田中雄二の「映画の王様」

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『カンバセーション…盗聴…』

2016-01-11 09:00:40 | All About おすすめ映画

『カンバセーション…盗聴…』(73)

プロの盗聴屋が逆に盗聴される皮肉

 この映画は、フランシス・フォード・コッポラ監督が、『ゴッドファーザー』(72)『ゴッドファーザーPARTⅡ(74)という大作の間に撮った比較的地味なミステリー作品ですが、カンヌ映画祭ではグランプリに輝きました。

 映画はサンフランシスコのユニオン広場から始まり、人混みの中にいる一組のカップル(フレデリック・フォレスト、シンディ・ウィリアムズ)の会話を盗聴する主人公ハリー(ジーン・ハックマン)のきめ細かな仕事ぶりを映します。

 彼にとってはごくありふれた仕事のはずでしたが、録音したテープを聞くうちに、ある殺人事件に関する秘密が語られていることに気付きます。

 中盤からは、自分も盗聴されているのでは? という不安を抱いたハリーの姿が中心に描かれ、プロの盗聴屋が逆に盗聴されるという皮肉なテーマが浮かび上がってきます。最後は精神的に追い詰められ、盗聴器を捜して自分の部屋を壊しまくるハリーの姿にぞっとさせられます。

 コッポラの丁寧な演出、ハックマンの好演に加えて、デビッド・シャイア作曲のピアノのリフレインを多用した音楽も、ハリーの不安を助長する上で大いに効果を発揮しました。ちなみにデビッドはこの時期、コッポラの妹のタリア・シャイアと結婚していました。

 この映画は、ウォーターゲート事件の直後に公開されたため、政治的な意図があったのではとうわさされましたが、コッポラはプライバシーの問題に言及しただけだと語っています。大作とは一味違う、コッポラの小品の佳作を楽しんでください。

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