田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『チャイナ・シンドローム』

2016-01-14 09:00:02 | All About おすすめ映画

『チャイナ・シンドローム』(79)(1980.10.7.東急名画座)

原発事故後にこそ見るべき映画

 東日本大震災における福島原発の事故を見るにつけ、思い出されてならなかったのが、架空の原発事故の前後を描いたこの映画でした。

 原子炉事故に遭遇した原発の技師(シリアスなジャック・レモン)と、居合わせたテレビクルー(ジェーン・フォンダ、マイケル・ダグラスら)が、真実を伝えようと奮闘します。ところが、見えない大きな力によってもみ消されるさまを描くことで、権力の恐ろしさやマスコミの無力さを浮き彫りにします。

 この映画のタイトルは「もし、アメリカの原発がメルトダウン(炉心溶融)を起こしたら、地面を突き抜けて中国まで熔けてしまう」というジョークから取られていましたが、全米公開直後に米スリーマイル島の原発で本当に事故が起きたことで、笑い事や絵空事では済まなくなりました。

 ~シンドローム(症候群) という言葉が日本で一般的に使われるようになったのも、この映画がきっかけです。まさに先見の明があった映画です。日本でも未曾有の原発事故が起きてしまった今こそ、見るべき映画だと強く思います。

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映画の中のデビッド・ボウイ

2016-01-14 01:04:34 | 映画いろいろ

 デビッド・ボウイが亡くなった。小学生の頃、初めて彼の映像を見た時、この人は男なのかそれとも女なのか…と感じて不思議な思いにとらわれたことを思い出す。

 彼は俳優としても活躍したが、ニコラス・ローグ監督の『地球に落ちて来た男』(76)の孤独な宇宙人、大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』(83)のホモセクシュアル的な雰囲気を持った軍人、トニー・スコット監督の『ハンガー』(83)ではカトリーヌ・ドヌーブ演じる女吸血鬼の力を借りて若さを保つ青年、ジム・ヘンソン監督の『ラビリンス/魔王の迷宮』(86)では魔王など、映画の中でも、性別を超えた、人間離れした役を演じた。とにかく不思議な雰囲気を醸し出す人だった。

 最近は、スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』(68)に想を得て作られた「スペイス・オディティ」がベン・スティラーの『LIFE!』(13)に、「スターマン」がリドリー・スコットの『オデッセイ』(2月公開)に挿入歌として使われ、久しぶりに映画の中で再会することができた。

 人間離れしたデビッド・ボウイにはやはりSFがよく合うのだと思う。そう考えると、『ゼロ・グラビティ』(13)などは、まるで「スペイス・オディティ」の歌詞を映画にしたような感じがする。

 息子のダンカン・ジョーンズは映画監督になり、『月に囚われた男』(09)『ミッション:8ミニッツ 』(11)というSF映画の佳作をものにしている。SF映画での親子共演がかなわなかったのが残念だ。

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