田中雄二の「映画の王様」

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『ひとりぼっちの青春』(69)

2016-01-15 08:41:11 | All About おすすめ映画

廃馬は撃ち殺すものだろ?



 この映画のオープニングシーンは草原を走る馬をセピアカラーで映します。ところが脚を折った馬は撃ち殺されてしまいます。

 これはこの映画の主人公であるロバートの少年時代の回想なのですが、いきなり「They Shoot Horses, Don't They?=廃馬は撃つものだろ?」という、この映画の原題を象徴するシーンが示されることに驚かされます。

 そんなこの映画は、失業者が街にあふれる不況下の1930年代、ひたすら踊り続ければ高額の賞金がもらえるマラソン・ダンスに参加した人々を描く群像劇です。

 ジェーン・フォンダ、スザンナ・ヨーク、マイケル・サラザン、ボニー・ベデリア、ブルース・ダーンといった当時の若手俳優に、ベテランのレッド・バトンズとギグ・ヤングが絡みます。彼らの演技合戦が見どころの一つです。

 賞金を手にして一発逆転の人生を夢見る彼らですが、一人また一人と脱落していきます。監督のシドニー・ポラックは淡々と彼らの姿を描いています。そのため、私たちもダンス会場にいる観客の一人になったような、少々残酷な気分で彼らを見つめることになるのです。

 ロバート(サラザン)はグロリア(フォンダ)とペアを組んで最後まで残るのですが…。ラストシーンは衝撃的でファーストシーンの意味が分かるように構成されています。

 と言う訳で、この映画が描いた青春像はなんとも苦くやるせないものですが、当時のニューシネマと呼ばれた映画には不況下の30年代を舞台にしたものが多かったのです。

 それは、ベトナム戦争などで、社会に対して閉塞感を抱いていた若者たちの心情が30年代と重なるからだと言われましたし、映画人たちが物事を悲観的に見る傾向が強い時期でもあったからでしょう。そうした時代の雰囲気をこの映画から感じ取ってください。

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