『ほぼ週刊映画コラム』
今週は
熟練の映画監督スピルバーグの職人技が堪能できる
『ブリッジ・オブ・スパイ』
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http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1031618
パニック映画の頂点
サンフランシスコに138階建ての超高層ビル、グラスタワーが完成。ところが、その開場披露パーティで何と火災が発生します。
この映画には二つの原作があり、20世紀フォックスとワーナーブラザースが共同制作し、当時の2大スターのスティーブ・マックィーンとポール・ニューマンが共演。撮影はフレッド・コーネカンプとジョセフ・バイロックという二人の名カメラマンが担当しました。この“2=ダブル”尽くしだけでも、この映画がどれほどの大作だったのかがうかがい知れると思います。
見せ場の連続でパニック映画の頂点を極めたこの映画のプロデューサーは、『ポセイドン・アドベンチャー』(73)のアーウィン・アレン。本作ではアクション部門の監督も兼任し、その力技を遺憾なく発揮しています。建築技師に扮したニューマンが乗るヘリコプターを映しながら、ジョン・ウィリアムズのテーマ曲が流れるオープニングを見るだけですでにワクワクしてきます。
そして登場人物の紹介、火災の発生と、すべての要素が出揃ったところで消防隊長のマックィーンが登場。ハードなマックィーンとソフトなニューマンという対象的な大スターの“競演”が楽しめます。
この2人を中心に、ヒロイン役のフェイ・ダナウェイ、枯れたウィリアム・ホールデン、踊らなくても粋なフレッド・アステア、ナイスガイを演じたO・J・シンプソン、一人憎まれ役のリチャード・チェンバレン…など、オールスターキャストが織り成す人間模様も見もの。ただのスターの顔見世映画に終わらせなかった監督ジョン・ギラーミンの手腕はもっと評価されてもいいと思います。CGにはない手作りの味わいを持ったL・B・アボットの特撮も見事です。
また『ポセイドン・アドベンチャー』では歌声だけでしたが、今回はモーリン・マクガバン本人が登場し、「タワーリング・インフェルノ・愛のテーマ / WE MAY NEVER LOVE LIKE THIS AGAIN』を歌い、アカデミー賞の歌曲賞を受賞しました。
超高層ビルの火災、偽装建築などは、悲しいかな今でも十分に通じるテーマです。ロサンゼルスの高層ビルを舞台にした『ダイ・ハード』(88)にも大きな影響を与えています。