『パピヨン』(73)(1974.7.27.テアトル東京)
生身で勝負のマックィーン
1931年に無実の罪で終身刑となり、悪魔島という孤島に投獄された男が不屈の精神で何度も脱獄を企てます。彼は胸に蝶の刺青をしていることで“パピヨン”と呼ばれました。演じるは希代のアクションスター、スティーブ・マックィーン。
『大脱走』(63)の独房王ヒルツ役もそうでしたが、自由を求めて束縛から脱出するという役柄は彼の十八番です。この映画でもマックィーンは己の肉体を酷使し、まさに生身で勝負をしています。こうした俳優の存在感だけで見せ切る映画というのが今はほとんどなくなりましたね。
この映画の見どころの一つはマックィーンとダスティン・ホフマンという、全くタイプが異なる二大スターの共演です。彼らが表現した男の友情のドラマに胸が熱くなります。
またこの映画の凄みは、原作者のアンリ・シャリエールとマックィーンの不幸な生い立ち、監督のフランクリン・J・シャフナーの戦争体験 脚本のダルトン・トランボの赤狩りへの怒りなど、それぞれが背負うバックグラウンドが、主人公パピヨンの姿に反映されているところです。
ハードなドラマの中に時に切なく、時に力強く響くジェリー・ゴールドスミスの音楽も聴きものです。