田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『春の珍事』

2018-12-11 13:42:08 | 1950年代小型パンフレット

『春の珍事』(49)(1979.11.25.)

 大学の先生(レイ・ミランド)が、偶然発明した薬(木材を避ける液体)のおかげで大リーグ、セントルイス(カージナルス?)の“にわかピッチャー”になるというコメディ。



 小学生の頃、漫画『巨人の星』で、この映画に関する挿話を読んで以来、見たかった映画。監督はベテランのロイド・ベーコン。『三十四丁目の奇蹟』(47)『グレン・ミラー物語』(54)でも有名なバレンタイン・デイビスの脚本がうまい。

 主人公を支えるキャッチャー役のポール・ダグラスがいい味を出し、主人公の恋人役のジーン・ピータースがとてもかわいい。この薬を整髪料と間違えて髪につけ、木製のくしでとかそうとしたら…というギャグに大笑いさせられた。

 ところで、『巨人の星』はバットをよけて通る魔球、大リーグボール3号を、この映画の設定になぞらえていたが、老人が謎の薬のおかげで期間限定で若返るという楳図かずおの漫画『アゲイン』も、この『春の珍事』と『くたばれ!ヤンキース』を下敷きにしているのでは…、と思った。

【今の一言】この『春の珍事』の“少年版”とも呼ぶべき『がんばれ!ルーキー』(94)は、右腕のけががもとで剛速球が投げられるようになった12歳の少年ヘンリーが、弱いけれど人気だけはある老舗球団のシカゴ・カブスに入団するという話だった。

パンフレット(アメリカ映画宣伝社(American Picture News))の主な内容
解説/物語/影の歌/この映画の面白さ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『赤と黒』

2018-12-11 06:12:01 | 1950年代小型パンフレット

『赤と黒』(54)(2010.7.31.北千住シネマブルースタジオ)



 ジェラール・フィリップの没後50周年を記念して公開されたデジタルリマスターの完全版。フィリップの映画を映画館で見るのは今回が初めて。今までは伝説上の遠い存在だったが、見てみると、確かに魅力的な俳優だと納得させられた。

 原作はスタンダール。「赤と黒」とは軍服と僧衣を表すという。このタイトルには、下層者が成り上がるには、軍人か宗教家として出世するか、貴族に取り入るしかない、という不条理や皮肉が込められているのだそうだ。

 その意味では、この映画は一種のピカレスクロマンであり、高貴と粗野という正反対の魅力を併せ持ったフィリップにはもってこいの役だったと思える。主人公ジュリアンの独白や心の声をセリフで表現する手法も面白い。

 共演の女優も、熟女の魅力のダニエル・ダリューと、ナタリー・ポートマンを思わせるエキゾチックな風貌の、若いアントニオ・ルアルディが、対照的な女の魅力を発散する。また、監督のクロード・オータン=ララについても、テレビで晩年の作品を少し見ただけだったので、今回のこの映画で、改めて監督としての力量の大きさを知らされた。

 フランス映画界は、1940年代はジャン・マレー、50年代はフィリップ、60年代はアラン・ドロンが代表選手だという。フィリップはヌーベルバーグの台頭と相前後して世を去ったが、だからこそ伝説になったとも言える。彼に生々しい現代劇は似合わないと思ったが、風貌は若き日のミッキー・ロークに似ているところもあるので、もっと長生きしていたら、ちょっと崩れた感じの役で、また違った魅力を発揮していたかもしれないと思った。

ダニエル・ダリューのプロフィール↓

パンフレット(54・日活本社宣伝部(Nikkatsu Theatre News No.17))の主な内容
原作者スタンダール/解説/貴方と私・赤と黒を中心に(淀川長治)/鑑賞講座(野口久光)/物語/ファンファンの魅力(小森一慧)/ダニエル・ダリユウ、アントネラ・ルアルディ/監督クロード・オータン=ララ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする