一瞬の間のあとで大笑いしている。
みどりはその2人に向って、
みどり「そこ! こっち来なさい」
千夏「はーい♪」
上河「私は行かんぞ」
千夏「上河さーん、一緒に撮ってもらいましょうよーぉ」
千夏は上河に甘えた声を出す。
上河「…」
上河はしぶしぶ立ち上がった。
そして麻衣子はまだグズっている。
麻衣子「私は写んないよ。ここの卒業生のあんた達だけでやりなよ」
修「えー麻衣ちゃーん」
麻衣子「あんたはうるさい!」
慎平「麻衣ちゃん、写ろうよ」
恵美「麻衣っ」
麻衣子「嫌だ」
恵美「頑固だねー。こうなったらテコでも動かないよ」
慎平「だなー」
修「…」
皆神「皆で写真1枚撮るのも、大変ですねえ」
すると、将が皆の真ん中あたりに立つ。
将「皆さん、集まりましょう」
慎平「うーす」
麻衣子、矢崎、徹以外の8人は、わらわらと集まる。
将「みどり、カメラは?」
みどり「あっ…それに気付いてなかったなあー」
将「みどり相変わらず抜けてる」
みどりはその言葉に内心少しムッとするが、
みどり「携帯があった。これで撮りまーす」
恵美「…」
将「みどり、僕カメラ持ってる。僕が撮るよ」
慎平「あっ! 俺もカメラ持ってるよ」
みどり「あっほんとにー? 写してくれる? わーい、ほんとは私も写りたかったんだよねー」
慎平の発言はスルー。少々所在無さげになる慎平。
将「じゃあ皆さんそのへんに集まって…」
麻衣子「えっ将さんが撮るの? なら私も入る」
麻衣子の言動に、ますます機嫌が悪くなるみどり。
修「じゃあ撮りますから並んでー。ほら慎平は高い方なんだから後ろっ 前の人は座ってくださーい」
みどり「おお、修くん仕切ってる」
千夏「修くんかっこいー」
麻衣子「そお?普通じゃん」
修は内心ショックではあるが、表には出さずに「人員を整理」する。
みどりと皆神以外は、それでも「だらだら」していてなかなか態勢が整わない。
しかし修の努力の甲斐もあり、8人は次第に写真をうつす姿勢にまとまってくる。
すると、恵美が急に矢崎たちの方を向く。
恵美「ほらほら、そっちで突っ立ってる2人」
矢崎「…」
矢崎はその言葉を無視。
徹「矢崎さん、恵美さんなにか呼んでますぜ」
矢崎「いいんだ。無視してろ」
徹「へえ」
麻衣子がフォローに入る。
麻衣子「おじさんたちも仲間なんだから入ったらー?」
徹「あいつ自分たちをおじさんなんて呼んでますぜ」
矢崎「いいから。無視してろ」
徹「へえ」
そこに、将が声を上げる。
将「矢崎くん、入りなよ。その方がいい」
矢崎「…」
将「矢崎くん」
将の言葉は穏やかだが断定的で、迷いがなく、その場によく響いた。
矢崎は黙って列の中に加わる。もちろん徹もそれに続く。
慎平「全員揃ったな」
みどり「ねっ♪」
修「みんな枠に入ってるよな。列は乱れてない?」
千夏「よし。じゃあ撮ろーっ!」
将は集合写真のカメラポジションに立ち、カメラを構える。
将「よし、じゃあいいかな・・・うん、全員ちゃんと入ってる」
将はカメラのファインダーを覗いている。
将はカメラのファインダーを覗いている。
将はカメラのファインダーを覗いている。
将は…
慎平「早く写せよ!じれったいなあ」
将「いや…なんか、みんなの表情が固いなと思って」
皆は周りの人たちをそれぞれ見回す。
皆神「表情が硬いそうです」
恵美「そうねえ」
麻衣子「将さん、どうすればいいとおもいますか?」
将「そうだなあ…全員首でも回してください」
徹「はっ?」
千夏「どういう意味ですか」
将「そのまんまの意味です。首をぐるぐると、回してください」
将の言葉には、何故か逆らえない力があり、矢崎も、上河でさえ従わざるを得ないのである。
大人(?)が10人並んでぐるぐる首を回す。なぜか全員が時計回りだ。そろっている。
妙に滑稽で、笑える光景である。
そのまま4、5秒経過しただろうか、
将「ストップ!」
間髪入れず、
将「撮るよ」
10人はそれぞれ別の方向に顔を向けている。
不平不満が一気に噴出す。わいがやわいがや。
恵美「やだーっ」
慎平「こんなん撮ってどうするんだよ」
みどり「水原くん大じょぶ?」
麻衣子「将さん、どうしたんですか?」
将「もういいんですよ、どこ向いたって。頭固いなあ。もう撮ります。ただしレンズだけは見ないでくださいね」
10人は低い声で返事する。
そうして、将はシャッターを切った。
11人の人々がそこにいる。
そこはその人々にとって、2つと無い場所。
人と人を繋げてくれる、そこに居る理由をくれる、またと無い居場所。
いくつかの話し声の中、ひとりが大きな声を上げる。
みどり「ねえ、みんながこんなに集まる機会なんてそうそうないと思わない?」
慎平「え?…あぁ」
みどり「だよね。あたし、こういうのは残しておきたいの。…ねえ、みんなで集まって写真撮らない?」
将「あー」
麻衣子「なにそれ?」
麻衣子はみどりに食って掛かっている。いつもの風景。皆は慣れっこである。
みどり「なによ。文句ある?」
麻衣子「ありまくり」
みどり「…(怒)」
修「まあまあまあ! 麻衣ちゃん面白いじゃん、撮ってもらおうよ」
麻衣子「えー」
修「記念になるよ。ねえ」
みどり「そうそう。思い出にね」
皆神「みどりちゃんの提案、私はいいんじゃないかと思いますけどねえ」
麻衣子は興味なさそうにそっぽを向く。
恵美「うーん」
慎平「恵美どうする?」
恵美「いいんじゃない?」
みどり「おぉーさすが器が大きい」
麻衣子「…」
麻衣子は、じゃあ私は写真に入らないだけで、器が小さいことになるの? とでも言いたげな表情。
一方、矢崎と徹、上河と千夏はみどりたちとは少し離れた場所にいる。
徹「矢崎さん、集合写真ですって」
矢崎「ああ」
徹「我々どうしましょうか?」
矢崎「あまり興味ないな。放っておこう」
徹「そうですか」
上河と千夏は互いに少し距離をおきつつ、隣り合って座り込んでいる。
千夏「私撮ってもらいたいなー」
上河「お前幾つだ?」
千夏「写真撮ってもらうのに年齢なんて関係あるんですか」
上河「いくつなんだ?」
千夏「失れい…だと思いますけど仕方ないですね、教えますよ。23になりました」
上河「ふむ。まだ若いな」
千夏「上河さんに比べればずっと若いですね」
上河「…ギャフン!」
千夏は上河の意外にお茶目な言葉に衝撃を受け、一瞬の間のあとで大笑いしている。
みどりはその2人に向って、
みどり「そこ! こっち来なさい」
千夏「はーい♪」
上河「私は行かんぞ」
千夏「上河さーん、一緒に撮ってもらいましょうよーぉ」
千夏は上河に甘えた声を出す。
上河「…」
上河はしぶしぶ立ち上がった。
そして麻衣子はまだグズっている。
麻衣子「私は写んないよ。ここの卒業生のあんた達だけでやりなよ」
修「えー麻衣ちゃーん」
麻衣子「あんたはうるさい!」
慎平「麻衣ちゃん、写ろうよ」
恵美「麻衣っ」
麻衣子「嫌だ」
恵美「頑固だねー。こうなったらテコでも動かないよ」
慎平「だなー」
修「…」
皆神「皆で写真1枚撮るのも、大変ですねえ」
すると、将が皆の真ん中あたりに立つ。
将「皆さん、集まりましょう」
慎平「うーす」
麻衣子、矢崎、徹以外の8人は、わらわらと集まる。
将「みどり、カメラは?」
みどり「あっ…それに気付いてなかったなあー」
将「みどり相変わらず抜けてる」
みどりはその言葉に内心少しムッとするが、
みどり「携帯があった。これで撮りまーす」
恵美「…」
将「みどり、僕カメラ持ってる。僕が撮るよ」
慎平「あっ! 俺もカメラ持ってるよ」
みどり「あっほんとにー? 写してくれる? わーい、ほんとは私も写りたかったんだよねー」
慎平の発言はスルー。少々所在無さげになる慎平。
将「じゃあ皆さんそのへんに集まって…」
麻衣子「えっ将さんが撮るの? なら私も入る」
麻衣子の言動に、ますます機嫌が悪くなるみどり。
修「じゃあ撮りますから並んでー。ほら慎平は高い方なんだから後ろっ 前の人は座ってくださーい」
みどり「おお、修くん仕切ってる」
千夏「修くんかっこいー」
麻衣子「そお?普通じゃん」
修は内心ショックではあるが、表には出さずに「人員を整理」する。
みどりと皆神以外は、それでも「だらだら」していてなかなか態勢が整わない。
しかし修の努力の甲斐もあり、8人は次第に写真をうつす姿勢にまとまってくる。
すると、恵美が急に矢崎たちの方を向く。
恵美「ほらほら、そっちで突っ立ってる2人」
矢崎「…」
矢崎はその言葉を無視。
徹「矢崎さん、恵美さんなにか呼んでますぜ」
矢崎「いいんだ。無視してろ」
徹「へえ」
麻衣子がフォローに入る。
麻衣子「おじさんたちも仲間なんだから入ったらー?」
徹「あいつ自分たちをおじさんなんて呼んでますぜ」
矢崎「いいから。無視してろ」
徹「へえ」
そこに、将が声を上げる。
将「矢崎くん、入りなよ。その方がいい」
矢崎「…」
将「矢崎くん」
将の言葉は穏やかだが断定的で、迷いがなく、その場によく響いた。
矢崎は黙って列の中に加わる。もちろん徹もそれに続く。
慎平「全員揃ったな」
みどり「ねっ♪」
修「みんな枠に入ってるよな。列は乱れてない?」
千夏「よし。じゃあ撮ろーっ!」
将は集合写真のカメラポジションに立ち、カメラを構える。
将「よし、じゃあいいかな・・・うん、全員ちゃんと入ってる」
将はカメラのファインダーを覗いている。
将はカメラのファインダーを覗いている。
将はカメラのファインダーを覗いている。
将は…
慎平「早く写せよ!じれったいなあ」
将「いや…なんか、みんなの表情が固いなと思って」
皆は周りの人たちをそれぞれ見回す。
皆神「表情が硬いそうです」
恵美「そうねえ」
麻衣子「将さん、どうすればいいとおもいますか?」
将「そうだなあ…全員首でも回してください」
徹「はっ?」
千夏「どういう意味ですか」
将「そのまんまの意味です。首をぐるぐると、回してください」
将の言葉には、何故か逆らえない力があり、矢崎も、上河でさえ従わざるを得ないのである。
大人(?)が10人並んでぐるぐる首を回す。なぜか全員が時計回りだ。そろっている。
妙に滑稽で、笑える光景である。
そのまま4、5秒経過しただろうか、
将「ストップ!」
間髪入れず、
将「撮るよ」
10人はそれぞれ別の方向に顔を向けている。
不平不満が一気に噴出す。わいがやわいがや。
恵美「やだーっ」
慎平「こんなん撮ってどうするんだよ」
みどり「水原くん大じょぶ?」
麻衣子「将さん、どうしたんですか?」
将「もういいんですよ、どこ向いたって。頭固いなあ。もう撮ります。ただしレンズだけは見ないでくださいね」
10人は低い声で返事する。
そうして、将はシャッターを切った。
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