田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『ロッキー4/炎の友情』

2018-12-26 12:04:09 | 映画いろいろ
『ロッキー4/炎の友情』(85)(1986.6.13.)



 宿敵から親友となったアポロ(カール・ウェザース)を、リング上で絶命させたソ連のドラゴ(ドルフ・ラングレン)に挑戦するため、ロッキー(シルベスター・スタローン)はモスクワに乗り込む。

 最初の『ロッキー』(76)が作られてから、かれこれ10年近い月日がたったが、この映画を見て「ロッキーは随分と遠いところへ行ってしまったなあ」という気がした。10年前にロッキー=スタローンが復活させた「成せば成る。やったらやれる」という、アメリカンドリームの輝きはここにはない。

 自分の中では『ロッキー』は第1作で完結している。スタローンにしても始めはそのつもりだったはずである。なぜならロッキーは15ラウンドを戦い抜くことで、人生の価値や伴侶といった、チャンピオンになること以上に素晴らしいものを手に入れたのだから。それ故、勝負の結果などどうでもよかったのである。

 そのロッキーが再び王者アポロに挑戦し、チャンピオンになるという『2』はまだ許せるにしても、『3』、そしてこの『4』までくると、最初の感動は色あせ、単なる見世物としての空しさを感じるようになる。

 加えて、この映画では米ソ関係、強いアメリカの復活といった、政治問題を強く反映させており、人間ドラマは二の次といった感じがする。レーガン大統領が手を貸したなどといううわさも、あながち外れてはいないのかも、と思わされるほどだ。そして、これだけ政治色の強い映画が大ヒットしているのは、これひとえに、ロッキー(米)対ドラゴ(ソ)が繰り広げるボクシングシーンに魅力があるからなのだ。映画がプロパガンダに利用されることは珍しくはないが、最初のロッキーの精神に酔わされた者にとっては残念な気がしてならない。

 と、これだけ否定的な見方をしながらも、この映画を見てしまったのは、ロッキーというキャラクターに対する思い入れの強さ故、見捨て切れなかったところがあるからだ。だからスタローンよ、くれぐれも『5』など作らぬように。これ以上ロッキーを醜くしないでくれ、と願うばかりである。
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『ロッキー3』

2018-12-26 06:16:10 | 映画いろいろ
『ロッキー3』(82)(1982.7.12.川崎グランド)



 宿敵アポロ・クリード(カール・ウェザース)とのリターンマッチに勝利したロッキー・バルボア(シルベスター・スタローン)は、プロボクシング世界ヘビー級チャンピオンとして10度の防衛に成功。その人気は国民的なものとなった。そしてロッキーは現役最後の試合としてクラバー(ミスターT)戦に臨むが…。

 『2』から3年たって『3』製作の話が聞こえてきた。こうなるともう商魂のたくましさを感じさせられて、興醒めするのだが、そう思いながらも 『ロッキー』というタイトルを見ると、つい足を運んでしまう。それは第1作で得た感動の再現を、未練がましく求めているからだろう。

 そして『ロッキー』3部作(多分この『3』で完結となるはず)を見終わって感じたことは、始めからこうして3部作として作る予定だったら良かったのに…ということであった。『1』で完結したものを、ヒットにあやかって安易に『2』『3』と製作したから無理が生じたのだ。

 この『3』にしても、見世物としては、テーマ曲「アイ・オブ・ザ・タイガー」、ハルク・ホーガンや敵役のミスターTの登場で盛り上がるが、『1』から受けたような人間ドラマとしての感動は薄い。『ロッキー』が始めからただの見世物映画だったら、それでいいし、迫力あるファイトシーンに素直に酔えただろうが、どうしても『1』の出来の良さが思い出されて、物足りなさを感じてしまうのだ。

 そのあたりは、スタローンも感じていたのか、この『3』を、必死に『1』の世界に戻そうと試みているところがあるのだが、成功しているとは言い難い。というわけで、もし『4』が作られても見に行かないだろうとは思いつつ、でもあのテーマ曲がかかると、つい…。
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