おっちーの鉛筆カミカミ

演劇モノづくり大好きおっちーのブログです
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うめのきうめのいろ

2008年08月07日 01時12分34秒 | 文章塾
 かくれんぼしよう
 妹の瑞希はきっとあの大きな箱の中に隠れている。
 いひひ
 梅の花の色をした箱を開けると、またその中に箱があった。
 あれ?
 その箱を開けるとまた中に箱があり、それを開けるとまた。
 瑞希ー!
 妹はどこにいったのか。愛姉は必死になって箱を開け続けた。
 お姉ちゃん…
 妹は小さな箱の中から現れた。瑞希は、掌に乗るほど小さくなっていた。
「お姉ちゃん!」
「何よっ!?」
 思わず大きな声で応えていた。
「こんな所で寝てたら…」
「風邪ひくよって言いたいんでしょ!?」
「…そう。」
「あんただんだん母さんに似てきたよねー」
 愛は体を起こし、瑞希を見上げた。
「背高いところは父さん似なのに」
「…なあに?」
 瑞希は膨れっ面をする。
 瑞希は男子を含めても、学校で一番背が高い。
 それは瑞希にとってあまり誇らしい事ではないらしい。
 愛は続ける。
「口うるさいところが、母さんに似てる!」
「そう?」
 愛は立ち上がった。
「瑞希、あたし変な夢みたよ」
「どんな?」
 妹と並んで立つ、梅の木の傍らで。
 瑞希と同い年の梅の木。
 家の庭の、端っこの方に植わっている。
「ちょっと前は、梅の方が背高かったのにねえ」
 母親が声を掛ける。
 すると愛が声を上げる。
「全然高いよ、瑞希の方が!」
「愛は同じ位か?」
 父親がひょっこりと現れた。
「なんで背低いとこばっか母さんに似たんだろ」
「お姉ちゃん!」
 瑞希が愛の服の袖を引っ張る。
「何よ」
 妹の視線を追うと、家の高さまである、大きな梅の木。
 瑞希はにっこりと笑う。
「…わかってるよ!」
 中学三年生と、小学校六年生。二人の姉妹の、明日は卒業式だ。
 今日は天気がいい。明日も晴れるかな?
 そして瑞希は笑顔のまま、
「ちーび」
「あんたいまなんていったあ!」
 あはっ、ますます笑顔が弾ける瑞希。
「まあまあ、」
「二人とも、」
 なだめる夫婦。四人家族。
「こんな子もらってくれる男性は現れるのかねえ」
「大丈夫。」
「余計なお世話!」
「こりゃ駄目だね」
 梅の木が笑っていた。

  * * *

 「第23回文章塾という踊り場」お題「桃、梅、桜、ピンク、あるいはそれにまつわる作品。」への投稿作品です。
 〆切は、2008年3月16日でした。今さらで申し訳ない。
 塾生の皆さんから寄せられたコメントと、それに対する僕のレスはこちらから。

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